13話-3 沼を進む 進化の果ての姿

 昨今、私が住む高崎市は駅前を大規模な再開発をした。

 その中に大型商業施設「オーパ」というのがある。

 もっとも、地元民というより近郊の埼玉とか長野辺りからキャピキャピのギャル(死語)が来る。

 でも、郊外のイオンモールぐらいしか大型施設のなかった高崎市には名物と化している。


 最上階に本屋さんがあった。

 過去形だ。

 今は何のテナントがあるか分からないが、中々品ぞろえがよく時々立ち寄っていた。

 駅近くなので時間つぶしにもなった。


「某月某日 閉店します」

 そんな看板を見て私は少し悲しくなった。

 諸行無常と言えばそれまでだけど、開店当時から使っていたのでショック。

 まだ、帰るの電車まで時間がある。

 エスカレーターで下の階に行く。

 すると、【100時間煮込んだカレー】という文字が目に飛び込んできた。

 夕食時まで時間がある。

 気が付いたら注文していた。

「牛筋カレーにフィッシュフライ、唐揚げを乗せてください」

「では、この番号札でお待ちください」

 札というより小さい機械を店員さんが渡してくれた。


 端の席で私はぼんやりしていた。

 すると、やかまし男が出てきた。

――ふうん、100時間ねぇ

『何、文句あるの?』

――ないよ、というか、たぶん、ある意味で欧風カレーの進化系だなぁと思って……

『どういうこと?』

――細かい歴史は省くけど、インドは欧州各国に支配されたことは歴史の教科書で習ったな

『うん』

――その時、インドの煮込み料理が何故か『カレー』と名付けられた

『ほほー』

――肉じゃがや筑前煮を一絡ひとからげに『ジャパン』と言われるようなものだぞ……それに、一晩ならまだしも100時間かけるってどうよ?

『まあ、味が染みて美味しいだろうけど……』

 その時、機械が震え、音を出した。


「おまちどう様でした。牛筋カレーにフィッシュフライ、唐揚げ乗せです」

 店員がお盆に乗せてくれた。

 私は渡されたお盆ごといた席に戻る。

 まずは揚げ物を食べてみる。

 美味しい。

 ルーのかかっているごはんを食べる。

――どうだ?

『うん、牛筋がとろっとろで美味しい……前のチキンカレーがトマトが効いていたけど今回はスパイスとかが効いているかな……?』

――そうか、そうか。じゃあ、そろそろ本番だ

『本番?』

――今までは、言うなら沼の周りを調査していた。今度からが源流、インドカレーを食べるぞ!

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