隣のSecret girl

あやえる

第1話

 出版業界は追いやられている。

 電子書籍、雑誌には付録を付けるのが当たり前。また、作品自体も大ヒット作が出ない世の中……奇跡は起こった。


 正体不明の世界的文豪“KEN”が表れたのだ。

 最初は小さな小説投稿サイトに、投稿が始まり、コンクール等に参加はしないものの、どんなジャンルも多彩に生み出していた。そして読者フォロワーが増え、口コミ・レビューから人気小説家の仲間入りをし、またその作品は全て書籍化だけでなく、漫画家、アニメ化、ドラマ化、映画化する大ヒット。世界中で翻訳化され、もはや“KEN”を知らない人はいないのではないか?!とまで言われている。

 「若者の文章離れ」が、問題となっていた現代でも、携帯で読める事から、老若男女問わず、皆が“KEN”の毎日夜九時の小説配信を待ちわびる様になった。

 もはや“KEN”は小説家ではなく、文豪というに相応しい人物となっていた。あまりの大ヒットで世間では世界トップクラスのyoutuberやインスタグラマーよりも収入があるのではないか……と、言われている。

 しかし不思議なのは、その“KEN”の正体を知っている者は、誰もいない……と、いう事だ。性別も年齢も、日本から投稿されているものの、多彩ジャンルと文章表現力と世界感から「日本人ではない」「AIなのではないか?」、という声も出ている。

 また、“KEN”と関われるのは小説投稿サイトからのTwitterのDMのみで、しかも全ての収益は、全て募金されていたのだ。

 つまり、今も尚、無収入で“KEN”は毎日ヒット作を生み出し続けているのだ。


 皆が正体を知りだがり、作品を楽しみにしている……“正体不明の世界的文豪KEN”。


 そのKENは、俺のお隣さんだった……!

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