Episode 6:仁義なきフェスティバル
原作者の理想と夢を叶えようとするレベッカ、スカイネットランドの実現を目指すDr.デカボット。お互いの譲れない勝負が始まった。
第一試合、先鋒の相手は「大神大号」。図体が大きくパワーはあるが、頭は悪い。それゆえか後先考えずに行動してしまうのがたまに傷。相手がパワータイプなら、マーシャルアーツの達人であるモグで迎え撃とうとレベッカは考えた。
「相手は大男だよ。気を引き締めてかかってよ。」
「承知した。」
試合内容は、自分の技で攻めまくる格闘であった。大号は暴れるのが好きな性格...いや、戦い好きであることは前者も同じ。二人にはもってこいな対戦内容だった。
「なんだぁ、このこわっぱは。この俺に勝てるとでも思ってるんだ?」
「レベッカが推薦してくれたんだ、パワータイプの俺に賭けてな。」
役者が揃えたことにより、始まりのホイッスルを鳴らした。フィールドはただのスタジアム。コロッセオのような闘技場ではなかった。
「スタジアムはそのままなのか。まあいい、こっちからいくぜ。」
相手が突進してきたのだが、単純なためかモグは相手の突進を回避した。
「単純だな。」
「フゴォォォ!!なんの!!」
でかい図体をいかしたボディプレスも、モグにとってぬるいものだった。
「さっきの勢いはどうした?お前はただ、失敗を繰り返しているだけじゃないか。」
「うぐ...なかなかやるじゃねぇか...。だが、これならどうだ!!」
大号の渾身技を繰り出したが動きがあまりにも単純なためか避けられ、空振りに終わった。しびれを切らしたDr.デカボットは彼にこう告げた。
「おい大号。ハリモグラ相手に何手こずってるんだ!?」
「すみません、ドクター...。」
「...とにかくだ、やつを再起不能にまで追い込むんだ。」
「わかりました。」
「そうそう、ついでにだ。やつのマトリクスを掠め取ってこい。それがわしの頼みじゃけん...。」
Dr.デカボットの告げを受けた大号は、必至の形相で飛びかかった。
「今まで俺の攻撃は空振りだったが、次からは失敗しない。今度は本気でいかせてもらう、俺も命が懸かってるからな!!」
しかし、彼の攻撃はあっさり避けられた。
「やっぱお前、単純だな。こっちからいくぜ。エキドゥナアッパー!!」
モグの反撃で彼はあっけなくK.O.された。第一回戦の勝者はモグに決定した。
「おろか者めが!!今の勝負一本取られてどうする!!」
「すみません、ドクター...。」
「何が『すみません』だ!?おぬしは幾つかの失敗を繰り返してよく無様でいられるな、観客の前で醜態をさらしおって甚だ見苦しい。これ以上わしに恥をかかせんじゃねぇ、もう下がれ。」
「わかりました。」
大号はしょんぼりな顔をして、この場から退いた。
次のステージ、第二試合の相手は「桑田賦格」。嗜虐的で残虐極まりない自己中心的でナルシストな性格だがダジャレにめっぽう弱い。D・ランナー「ダブルフェイス」は彼の愛車である。相手がバイクに乗るというなら、ロドゆいが適任だとレベッカは考えたのだ。
「バイクに乗れる人といえば、君にしかないだろう。できるかい?」
「それなら僕に任せてよ。原付だけど...。」
試合内容は、エキサイトバイクのように走る内容であった。
「楽勝だな。」
コース内にジャンプ台が設けられていて、かなりハードな内容に仕上がっていた。位置につき、始まりの合図とともに走りだした両者。ロドゆいは原付、それに対して賦格は原付や自動二輪より高性能な二輪「D・ランナー」を使用。性能の限界か原付では、ジャンプ台との相性が悪かった。最先端技術を使った「D・ランナー」は、どんなフィールドでも十分走れる設計になっており、ウィリー走行でもいける代物であった。
「もぉー走りづらいよ。」
高性能な二輪車に敵うはずなく敗れるロドゆいであった。ビートは姉が負けて残念がると同時に、自動二輪車より性能のいい賦格のD・ランナーに惹かれていた。
「うぁ...負けちゃった...。」
「後悔するのはいつ?今日かい?......プヒャヒャヒャヒャ!!!!!」
それはさておき、第三試合の相手は「安広千尋」。前回の話にも登場した、ドクターズの紅一点。目的のためなら例え火の中水の中、傷害や殺人を厭わない人物でもある。クラベス鈴菜に敗れ溶鉱炉『実際はシロップのプール』に落とされたのだが、今回はその雪辱を果たすべく彼女を名指した。
「鈴菜、この間のようにはいかないよ。」
もう一度やりあおうとするクラベス鈴菜だが、それだけではつまらないとレベッカに制止された。
「もう一度やりあうより、他人に任せたほうがいいと思う。...ジャズ賢一、相手を知ってる君ならなんとかなるはず。いいかね?」
「ノープロブレム。」
試合内容は、手持ちの武器を使ったフェンシングだった。ジャズ賢一の武器は大剣で、隙が大きいがパワーはケタ外れだ。千尋は自分の腕を剣に変形して、やりあうつもりだ。互いの事情によりフェンシングどころか、ただの異種試合になってしまうのであった。
「鈴菜ではなく、お前とは...。ずいぶん舐められたものだ。」
剣を構えたことにより試合を開始した。
「はぐれものどもが、よく群れた。」
「これのどこが『はぐれものども』だ?群れてはないか。」
試合開始と同時に身軽さの先制すなわち、千尋が仕掛けてきた。ジャズ賢一はその重量のある大剣で応戦していた。力任せで振り、千尋を吹っ飛ばした。
「死にまっ...がっはっ!!!」
自慢の大剣でいとも簡単に勝利したジャズ賢一。敗北を許すはずもなく、怒号をあげてしまうほど悔しがるDr.デカボットなのだが...。
「それでわしに勝ったつもりか、忌々しい女め...。やつが後出しジャンケンでいくというならば、わしも同じ手段でいく。」
第四試合の相手は、ドクターズからは何も...。
「わしからはのちほどじゃ。」
「...そこまで先攻を私に譲ってくれるとは。早く終わるとせっかくの余興がもったいないし、ドクターのことだからお楽しみは最後まで取っておくはず。...でもどうしよう。私の仲間が出るべきか、それとも。...よし、私が出よう。」
第四試合の対戦相手はレベッカとDr.デカボットに決定した。その試合内容とは、落ちゲー対決。Dr.デカボットにとって有利な競技種目だった。
「最後に遊んだ日は去年。それ以降はずっと触れていない。...勝っても負けても、恨みっこはなしということで腹をくくるしかない。」
厳しい勝負になるだろうが逃げ出さずに、最後まで突き進むのがレベッカ流であった。その落ちゲーというのは...ロシア産の落ちゲー「テトリス」。
「相手がロシア人なら、このゲームかと。」
Dr.デカボットはロシア人であると思ってセレクトしたものだろう。主催者のセレクトに納得できぬような顔をしている彼だが、どのゲームも受けて立つのが彼の礼儀であった。お互いの夢を懸けて試合が始まった。現在の記録は2点×1点。レベッカチームがリード、ドクターズはもうアトがない、一点も逃したら事実上敗北、彼の夢は潰えることになるだろう。自分の夢が懸かってる、負けられんと意地張って棒を落とした。
「『ロシア人』といったな?惜しいな主催よ。訂正しておく、わしはロシア人だなんて一言も言っとらん。von ヴィトゲンシュタイン、わかるか?」
「von ヴィトゲンシュタインですか...。ヴィト(略 とはロシア人の姓ですよね。」
「同時にゲルマン人の姓でもある。知らんか?」
「ドクター、よそ見している場合か?見よ、私のほうがリードしているよ。」
「それでわしに勝ったつもりか、よそ見程度で負けるわしじゃねぇ。ゴーストラップだけやってると思ったのか。どのゲームでも遊びこなしているのじゃ。一本のゲームに限らずな!!そういうお主こそどうじゃ?」
「君に言われたくないな。」
ゲーマーとして彼の実力は侮れないほど本物だった。対戦ゲームに限る。だがレベッカはどんなジャンルにも遊びこなすゲーマーでもあった。お互いに正々堂々対戦を続けた結果、いつの間にか形勢逆転されていた。Dr.デカボットの勝利により、2×2同点になった。
「...敗けは敗けだ。君にゆずってやる。1勝だけね。」
負けても意味深な言葉を残した後、最後の試合に移った。
相手側はDr.デカボットの側近「加藤潤」にしか残ってなかった。彼はドクターズの最年長で、昔より先代に仕えていただけあって、相当の実績を持つ。彼を相手にどうするのか、作戦会議をしているレベッカ達なのだが。
「あのじいさん、相当な手練れだよ。どうしよう。」
一度出場した人物は再度出場できない。つまり同じ人物を再び出せないということだ。17人中4人使ったので、残り13人の中から一人選ばなければならない。実力のある人あるいは意外な人でなければ、ただ者ではない彼に勝つことは難しい。残された手はひとつだけ、原作者に頼るしかなかった。文化祭はとっくに16時で終わったので、今の時間帯で原作者を呼び出しても問題なかった。呼び出さなくても、原作者から会場に来てくれたようだ。レベッカ達は原作者の判断を委ねていた。相手はあのじいさん、将棋ができそうな人であると判断した。相手が将棋の達人ならば、こちらもチェスのプロで迎え撃つということで、繰り出す選手は「ヒメ」に決定した。「チェスができそうな人といえば、君しか考えられない。異論はないかね?」
「Tak, 喜んで。」
最後の試合内容は、原作者の狙いどおり?のチェス対決だった。たとえ違うゲームに出されようが常に冷静なあのじいさんであった。両者とも座席につき、最後の試合が始まった。互いの駒を落としつつ、一歩も譲れない戦いになっていた。
「お嬢様、なかなかやりますな。」
「あなたこそ。」
「ですが坊っ様のためです。負けるわけにはいきません。」
「忌々しい連中に負けるんじゃないぞ!!」
ドクターからの声援を受けたあのじいさんだが、試合が長引くつれに、彼は次第に劣勢に立たされていった。
「そうなることを読んで...どうやらあなた様の実力を見くびりました。状況を覆すすべはわたくしにはもうありません。完敗です。」
チェックメイトによりヒメの勝利、団体戦の勝者は『レベッカチーム』に決定した。これをもって勝利と名声と栄光をつかみとったのはのはレベッカ達であった。
「勝利おめでとうございます。あなた方のおかげで、ビッグイベントは最高に盛り上がりました。ハプニングが発生してなお無事、終わることができました。ならず者を退けたレベッカ様に拍手を!!」
会場に残っている観客はレベッカ達に拍手を送った。一方Dr.デカボットは。
「よい余興じゃった。これくらいやらなかったらイマイチ盛り上がらなかったからな。」
実は主催として中途半端なニコ・ロデオンをフォローするために、事前に彼との打ち合わせをし、ドクターズ乱入はイベントの一部として組み込まれていたのだった。組織的なグルだと言えるだろう。
「最高に盛り上がった結果だし、よしとするか。」
「坊っ様、時間です。」
Dr.デカボット達は会場から去っていった。
表彰式、原作者とレベッカはめでたくトロフィーと栄光を手にすることが叶った。
「全世界の人気者になれたのも我が妹のおかげだよ。」
「人気者になりたいと夢見た兄貴だからこそ、私たちはここまで来れたのよ。」
そして閉会式、主催者の言葉を会場全体に...いや、中継放送を通じて主催の言葉を全世界に伝えた。
「最後まで楽しんでいただいた皆様のおかげで、イベントは最高に盛り上がることができました。本当に感謝しかありません。エンターテイナーとしての私から一言、レベッカ様と愉快な仲間達に祝福を!!全てのプログラムは以上です。ありがとうございました。」
ビッグイベントは終わった。自分の夢を叶えるために、主催者と参加者(自分と他人)の理想のために、彼らはそのために準備をしてきた。レベッカチームとドクターズのフォローで、主催者のビッグイベントは大好評な結果を出した。最高に賑わったこの出来事は、二度と目にすることはないだろう。
翌月4日、今日は原作者とレベッカの誕生日だ。お茶の間にトロフィーが飾ってあるし、なにより誕生日プレゼントは既に贈られていた。16歳迎え、成人に近づいたことをレベッカは実感していた。
翌年4月、それは別れの季節でもある。原作者とレベッカは少し遠い場所へ引っ越すことになった。地元の学校の友達とはお別れになった。遠く離れていても、日が過ぎ去っても忘れない、前年の出来事は夢のように楽しかった、心に残る思い出を胸にして、荷造りを進めていた。それが終わった時、原作者とレベッカは新たなる地へ旅立った。Good bye, 12歳の頃より暮らした世界。いつかまた会う日まで。
Rebecca First Story - END
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