Disc.01 - tr.13『新入部員とパプリカとUR』sleeve note

「いやー、それにしてもびっくりだよー!!」

「そうだな。テープひとつであそこまで違うとは」

「見た目はそんなに変わらないのにね~~」

「そこですわ。どういうことなのか責任を持って説明なさい、響一郎」

「へいへい」

「返事は1回!」

「へ~いw」

「まったく、あぁ言えばこぅ……」

「まぁまぁ、落ち着けソニア」

「説明お願いね~~雨音くん~~」

「はいよっと。その前に、前提としてカセットにはがあるのを説明した方が良いか?」

「グレード? 値段の?」

「結果的にはそうなるな。無論、その前提として素材の質が違うとか生産工程とか色々あるんだが――」

「紅茶のファーストフラッシュとセカンドフラッシュみたいな~~?」

「ブランデーのVSOとかVSOPみたいなものかしら?」

「銅線の4Nとか6Nとか――」

「あー、まぁそんなとこです。今だとメモリカードにも同じ容量なのに値段が全然違うのがありますね? あれは記録速度とか耐久性の違いで、記録するデータそのものは同じですが、カセットの場合は主に音質に差が出るんですよ」

「それがつまり、素材の違い、と」

「ええ。URもミューギアも同じノーマルテープですが、まず素材が―磁性体と言うんですが―別物ですからね」

「どう違うの?」

「URはごく一般的なガンマヘマタイト(γFe2O3)だな。カセットが生まれた、もっと言えば磁気テープというメディアが生まれた時からある。素材としては一番古く一番長い」

「みゅーぎあ、の方は?」

「ミューギア、もっと言えばそれのベースになったUDIユーディ・ワンという業界では定番のカセットがあるんだが、こいつはマグネタイト(Fe3O4)といって、まぁ平たく言えば天然の磁石みたいなもんだな。見た目が真っ黒なんでメーカーでは"ブラック・マグネタイト"なんて呼んでたようだが。それの表面にコバルト(Co)が薄く貼り付いてて、主に高音域を担当する」

「こっちのURは茶色いな」

「黒髪美女と茶髪ギャル、みたいな~~?」

「何ですのその喩え」

「URのガンマヘマタイトはそれこそ鉄錆そのものですからね。錆びてるってこたぁ安定した状態なんですが、その分エネルギー的なモノは小さくなる」

「なら全部こっちの黒いのでいいのに~~」

「そう言う訳にもいかんでしょう。それこそコストの問題もありますからね。あと、性能は兎も角、安定しているが故に繰り返しの使用に対して耐性が強いというのもある」

「そうか、安いテープはどちらかと言えば業務用に使われる場面が多いのか!」

「それこそ昔スーパーでやってた特売のアナウンスとかですね。それと市販のミュージックテープは、特殊なモノを除けば基本こいつです」

「働き者の軽トラちゃんみたいね~~」

「な、なんかものすごーく腑に落ちた気がしますっ!」

「うふふ~~(*´∀`*)」

「な、何やら軽トラに乗った茶髪のギャルを想像してしまいましたわ……」

「農道を爆走していそうだなそれ……」

「うふふ~~ソニアちゃんも真紅ちゃんも面白いわね~~」

「「……(¬ω¬)」」

「――あー、で、話を戻しますがね。先程のグレード、元々あったのはURが属するLNローノイズクラス。これはそもそも会議用や取材用を想定したもので、人の声さえはっきり聞こえりゃいい、くらいの代物です」

「URでも歌声ははっきり聞こえたもんね」

「で、後に音楽用にと開発された高性能タイプがLHローノイズ・ハイアウトプットクラス。LNが軽トラとすりゃこっちは小型の普通車ってところか。LNと比べて全体的に高出力になっているからハイ・アウトプットってこってすね」

「うむ、確かにそれくらいの地力の差は感じたな」

「まぁ、時代によって高性能化も進んでるんで、一概にLNが音楽に向かないってことも無いんですが――実際、'80~'90年代の国産LNは初期のLHに遜色ない性能ですからね」

「ほぉ、それは興味深い。次回のテーマはそれかな?」

「まぁ、それはおいおい。で、全盛期には更にこの上にSLHスーパー・ローノイズ・ハイアウトプットクラスという高級機があって、メーカーによっちゃそれが2グレードあったりもしたってこってすね」

「なん……だと……(( ;゚Д゚)))」

「そんなにありましたの?」

「全盛期なんで、せいぜい'80年代後半から'90年代初頭のほんの5~6年くらいってところですが」

「そんなに色々あったら選べないよぅ(´・ω・`)」

「当時の人にすりゃそれもまた楽し、ってこったろ。ちなみにその頃だとハイポジにも同じくらい、メタルも多いとこで3グレードはあったから……」

「10を超えるのか!!」

「しかもカラーバリエーションとかファンシー系のもありましたからね」

「よりどりみどりね~~」

「ちょっとお待ちなさい! と言うことは、ミューギアって……」

「ええ。グレードとしては下から2番目。上には上がナンボでもありまっせ♪」

「「「「……(( ;゚Д゚)))」」」」



[Disc.01『新入部員とパプリカとUR』sleeve note 完]


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【特報】


 時は21世紀、史上稀に見る未曾有の災害に見舞われたこの地球を陰から狙わんと蠢く悪の帝国――

 世界を蹂躙する猛威にすべての希望が潰えたかに思われたその時、敢然とそれに立ち向かわんと戦う者が現れた!!

 彼女らこそは地球最後の希望!! 今こそ較正こうせいせよ、キャリブレンジャー!!


 きゃりぶれ! Bonus Disc『劇場版 磁帯戦隊キャリブレンジャー! -出陣!!新たなる戦士-』 絶賛(?)公開中!!


 G.W.連続公開!! ……結局、本編Disc.2は間に合いませなんだorz

 

 大参謀オングーロ、ブラック、ピンクについては追って公開予定の本編Disc.2をお楽しみに!! (おぃ)


 ※磁帯;カセットテープの中国語表記

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