第13話 街と言うか、サキュバスの娼館に向かう前に、鬼の姫様は無理ですか? もちろん、無理じゃないです 後編



 早朝未明。

 4人は森の中のオーガキングの集落に向けて出立していった。

「手伝おうか?」と言ったんだけど、「申し出はありがたいが、鬼人族としての単独の仕事とさせてくれ」と固辞された。

 ちなみに向こうも討伐後に街に向かうということで、親睦を深めるために是非とも一緒に行こうという話になっている。

 で、俺たちはアカネたちの帰りを待っているわけなんだけど、俺の目に嫌なものが移った。

「おいエリス」

「どうしたんですか旦那様?」

「遠くにオーガキングが10体見える。それもオーガを100体以上引き連れてあっちに向かっているぞ」

「私には見えませんが旦那様が言うならそうなのでしょう。しかし、方角的に……向かっている先はアカネさんたちが向かった集落ですよね?」

「援軍ってことだろうな」

「アカネさんたちはオーガキングをギリギリ一体相手できるかどうかって話でしたよね?」

「まあ、こうなっちまえば仕方ないな」

 俺がテントの近くに置いていたナップザックを手に取ると、エリスが声をかけてきた。

「何をするつもりですか旦那様?」

「ちょっとお手伝いって奴だ。鬼人族の仕事ではなくならない程度に……な」



 ☆★☆★☆★



「うん、良い切れ味だ」

 魔獣人王とやらに褒美としてもらったミスリルソードの使い勝手は凄い良かった。

 何せ、スパっ! スパっ! スパっ! って感じでオーガキングがバンバン切れるからな。

「ギャアアアアア!」 

「たわらばっ!」

「ヌグレボバッ!」

 思い思いの悲鳴をあげて、瞬く間にオーガキング10体が倒れた。

 で、残りのオーガたちは「あわわ……っ!」とばかりにビビりまくり、来た方向に回れ右して帰っていくことになった。

「オーガの援軍はこれで始末完了だな」

 追撃をしかけようとも思ったが、今はアカネたちが心配だ。

 オーガキングの素材の回収もせずに、俺は草原から森へと向かって駆け出した。

 で、森を小走りで行くこと5分程度。

 森が開けた場所に出たんだが、そこには湖があった。

「あ……」

 俺は思わず声をあげてしまった。

 と、いうのもそこには全裸のアカネがいたんだ。

 真っ赤に染まった服を洗っているようだ。どうやら彼女はオーガキングの討伐は成功して、今は返り血を洗い落としている最中ってところか。

 ちなみに、アカネの従者はこの場にはいない。

「……」

「……」

 見つめ合うこと数秒。

 しばし固まっていたアカネだったが、その頬を真っ赤に染め上げていく。

 そして、開口一番こう言い放った。

「せ……責任は取ってくれるのであろうな!?」

「え? どういうことですか?」

 アカネは更に顔を真っ赤にして、半泣きになりながらこう叫んだんだ。

「乙女の肌を見たことに対する責任だっ! 我が部族では婚姻前に他人に肌を見せてはならんのだ。しかもだな……もしも婚姻前に裸を見られた場合、結婚しなければならんという鉄の掟がある!」

 うん、物凄い良くある設定だ。

 無論そこについては疑問は無い。だって、これエロゲ―世界だからな。

 でもさ、俺は素朴な疑問として思うんだよ。

 肌を見られたら結婚だって?

 それを言うならアンタ……普段からアンタはお尻丸出しでしょうに。




 ☆★☆★☆★


 森の道をアカネと二人で歩いていく。

「と、ともかくサトル殿! 責任はとってもらうからな!」

 さっきから俺を男として意識しているのか、アカネは常に顔が真っ赤だ。

 目も合わせてくれないし、挙動不審だし……。

 まあ、口調は勇ましいんだけど、態度は明らかにキョドっているのがちょっと可愛いのは認めよう。

「でも、俺にはエリスって言う嫁がいるわけですしね」

「申し訳ないが、エリス殿とは別れてもらうことになるな」

「いや、でも嫁と別れろって言ってること無茶苦茶ですよ?」

「私もそれは理解している。本当であれば私は第2婦人というのが筋だろう」

 ん? どういうことだ?

 猫耳族は重婚が普通らしいが、この場合は彼女は一夫一妻制だからエリスと別れろと言っているんじゃないのか?

「ええと、重婚そのものはアリなんですか?」

「ああ、この文化圏で重婚に異を唱えるような女はおらん」

 まあ、そこはエロゲだからな。

 そういう世界というのは分かる。

「サトル殿、私の部族では重婚には条件があるのだ」

「条件?」

「自身よりも強き武人であれば、重婚は可。だが、自身よりも弱き武人であれば、その男は女に独占されるのだ。自分よりも弱い者と婚姻するわけだから、それは当たり前の話となる」

 うーん。

 まあ、強き種の理論ではそういうことになるんだろう。そこも分からんでもない。

「いや、でもそもそもですね? 私とアカネさんが出会ったの昨日の話ですよ?」

「サトル殿のバフ効果……アレを私は高く買っている。戦闘以外の特技も認められるのならば間違いなくサトル殿は重婚可能者だろう。しかしそこは文化の違いで申し訳ないが、部族的にはバフ能力だけでは重婚可能者だと認めるわけにはいかんのだ」

「いやいや、強いとか弱いとかの話じゃないでしょうに? 俺は出会ったのは昨日で早急すぎるって言ってるんです」

 そもそも、俺とアカネのどっちが強いってのも分かってないわけだし。

 と、そこで俺たちは昨日のキャンプ地に到着したわけだ。

 その時、エリスが俺に向けて声をかけてきた。

「旦那様ー! 旦那様がさっき一人で倒したオーガキングの角10本ですが、回収しておきましたよー!」

 エリスは両手にオーガキングの角を持ってニコニコと笑っている。

「サトル殿。オーガキングを10体討伐したと言うのは事実なのか?」

「ええ、まあ一応」

 その言葉を受けて、アカネは即座に正座の姿勢となった。

 そうしてアカネは三つ指をついて深々と頭を下げたのだ。

「ど、どうしたんですか急に?」

「サトル殿……どうか私を……」

 そうしてアカネはしばし押し黙り、一呼吸置いてからこう言ったのだった。

「貴方様の二人目の嫁としてお迎えください」

 どうやらそういうことになったらしい。



 ☆★☆★☆★



 その日もそこで野営することになった。

 と、いうのも結婚初夜を昼間からおっぱじめたいというストレートな申し出を受けたためだ。

 ビックリするくらいに俺は置いてけぼりで話が進んでるんだけど、一連の話を聞いたエリスと言えば――

『うーん。それは困りましたね』

『本当に困ったもんだよ』

『アカネさんが生娘……処女と言うことであれば、一人目の嫁として私は新参者をちゃんと教育しないといけません。行為の最中、旦那様に粗相があってはいけませんからね』

 え? 何言ってんのコイツ?

 ツッコミを入れる間もなくエリスはアカネを連れてテントの中にこもってしまったのが現況だ。

「旦那様。もう入っても良いですよ」

 テントの中に入ると、裸に剝かれたアカネがうつぶせの姿勢となっていた。

 サムライ魂はどこへやら、顔を真っ赤にして借りてきた猫みたいな状態になっている。

「エリス? つまり……これはどういうことなんだ?」

 俺の問いかけに、エリスは真顔になって小首を傾げた。

「私は今日はアカネさんのサポート役なんですよ。あ、でも……ひょっとすると旦那様は……」

「ん?」

「3人で励むというのは無理なのでしょうか?」

 と、そこで俺は素直な気持ちでこう言ったんだ。


「全然無理じゃないです」


 そんな感じでアカネの初夜はなし崩し的に3人で楽しむことになった。

 で、アカネはマグロだったんだよな。

 けど、エリスの指導のせいもあってか、途中からはノリノリになった。

 つまりは俺は二人して散々に責め立てられることになったんだよ。

 まあ、途中からは太公望のスキルのゴールデンフィンガーで逆に無茶苦茶にしてやったがな。

 しかし、やはり二人よりも三人のほうが楽しいな。何と言っても色々と多重同時の刺激があって楽しい。

 まあ、その分疲れるけど。

 と、まあそんなこんなで――。

 俺の嫁は一人増え、夜の生活がにぎやかなことになりそうなのだった。


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