第7話

 土日。隣からまるで大掃除でもしてるかの様なゴトゴト音がした。

 月曜日から、隣がずっとやけに静かに感じた。それでも“KEN”の投稿は毎日更新されている。まるで、今のお隣さんへの俺の気持ちと状況とリンクしているみたいで……いつも以上に物語に感情移入している俺がいた。   


 そして、金曜日。朝の七時四十五分。

 お隣さんは、出て来なかった。


 夕方、いつものファミレスにもハンバーガーショップにもお隣さんは居なくて、俺は自分の家に帰った。本当に静かだ。

 携帯をチラッと見る。時刻は、夜八時五十三分。俺はなんとなく胸騒ぎがして、お隣さんの部屋のインターフォンを押した。すると、やたらとインターフォン音が室内に響き渡っているのが聞こえた。……もしかして?!

 俺は異常だと思う。でも止められなかった。俺は部屋に戻り、ベランダからお隣さんのベランダへ飛び移った。そして窓には鍵が掛かっていて。部屋を覗くと……。

 ……嘘だろ?

 俺は、自分の部屋に戻った。


「お隣さんの……名前すら聞けなかった。」


 俺は、泣いていた。

 お隣さんの部屋はカラッポだった。


ティコンッ!


 “KEN”の小説が更新された。

 内容は、主人公は想いを伝えられないまま去ってしまう、という内容だった。

 そして「ちゃんと伝えられる時に伝えればよかった。大好きでした。」と、締めくくられていた。


ーーーーーー


 結局お隣さんは、引っ越したみたいで、俺はと言うと、みのりと相変わらず何も無かったかのように付き合っている。


 そして、今日も“KEN”の小説は更新されている。本当にお隣さんは、“KEN”だったのだろうか?むしろ……お隣さんは居たのか?

 でも確かに毎日、隣には誰かの住んでいた音が聴こえて、そしてあの日、俺はお隣さんを抱き締めた。

 みのりよりも身長は少し高くて……でも肩はお隣さんの方が華奢だったな。

 

 『これで良かったのかもしれない。』

 そう自分に言い聞かせたいのかもしれない。


 お隣さんは、初恋の“けん”さんにまだ恋をしているのだろうか?

 

「ちょっと!賢!聞いてるの?」

「聞いてる。聞いてる。」

「んもー!絶対聞いてなかったあ!」


 女の子って本当によく喋るよな。


「みのり。好きだよ。」

「え?なに急に?!」

「ちゃんと伝えておきたくてさ。」

  

ーーーFinーーー


★☆★“KEN”☆★☆

 

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隣のSecret girl あやえる @ayael

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