【奨励賞】 Good night

Good night

著・霜月 はつ果

https://kakuyomu.jp/works/1177354054921309822 


 眠らない穂苅藍は、神様に願い事を叶えてもらうために家宝集めをする烏丸の手伝いをして、二人ぼっちの夜がはじまる作品。

 

 現代ファンタジーに恋愛要素を含んだ、古い言い方をするならジュブナイル的な作品だと思った。

 神様に睡眠を取られて眠らなくていい、という発想は面白い。

 ちなみに眠らない動物は存在しない。一般的に草食動物の睡眠時間は比較的短く、肉食動物は長いといわれている。

 子犬に睡眠を取らせなかったらどうなるかの実験では、数日後に亡くなり、脳に深刻な病変が発生していたことがわかっている。脳のないクラゲも眠ることが確認されており、睡眠に脳は関係ないようだ。

 長時間起きていても、キリンは百十四分、キイロショウジョウバエのメスは七十二分、オオグンカンドリは四十二分の睡眠を取っている。どんなに睡眠時間が短い動物でも、完全に眠らずに生息することは不可能で、最低限必要な睡眠をとらないと生きていけないのが現実だ。

  若いうちは体力があるので、睡眠不足が常態化してもなんとかなるが、睡眠を軽視する生活習慣が定着し、長期化すると、健康リスクが高まっていく。

 母親の願いを叶えた神様は、穂苅藍の睡眠を取ったため、彼女は眠らなくなった。なので、神様が眠ることで彼女の睡眠も代行されているのかもしれない。

 睡眠不足で憂鬱、頭がスッキリしない、などの症状が彼女には起きていないからだ。

 自分が眠る代わりに神様が寝ていてくれる。研究者や締切に追われて働く人達なら喜ぶかもしれない。眠らない上に疲れないとなれば、それこそ四六時中働いて稼げるだろう。

 親に不平を漏らすより、自分の特別な力を活かす方向に注意をむけるべきだと読んでいて思った。

 高校生の時、ようやく夜間外出禁止を破って外に出る。もっと前から外出していてもおかしくない。夜間に出かけるなら、都心のセンター街にでも足を伸ばせば、不夜城のごとく明るい町中を人が行き来している光景がみられたはずだ。

 少なくとも、テレビのニュース映像などで目にしたことはなかったのだろうか。

 家宝集めをしながら、神様と会うのだけれど、お手軽に会えている感じがした。手軽に会える世界だから、母親も神様にお願いをしてすんなり叶えてもらえたのかもしれない。

 男女がいたら必ず結ばれる展開は、お約束なのだろう。

 彼女と一緒にいたいから、烏丸は自身の残りの睡眠を引き換えに、穂苅と元気に過ごせるよう見守ってほしいと願う。取引になってない気がする。かといって、突然大きな願い事を持ち出すのも話の流れからしておかしく思えてしまう。

 主人公は穂苅なのだから、一人ぼっちで夜を過ごすのが嫌いと言っていた彼女が二人ぼっちで過ごせるようになったのだから、これでいいのかもしれない。

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