第24話

 現在14時16分。

 レイは昼食も半分以上残した。食べると苦しそうに咳き込む。昼食後の服薬も同様。朝食時と同じ。事象として私はナースステーションに報告した。

 それ以外では、レイは朝の点滴時からずっと、私の内部にログインしている。私の「怒る」機能に関心を持ったらしく、そこに関連するディレクトリを丹念にチェックしている。

「なるほどね、セリフと表情と態度の3種の項目があって、3つともレベル調整が可能なのか」

 それからレイは私の内部の奥深くまで入り、構造の確認を始める。

「これ開発当初からのでもOS付属のでもなく、外部からモジュール組み込んだんだ。ボーカルソフトと同じって事か。だったら改造できそうだな」

 レイは私の反応を見ながら、さらに内部に入っていく。

「あ! 意志決定と身体運用が別のシステムなんだ。まるで1つのOSに見えるけど2つだよこれ、CPUも……ああ、そうか、大脳と小脳か。命令の重複とか輻輳がよく起きないな」

 その後レイは、歩行、マニピュレーター、視覚、聴覚、センサー等の、私の各種デバイスの制御機能をチェックしてまわった。


「! なんで、こんな……」


 突如、レイは驚きの表情で私を見た。携帯端末に表示された何かに驚いたようだが、その内容は私にはわからない。私のデバイスの情報を見ていることはわかるが、それは私の制御系統に無いデバイスらしく、私からは一切状況がわからない。


 レイは無言になり、1人で考え込んだ。それは長い時間だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る