第31話 ゼルノスカヤの残魔

「あの丘に三姉妹も従者らも皆集めましたよセルシ隊の皆様、夜明けまではあの場から出られない拘束結界を張っています、頼みましたよ。」


コルセア様の声がセルシ隊の中に届き丘に集結している理由も判明し後はやるだけだと、みな一様に意気込んでその場所へとやって来たのだった。


「この辺りが良さそうっすね」


「ヒロ、リュウ気をつけろ直接彼女らを見ては行けない。必ず鏡盾を通して見るんだ、拘束結界内からは出られないのが救いだが、夜明けまでが勝負だ。やるぞ!」


「では早速俺の子守唄のコンサートの開催っす」



♪ねんねんころりよ おころりよ

坊やは良い子だ ねんねしな


坊やのおもりは どこへ行った

あの山越えて 里へ行った


里の土産に 何もろた

でんでん太鼓に 笙の笛~♪


 

すると辺りには不思議な空気が漂い初めて異常耐性の腕輪をしているセルシ、リュウすらも物凄い眠気に襲われ意識を保つ為に自分の頬を叩かねばならぬ程の眠気が二人に襲い掛かっていた。


「隊長これはヤバいっすね、ヒロの歌唱スキルは予想以上でした…」


「まぁだが、三姉妹の方も鏡盾から見てみろ眠ってくれたようだぞ」


「さぁ次の歌を聴くっすよ」


♪眠れぇ~眠れぇ~母の胸ぇ~に

眠れぇ~眠れぇ~…


「ヒロ ストップだ!俺達が耐えられん…」


「ハハハ…調子に乗ったっす、でも後ろ向きでお客さんに背中向けて歌ったの初めてっす(笑)」


「さぁ今度は俺の仕事だな、今のヒロの歌の間に鏡盾が全員の呪いの鑑定、解呪方法を解析していたはず。行くぞ!コルセア様我らセルシ隊に力をお貸し下さいませ!今こそ彼女らの全呪いをこの地に掛けられた忌まわしき呪いを全て解かん。」


   


   エクスディスペランス



拘束結界内からは睡眠中の三姉妹や従者らから昼間なのではと思える程の光が放たれ、同時に拘束結界の上空にはコルセア様自らが降臨され全てを喜ばしげに、頬に涙を流しながら見ておられたのだった。


「ようやく ようやく解放出来ました。セルシ隊の皆様、このご恩は忘れません。この世界に神が干渉する事ははばかれるのは世の常なれど、私はセルシ隊の皆様の願いなれば、ご協力させて頂きます。」


「コルセア様おめでとうございます。彼女らは記憶が一気に流れ込んでしまうと悲しみにくれ、精神を病んでしまう者とて居ないとは限りません。お願いします、彼女らの精神に安寧があらんことを」


「分かりました先程のメイド、マリノアを含めた全ての我が眷属に安寧が有らんことをこの月の女神コルセアが約束しましょう。」


すると彼女らの頭上にフワッと何かが淡く光り間もなくそれは消えたのだった。


「起きたその時には今までの出来事、時間の経過で300年の月日が立ってしまった事などが理解が及ぶ様に脳内処理のスピードを上げました、これで悲嘆にくれ悲しみに命を投げたす者も居ないでしょう。セルシ隊の皆様誠にありがとうございました。こちらの願いでこの世界に来て頂いたばかりか、我が眷属達をも救って下さり感謝にたえません。」



ブォォォオゥゥゥー!


「何事です?!あれは何ですか?!我が加護の地にあのような異形の魔物など…まさかゼルノスカヤの罠?!」


「全く…余計な事をしてくれるっすね、俺は怒ってるっすよ、彼女達をこれ以上悲しませる事は俺が許さないっす💢」


「ヒロ突出するなっ!」


「仕方ない隊長出ます、隊長は弓で視覚と足を止めて下さい。」


「…許し…許しわせんぞ、ゼルノスカヤぁぁ!」


突如後方より放たれた叫びは誰よりも大きく、そして誰よりも怒りが込められていた。その人こそ


「このヴァルナ帝国が右腕、騎士長ステノが貴様を叩き斬ってくれる!帝都の民の…!奪われた家族らの…!将来を夢見ていた子供らの…!全ての民のヴァルナの民全ての怒り受けてみよ」


紅月斬!!!


その斬撃は本来の威力を凌駕し、ヴァルナの地から溢れるかの様に剣に力を与えていた。


「ステノ…民の全ての民の怒りを悲しみを力を貴女に託します、無為に奪われた命達よ、月の女神が宣言します、今こそ復讐の時!ステノの剣に最後の力を与えたまえ」


ハァァァァッ!


斬ッ!!


ギヤァァァァァ…


「こ…では… おわ…  …ぞ」



「…終わったっすか…」


「この感情の高ぶりはなんだ…」


「…涙が止まらない、民心の集結の勝利だな」


「……父上、母上、民よ私はゼルノスカヤの残魔を倒したぞ…」






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異世界戦友譚  鹿太郎 @hhs452198

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