2008 First Story

Episode 1:夢と理想を目指して

 これは、全国の人気者になるために活動するレベッカの最初の物語。


 2008年頃、インターネットを通して自らが全国の人気者になろうとする女がいた。彼女の名は「レベッカ」、中学三年生。元々は10歳頃よりコンピューターを使って遊んでいた彼女だが、インターネットを利用して人気者になりたいという原作者の願いで、本格的に活動することとなった。その時のレベッカはまだ一人だった。効率よく盛り上がるためには多くの仲間が必要だ。そのためか、最初の目標は仲間何人か集めなければならなかった。原作者はレベッカの仲間を探索し、居場所を教えた。「最大15人まで集めよ」と指示した。

「兄貴がそういうなら、やってみるよ。」


 一人目の仲間は、未来人を自称する白い女「ミント彩香」。原作者の話によると、「遥か未来2032年からやってきた」というらしい。彼女は荒廃した未来の住民であり、超能力の使い手でもある。電子掲示板の常連で、未来の出来事について書き込んでいたらしい。そこで一言コメントした。

「興味深い。」

これだけ書き込んだだけであった。返事に時間がかかりそうなので、放置していった。


 数日後、彼女の書き込みが来た。

「褒め言葉どうも。私は未来人だけど、誰も信じてくれなくて困ってるところだよ。もしよければ、私にメールして。」

この内容を確認したレベッカは、ミント彩香宛にメールを送信した。

「待ち合わせはステイションにしよう。最寄のカフェで話し合おう。」


 次の日、どこかの駅で待ち合わせていたミント彩香は、レベッカが来るのを待っていた。

「わりぃわりぃ、遅れてしまった。」

「遅かったじゃないの。」

当たり前のことだが、バスの遅れのせいだろう。それは仕方ない事であった。

「とりあえず、カフェに寄ろうか。」

カフェというより、ドーナツチェーン店舗「メガドーナツ」に寄った。

「...それで、何の用件で?」

「友達になってくれるかな。兄貴のためだ。」

「それだけのために私を呼び出したんじゃないでしょ?...しょうがないな。長話を聞いてくれたら、考えてあげてもいいけど。」

「じゃあ聞かせて。」

彼女の長話を聞くことになった。


 彼女は廃墟の中で生まれ育った、2016年12月頃の事だった。生まれる前は以前にあった、わけのわからない妬み、怒りによる日本全土に内戦が起きたらしい。この出来事で人間の中にある得体の知れないエネルギーを増大していった。これは序の口に過ぎなかった。


 犯罪者と一般人との争いという恐ろしい発展をした。何もできぬままやられるのか、ただ怯える日々を過ごすしかなかった。そういった人間の愚行に気づかないまま2017年6月14日、最もおろかな行為をした。全面核戦争が勃発し、30億の人命が失われた。その時の彼女は7歳の少年とともに核から生き延びたらしい。その後、Dr.デカボットの巨大組織「スカイネットランド」に保護された。心悪しき者を生み出さんと人間を制御するための当局であった。だが意にそぐわない者が続出していて大問題になっていた。不自由な管理や制御に耐えかねる者、Dr.デカボットに背く者、そういった人々はスカイネットランドに反乱を起こした。2031年の頃であった。


 「凌魔・フォン・ヴィトゲンシュタイン」は先代Dr.デカボット「ラインハルト・ヴァルサー・グラーフ・フォン・ヴィトゲンシュタイン」の息子であり、組織を治めるボスでもあった。上流階級に身をおき、「Dr.デカボット」の名を得たという。部下を計画のための道具としか考えられない残忍な性格の持ち主で、楯突けば確実に粛清される恐ろしい人物だ。こっそり聞いた話によると、彼の母親は暗い表情の女らしい。凌魔の支配下から逃れるためにミント彩香は、Mr.黒澤の試作品「タイムマシン」に乗り2006年冬へと転移した。


 試作段階のタイムマシンは一度きり(わかりやすく説明すると、読み出し専用)なので、元の時代には戻れない。元の時代の様子を知る手段はない、追手が来るのも時間の問題、じっとしていても仕方ないので、適当にうろついた。


「どう?つまらない話をして悪いね。」

「君の生い立ちはよくわかった。私の前に本物の未来人がいるとは感激。君の仲間はどんな?」

「賢一に鈴菜、次郎、雪郎司令官。そんな人かな。私の時代の人だから、なかなかお目にかからないけど。」

「未来の私はどうなってるの?」

「詳しいことは言えない。ただ、未来のあなたは伝説の勇者になっていたような。」

「人気者になったかどうかは、あやしいな。それより、Dr.デカボットことドクター...凌魔の父親はどうなったの?」

「先代は宇宙に旅立ったの。妻と息子を置いて。」

「家族を顧みず...か。なんでだろう。」

「あれはもう私の時代は絶望に満ちていたから、そんな感じ。」

ミント彩香の長話はここまでのようだ。

「詳しく話すと面倒なことになるので、ここまでにしよう。最後まで聞いてくれてありがとう。」

「じゃあ、仲間になってくれるのね。」

「もちろん。私の連絡先を教えてあげる。どうぞ。」

「よし、一人目クリア。ってことかな、兄貴。」


 ミント彩香はレベッカの仲間として忠義を尽くすようになった。帰宅後、次のミッションを伺うレベッカだが原作者はこう説明した。

「氷の使い手を会いにいってきよ。」

「誰かな。」

「早苗だよ。アイス早苗。近づいた者の腹が冷えてしまうという案件が多くなってきてるんだ。翌日に彼女を調査しよう。」

夜は遅いし、これぐらいにしておいて二人は就寝した。


 翌日、アイス早苗を手中に収めるべくく二人は出現ポイントに向かった。原作者はレベッカを陰ながらサポートする役を担っていた。レベッカの前に現れたのは、アイス早苗だった。彼女は快感を得るための常習犯で、へそを露出した女性を狙っていたらしい。

「あんた、原作者のお気に入り『レベッカ』でしょ?」

「ああ、そうだが。」

「あたしを呼んだのは原作者のはずよ。なぜあんた一人なの?」

「訳があって、ここには来ないよ。ただ、仲間に加わりたいと兄貴の願いだよ。」

「ここまで呼び出して、それだけ?仲間になれって言いたいだけじゃん。...原作者のお望みなら喜んで仲間になってあげよう。ただし、条件がある。ちょっと面を貸して。」

彼女のわがままに付き合うことにした。目の届かない路地裏で、彼女の話を聞くことに。

「誰もいないとこで君の話って。」

「仲間になってあげる代わりに、噂話とあたしの話を聞いてほしい。」

「じゃあ、聞かせてよ。」

「ドクターのことと、あたしのこと、どっちを先に聞きたい?」

「じゃあ、ドクターの噂を知りたい。」

「わかった。少し短い話だけどね。」

順番に話を聞くことにした。


 若き天才科学者「Dr.デカボット」は、二代目にあたる。


「それだけ?」

「言ったでしょ。少し短い話って。でも、ここからが本番よ。あたしのことを知ってもらいたいな。」


 アイス早苗、彼女は先代Dr.デカボットの部下「黒田博士」の娘でもあった。昔、先代や父親とともに生命体の老化を遅らせる研究をしていた。失敗や改良を繰り返すことで研究は順調に進みつつあった。


 1999年10月下旬、テレビで物騒な事件を確認した黒田博士は以後、娘を守るために先代に助けを求めた。先代は悪の手から守るべくく、自分の身を守るべくく、異能力の開発を行っていた。プロジェクトゴーレムや老化抑制研究を忘れずに並行開発を進めていった。


「ドクターの話は短いんじゃなかったっけ?」

「言ったでしょ、ここからが本番って。」


 試しに、実験に使われる動物に異能力を与え、50パーセントの確率で覚醒した。一方失敗作の末を知るものは誰も知らなかった。


 そんなある日、早苗は好物の冷たいものを食べている最中、試作段階のマシンと接触していた。「プロジェクトゴーレム」で開発されていたマシンのことで、当時の彼女にとってこれは自分を守ってくれるロボットであった。


 次の日、次のまた次の日、密かに接触を続けた早苗だが、転機が訪れることとなった。いつの間にか異能力を獲得、それどころか老けにくい体質に変化してしまった。いつ能力を獲得したのか、接触させたのも先代の計算の内なのかはわからない。


 2002年6月上旬、彼女の誕生日から6日後、例の事件のドキュメンタリー番組を視聴していた早苗だが、悪いニュースを聞かされることとなった。黒田博士は例の事件から2か月後、行方不明になっていた。だが、これだけでで終わる最悪の話ではなかった。行方不明から1ヶ月以内で既にシんでいたとすれば、事件に巻き込まれてた可能性は否定できない。


 黒田博士の正体は昔より活動した正義のヒーロー「フローズン」だった。早苗が能力を獲得して間もなく、女子大生を手にかけたヴィランを追うべく研究施設から飛び出した。先代と娘に事情を話さずに。翌年、北海道にいるという噂を聞きそこまで追ってきた。ヴィランと対峙し、身柄を確保しようも力及ばず、返り討ちに遭い生死不明となった。その数日後、ヴィランは責任逃れのため湖へ飛び出し最期を遂げた。


 全貌を聞いた早苗は、理解できまいと荒れてしまう。ところが、暴走寸前にロボットが来た。そう、「プロジェクトゴーレム」とは彼女をサポートおよび万一異能力の暴走が起きた時、それを抑えるためでもあった。

「オマエノオヤジハシンデハイナイ。」

「本当なの...。」

「チャントイキテイル、オレハソウ確信シテイルンダ。訃報デハナク朗報ダッテコトヲ、アリガタク思エ。」「...まだ名前つけてないね。何にしよう。」

「カラダデカイ・デカボット。オレノ名前ダ。」

「それより、あたしのお父さんが生きているということは、北海道のどこかにいるってことになるのね。当時のニュース覚えてないけど。」

「シンダノハ、ヴィランノホウダカラナ。オヤジガシンダナンテ一言モ言ッテイナイ。」

博士は生死不明というより行方不明なだけで、シんだとは限らないようだ。


 以後、彼女はいなくなった父親探しの旅に出たのであった。女子大生を狙うならず者を払い、ストーカー犯罪から守っていった。インターネットで起きた、法では裁けない悪党が相次いでいる、彼女は影で裏社会の悪党を粛清していった。


「君の過去はわかった。しかし今となって、へそ出し女を狙うの?父親探しはどうしたの?」

「これはあたしの趣味でね。あたしのお父さんはいなかった。」

「やはりシんだと思い、鬱憤晴らしでやってるのか。見つからないからといって、能力を濫用するんじゃない。腹回りを冷やしてね。」

「くだらないことに使ってない。見つけられなかった腹いせでもない。」

「じゃあ、ただの趣味ってこと?といっても、例の事件の悪者と何ら変わらないじゃん。」

「女子大生を手にかけた愚か者と一緒にしないでくれる?」

「......。」

彼女の話はここまでのようだ。これ以上話すことはなかった。

「約束通り、仲間になってくれる?」

「これ以上話すことはないし、あんたの仲間になってあげてもいいけど。」

「よし、成立だね。二人目クリア。」

「何か言った?」

「いえ、こっちの話。」


 最初の仲間が2人増えた。どれも変わり者だが新しい友達が作れてよかった、その調子なら当初の目標が達成できるに違いない。


 2008年春、レベッカは高校生になった。引き続き校内、校外でも仲間集めを続行するも今は入学したばかりで作るには時間がいるようだ。集めたての二人の力をもってしても、人気者にはならなかった。この人数だけじゃ足りない、目標達成まであと13人を集め、協力しなければ夢のまた夢のままだ。これから集まる愉快な仲間との絆の物語は始まったばかりだ。

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