file.11 初期展開②

 

●シーン5 制作スタジオ 4月8日金曜日朝

  

 目が覚めて、目の前に美少女の寝顔。昨夜手を握ったまま眠ってしまっていた。


「き、絹舞さん」


 花恋さんの肩を揺する。


「んあ……、も、もうちょっとぉ」


「寝ぼけてないでっ。朝だよ。先、行ってるよ?」


「いややぁ」


 ↑

 花恋さんはお眠モードの時は人格の壁が剥がれてデレデレ甘えんぼちゃんになってしまいます。


 埒が明かないので、先にリビングに向かい朝ごはんを用意しようと台所で色々やる高坂君。


 花恋さんが起きてくる。

 なお、花恋さんは寝ぼけて自宅だと思っている。


「あ、おはよう。絹舞、さ、さん……? ちょ、ちょっと!」


 花恋さんの姿に咄嗟に目を伏せる高坂君。

 花恋さんは朝起きると、着替えるのにベッドにパジャマを脱ぎ捨て、下着姿の上に毛布を羽織ってリビングに出て来ます。癖です。


「お、おはよ……ふぇぁ?」


 台所に立っているのが檸檬さんではないことに気が付く花恋さん。真っ赤になって隠れる。高坂君、急いでカーテンレールにかけていた花恋さんの制服をリビングのドアの隙間から渡す。


「檸檬さんと連絡取れたの?」


 ドア越しに聞く高坂君。花恋さんは思い出したようにリビングに入ってきます。もちろん着替えた状態で。そしてテレビの横にある充電ケーブルからスマホを引っこ抜き、確認。


 ここで、知らない番号から連絡が入っているのに気が付く。

 ⇒正体は檸檬さんが運び込まれた総合病院。この朝の時点で檸檬さんは目を覚ましています。


 そこにちょうど電話がかかってくる。花恋さんは受け、火事で檸檬さんが怪我を負って入院していることを知る。その日に退院できるほどの軽傷だが、すぐさま病院へ向かおうとする花恋さん。


「絹舞さん、どうだった?」


 花恋さんが電話をしていたソファの元に水の入ったコップを持って行く高坂君。

 ↑

 低用量ピルを服用していると血栓症のリスクが高まると言われており、過度の心配をするほどではないのだが、予防として水をこまめに摂取するというものがある。寝起きの花恋さんへの高坂君の心がけであるが、もちろん本編では直接語らない。


「い、行かなきゃ!」


 高坂君の真心をガン無視で檸檬さんの所へ向かうと言う花恋さん。コップを持った高坂君に気付き、いきなり抱きつく。高坂君はわけがわからず、水を持ったまま硬直。


「え、えっ、と……」


 花恋さん、身体をぱっと離す。その顔は赤くなっている。


「あのっ、泊めてくれてありがとう! 今度ちゃんとお礼するから、その、今はハグで……」


「あ、えっ、あぁ」


 茫然とする高坂君を置いて、花恋さんはぺこりと頭を下げてスタジオを飛び出して行く。高坂君は何があったのかこの時点では知らない状態。



●シーン6 三年二組教室内


「おはよ、画伯」


 朝の騒動を終えてぼんやりと外を眺めている高坂君に、生田くんが挨拶をする。

 ここで初めての画伯呼び。当たり前だが高坂君は自分のことだと気付かずに窓の外を見続ける。


「あ、あれ? おーい」


 生田くんは肩を叩く。高坂君、気付く。


「あ、あぁ、僕……?」


「お前しかいねーだろ。画伯っつったら」

 ↑

 実際にクラスに絵のうまい子はいそうだが、花恋さんが仲良さげに話していたことと、席が近くなったこと、エロ画伯というあだ名、から印象が付き、生田くん自身で画伯と呼んでいるだけである。


 ちなみに高坂君が学校に持って行くのはタブレットではなく、創作ノートにする。休み時間は一人でノートを開いて絵を描いている。(漫画の絵コンテであったりもする。)


 生田くんは高坂君に向かって耳を向ける。何も言わないでいると、手招きをするように何かを求められる。


「え?」


「俺、おはようって言ったんだけど」


「あ、お、おはよう……」


 満足気な生田くん。そのまま椅子に反対に(高坂君向き)に座り、高坂君の机に肘をつく。


「なぁ、ニュース見た? 昨日、日野で大火事あったって」


「……日野?」


 高坂君は前日に花恋さんの実家が日野だと言うことを聞いている。聞き覚えがあるため、引っかかったような返事をする。


「あ、お前家結構遠い?」


「いや、昭島だからわかるよ」


「俺より近いやんけ」


「でも火事とかは聞いてないよ」


「あ、そう? 住宅五棟だって、うち一つは集合住宅。さすがに全焼はしなかったみたいだけどさ、めちゃくちゃな数の消防車が出たらしいぞ」


 高坂君は隣の机に目をやる。この時点で、今日花恋さんが朝から出て行ったこととそれがつながっているのではないかと考える。




●シーン7 制作スタジオ


 線画作業をする高坂君。

 ↑

 ここは彼の仕事内容と描画の美しさを描写する。(時間を忘れて没頭するさまなど)


 インターホンが鳴る。出るとモニターにはなんと花恋さんの姿。


「え、絹舞さん」


「あ、高坂君、あの、ちょっと話したいことがあって。入れてもらえないかな」


「いいけど……」


 高坂君はエントランスの鍵を開け、彼女を招き入れる。


 玄関に入って来た彼女が一言。


「あのっ……居候しちゃ、ダメかな?」


 

 キャッチフレーズ回収。




 ちょっと訳アリで、展開を公開するのはここまでにします。

 後は本編でお会いしましょう。それでは。


 裏設定とかは引き続き公開しますね。

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