第7話 お披露目パーティー
「ああぁぁ、緊張してきた。ねえシルフィ、どうしよう。もうすぐ出番だよ。君は緊張してないの?」
6歳になったボクのお披露目である式典の日がやってきた。
その出番の直前、ボクは精霊獣のシルフィに話しかけていた。
ボクはシルフィを腕に乗せ、貴族の皆さんが談笑する会場へとこの後入場するのだ。
シルフィが生まれて2年。彼女は少し大きくなった。生まれた時は羽を広げると1メートルくらいだったのが今では1.4メートルくらいになっている。
そのシルフィは緊張するボクを尻目にすやすやと寝ている。
コンコン
扉がノックされ、教育係兼専属執事であるトーレス爺が入ってきた。
「ケント殿下。出番でございます。入場口へと参りましょうか」
ボクはシルフィを起こし、腕の乗せて部屋を出る。
入場口へと歩く途中、ボクはつい5か月前のことを思い出していた。
「お披露目の式典ですか?」
「ああそうだ。皇族は6歳になると国内外へとお披露目の意味を込めた式典をする。ケントにとっては初めての公務だな」
なるほど。てことはボクの姿がたくさんの人に見られるということか。はあ、皇族だからある程度は仕方ないと思っていたけど最初がこれかあ...
「それはいつ開催されるのでしょうか」
「ケントの6歳の誕生祭に合わせて行う予定だ。すでに準備は進んでいる。ケントも明日から衣装の準備などをしてもらう。」
「わかりました」
こうして5か月間、出席する貴族の顔と名前を覚えたり、式典の時の進行を確認したりなど準備をしてきた。
そして今、ボクは入場する扉の前で待機していた。
ボクがかなり緊張しているのは人前で話すということもそうだがもう1つ理由があった。
なんとこの式典、”映像通信”の魔術で帝国全土はもちろんのこと、大陸の他の国に至るまで、多くの人に見られているらしい。
そのためボクはがちがちに緊張しているのだ。
すると扉の向こうから父様の声が聞こえてきた。
「皆の者、静粛に。本日の主役が到着したようだ。」
「ケント殿下、堂々と行ってらっしゃいませ」
トーレスが扉の脇の板に触れ、魔力を流すと扉がゆっくりと開いていく。
「ありがとう、行ってくる」
ボクはシルフィを腕に乗せ、リハーサル通りに歩き出した。
音楽隊の奏でるファンファーレが鳴り響く中を進んでいく。
貴族たちの目線を浴びながら、ボクは堂々と足を進めた。
(おお、あの方が第3皇子殿下か)(噂通り白銀の髪の毛だ。聖なる者の証か)
(腕に乗る精霊獣の美しさよ)(やはり見目も麗しいですわね)
そこかしこからささやき声が聞こえてくるが無視して進む。
そして段を上がり、父様の前へ
「皇帝陛下、本日は私のためにありがとうございます。第3皇子、ケント=アリフ=ラ=オルフェウスがただいま参上しました。」
先に決められていた口上を述べ、家族の皆へも儀礼的な挨拶をする。
「それではケントよ。この場の貴族達、映像を通して見ている全ての者たちへと演説を行うがよい。」
キタ!これが今日一番緊張する行事だ。
ボクは用意された演説台へと上がり、隣の止まり木にシルフィを移す。
そしてこの日のために考えてきたスピーチ原稿を広げ、スピーチを始めた。
「この場に集まった我が国の貴族達、映像を通して見ている全ての者達。私がオルフェウス帝国第三皇子のケント=アリフ=ラ=オルフェウスである。無事にこの日を迎えることができうれしく思う。
・
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・
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・
我が国の発展に尽力することをここに誓う。
オルフェウスよ永遠なれ」
スピーチを終えると、会場だけでなく城の外からも歓声と拍手が聞こえてきた。
ふう、何とか無事に終わった。
ボクはまたシルフィを腕に乗せ、今日だけ特別に用意された席へ座る。
「良い演説だった。ご苦労。」
「父様、ありがとうございます。とても緊張しました。」
「ケント、立派だったよ。6歳とは思えないほどにね」
両隣に座る父様とエルヴァ兄様に褒めてもらった。
エルヴァ兄様は少し皮肉も混じっているかな?
「では次は私の番だな。ケント、見てなさい」
父様が立ち上がり、先程の演説台へと向かう。
そして台に立つと会場がシンと静まり返った。
それだけでなく、城の外から聞こえていた民衆の声も聞こえなくなっている。
聞こえるのはどこか遠くで鳴いている鳥の声だけだ。
「皆の者、私の6番目の子、ケントが今日6歳となり、無事に皆へ御披露目となった。見た目からわかる通り、ケントは聖属性を持っている。まさか私の子に聖なる者を授かるとは思っていなかった。ケントは私たち家族の愛情とともに育ち、これからもそれは変わらない。国民達、貴族達においてはケントが健やかに育っていく姿を見守ってほしい。加えて先程の演説からもわかるように、ケントはまだ6歳だが非常に賢い。将来はこの国のためにより一層貢献してくれることだろう。最後に国民が皆幸せであることを願っている。オルフェウスよ永遠なれ」
父様がそう締めくくると、会場からはまるで爆発でも起きたかのように拍手が巻き起こり、さらに城の外からも大歓声が響いてきた。
「すごい...!」
「父様は国民に大人気だからな。僕も父様のように国民に慕われる皇帝になってみせる。」
エルヴァ兄様ならきっとなれる。イケメンだしめっちゃ頭いいし。
その後、ボクと父様、母様を残し、兄様たちは退場していった。
映像通信も終了し、これからは貴族達との時間だ。
今からは社交の場。貴族同士の争い、もとい切磋琢磨の場だ。
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