えずまがごせえ

鮎河蛍石

万度こんにゃくのつくり方

 壮齢の婦人が、金盥かなだらいに入った白い塊を手際よく混ぜている。

『万度こんにゃくのつくり方』

 なんとなく起動したYouTubeのおすすめに挙がった動画のタイトルだ。

 

「芋から粘りが出たところで、にがりをいれます」

 婦人が簡素な解説を挟みながら、淡々とこんにゃく作りを進めてゆく。

 はて、本来のこんにゃく作りでにがりを使っただろうか。

 そんな些細な引っ掛かりをおぼえる中、茹で上がったこんにゃくを婦人は慣れた手つきで、ステンレスのバットに並べてゆく。

 丸々とした真珠を思わせる万度こんにゃくが容器に整列して動画は終わった。

 無償にこれを食べたいと思った。

 再生数は3万回。コメントはできないよう設定されており、投稿アカウントは万度畑町地域振興課とある。動画の説明欄を開くが何も記載されていない。万度畑町地域振興課のチャンネルページを調べたが、『万度こんにゃくの作り方』しかUPされていない。


 Googleで万度こんにゃくと調べる。しかし、例の動画しか検索に引っ掛からない。

 では万度畑町ならどうだ?

 結果はかんばしくなく地図情報のみヒットした。万度畑町まんどはたちょうと読むのか。車を転がせば片道、一時間半ほどで行ける距離だ。

 明日は仕事も休みだし、特に予定もない。

 万度畑町に行ってみよう。

 

 万度こんにゃくの食感に期待に膨らませ床に就いた。




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