smily days3 ~身動きとれぬ自分の心~

若星 明花

第1話

 僕は、とあるスナックでバイトを始めた。

ただ、仕事の内容はそこで働く女の子の呑んだ後のサポートや送迎だけだ。やはり、精神障害に身体障害も抱えているとできる仕事も当然ながら限られてくる。


寂さ、不安、生きづらさ、自信の無さ…


これらの感情もぶつけられる所は限られている。何をしたら自分の意思が伝えられるのだろう。もはや自分は生きてていい存在なのかわからない。いつからこんなに「自分」が認められない世の中になってしまったのだろう。


「あ〜あ…疲れたあ…」


いつの間にかベッドの上でそう呟くのが癖になっていた。

まあ、僕は人間として一番下の立場なのだから仕方ないか…


そういえば、呉葉は何をしているのだろう?

不意に寂しさがこみ上げてきた。

バイトを始めてから呉葉と会う回数は減ってしまった。

寂しがり屋で甘えん坊な僕にとって、彼女と話している時だけが癒やしのひとときだったのに…


「ねぇ、1人でいて寂しくはならないの?」


とうとう我慢しきれなくなってメールをしてしまった。


「寂しくはならないよ。普通に気楽だから。むしろその孤独をかっこよさだとおもえばいいじゃない。孤高な人間ってかっこよくない?」


呉葉には本当にわかるのだろうか?精神障害と身体障害のはがゆさが…

呉葉は持病持ちとはいえ、それを除けば普通の人間だ。


「今夜は中々眠れないよ…」

「でも寝ないと明日キツいんじゃない?」

「中々あらゆる事をプラスに考えられなくて…」

「プラスかマイナスかは関係ないよ。これからどういう人間になりたいかを考えなさいよ。」


これで呉葉とのメールは途絶えた。いつの間にか寝てしまっていたらしい。


やらないといけないこと、やった方がいいこと。頭ではわかっててもなかなか現実には行動できない。

この辛さ、はがゆかしさを全員じゃなくていいのでほんの少しの人にだけにもわかってほしい。

ほんの少しの人でも共感してもらえると、光がみえて生きていく希望になるのだから。


「自分の心の鎖を外す魔法が欲しいな。」

「本当だよね。人を騙したり、否定したり、なぜそんなに他人を傷つける事しかしない世界になっちゃったんだろうね?」

「共感したり、相手をいたわれる世界になってほしいよね。」


そう、これは君と僕、そしてこれまで僕達と一緒に物語を紡いできてくれたみんなとの願いだ。


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