十二首目 天津風

 おはようございます。十二首目です。


・詠み人:僧正遍昭


・天津風 雲の通ひ路吹きとぢよ をとめの姿しばしとどめむ


・訳:空たかく天を吹く風よ、雲の通り道を吹き閉ざして、天女たちが帰れないようにしておくれ。天女たちの美しい姿を、もうしばらく地上に留めておきたいのだ。


 曇らせろって事でOKですか?


 どうですか? 姉さん。

 天女が昇って行くのは、月の光のきざはしですか?

 それとも雲の敷物の上を歩いて行きますか?


 私は今まで、雲の合間から溢れ落ちる月の光の上を伝って、天女が天空に帰って行く所を想像していました。

 そこまでは、まぁ、良いんですけど。この訳だと、その雲の合間を吹き閉じよと、そう言う事らしいのですが、私は雲を吹き払うものだと思っていました。

 吹き払っちゃえば、溢れ落ちる月の光も無くなるでしょ?


 せっかく天女がいるのに曇らせるって、考えるかな?


と、思っていたら、詠み人も天界の人で、雲の通路を閉じて天女達を下界に下ろすな。

そう言う歌だそうです。

 ちなみに天界とは宮中のことです。

 市民には分かりかねる情景でした。



 僧正遍昭は、深草少将と同一残物だそうです。

 深草少将は、小野小町の彼氏さんで『百夜通い』などのお話で有名らしいですよ。


 けれど天女は小野小町さんの事ではないようです。


 新嘗祭(宮中祭祀のひとつ。 天皇がその年に収穫された感謝の奉告を行い、これらの供え物を神からの賜りものとして自らも食する儀式)の翌日に、『五節の舞』と言う舞楽が執り行われ、そこで五人の少女達が踊るらしいのですが、その舞楽がいつまでも続けば良いのになぁ。って思っているらしいです。

 天女は五人の少女達のことです。


 少女は何歳くらいなんでしょうね?


 紀貫之はこの歌を「歌のさまは得たれどもまこと少し」と評したそうです。


 どうなんでしょう?素人なのでよく分かりませんが、『天津風』は男性っぽい感じがします。天女と合わせるなら、もっと優しい言葉の方が良い気がします。『春の風』とか……新嘗祭はギリギリ初春と言っても良い時期のはずです。


 いつものやつは、今回は難しいですね。

 書きながら考えているのですが、出てきません。

 そうですね。


「モテたい男になるなら、女心を気にするな!」


 小町姉さんは『はなの色はうつりにけりないたずらに……』と詠んで、衰えて行く己を儚んだのに、深草はそんなこと全然気にしないで『……をとめの姿しばしとどめむ』と詠んでしまう。でも、深草はもてたらしいです。


 いつまでも女性に若々しさを求めるのは、男のエゴですね。


 歳を重ねても美しい女性は美しいのに……

 なので私はこんな句を一句、


・春過ぎて めぐる秋風 彩りしくさにもへる 色の香り


 紅葉の歌ですね。

 白秋の頃だと思って下さい。

 女性たちが熟れて益々 色付いて、その美しさは紅葉のようだ、そのしくさ……歳を重ねて会得した仕草からは、そこはかとない色香が漂って来ます。そんな歌ですね。

 

『もへる』には、紅葉が『燃える』や、年を『経る』とか、『得る』の意味を掛けてみました。

『萌える』は本来は『芽が出る』の意味ですが、現代なら『萌え』てもいいと思います。

 『姉へ』の104話に書いた、おでん社長の奥さんの、髪を結う仕草が歌の元にありますでしょうか……

 

 それでは、おやすみなさい。




*「学研:実用特選シリーズ 見ながら読む歌の宝典 百人一首」を参考にしています。


人物については、ネットのサイト等での独自の調査になります。

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