第4話 主義主張脱線脱線

「で?」

「……」

「なんだこの紙の束」

「いや~……」


 結局、1週間ではなく2週間経って、それぞれのおすすめをリストにしてきた、のだけれど……


「音無殿……」

「いや、藤十郎は人のこと言えないよね!?」

「拙者の方がまだましですぞ!?」

「どっちもどっちッスよ」

「いえ、小杉殿はチョイスが偏り過ぎですぞ?」

「俺っちがすすめられるものってこれしかないッスから~」

「ふっ、粘泥の如き愚行よ。我は安寧を希求す」

「は?」

「……ちょっとわからないです。落ち着いて、くらいですかね」

「相変わらず面倒なしゃべり方してんなぁ……」

「ちなみに、口数が少ないのも、思いつくまでに時間が掛かるからみたいです」

「ほんっっとうに面倒なことしてんな!?」

「まあ、そのうち慣れますよ」


 バウムの方が。


「で? 結局どうすればいいんだよ?」

「あ、僕のは抜いてください。それ、僕の見たやつをできる限り全て打ち込んだ奴なので」

「おすすめって言ってなかったか?」

「いやぁ……途中で楽しくなってしまいまして」

「わかりますぞ……ま、拙者は普段からレビューしておりましたし、以前に高評価してあったものを抜き出してきただけですからな。大した手間ではありませんでしたぞ」

「俺っちは、そもそも数が少ないッスからね」

「ロリ主体のアニメは毎期あるものではありませんからな」

「バウムは、なろうアニメ?」

「かの系譜は永劫潰えぬ。未来を生きる我々は、その所業に不退転の決意で臨まなければならない」

「あー、まあ、増えるだろうね」

「おい、翻訳忘れんな」

「え、そのままですよ? なろう系はこれからも出てくるだろうし、アニメを見るなら、それにも慣れないとね、みたいな」

「ていうか、なろうけいから説明しろよ」

「なろう系は、私小説投稿サイト『ライターになろう』に投稿された小説を原作としたアニメのことを指しておりましたが、今となってはチーレムなら、何でもなろう系と呼ばれておりますな」

「いや、最近はチート要素があればなんでもじゃない?」

「そうッスよね~、昔から、アニメにチート要素はあったッス。それも全部なろう系って言ってるわけじゃないッスもんね」

「おい、ちーれむとちーとの説明をしろ」

「チートっていうのは、そうですね……とにかく強い人ですかね?」

「あれか? ドラゴ〇ボールの主人公のやつとかか」

「そうですね……あれは、努力……? いや、最近は努力で強くなった場合もその期間が短かったりするとチートといわれるので、とりあえずなんでもチートです。主人公はなんでもチートです」

「おい、途中から説明放棄したな?」

「特別優れた才能が存在しておりましたら、チートと呼ばれておりまして、チート自体は、ゲーム上の、ズルというか、不正などのことに由来しておりますな」

「チーレムって言うのは、チートとハーレムの合成語ッス。チートな主人公がハーレムを作ることッスね。最近はあんまり聞かないッスけど」

「はーれむって、あれか。石油王の、なんかだっけか?」

「一夫多妻のことですね。実際に結婚まで行くのは、ほとんどありません。複数の女の子キャラに主人公が好意を寄せられている、という状態です」

「二股じゃねえか」

「それ以上もありますな。まあ、現実とは区別しなくてはなりません」

「お、おう……」


 やばい、まりもさんがちょっと引いてる……

 なんとか軌道修正しないと。


「えっと、普通の青春アニメもありますよ? 男と女1:1のやつ」

「でも、逆ハーの方が興味あるんじゃないっすか?」

「いや、単純に性別を反対にすればいいってわけでもないような……?」

「BLは駄目だと言っておりましたし、やはりそっちの方が興味あるのでは?」

「どうですか?」

「さっきから説明が足りねぇんだよ!」

「えっと、逆ハーレムのことですね。女の子キャラ1人に対して、男の子キャラが複数って言う」

「そんなのあんのか。アニメっつうと、女のキャラばっかだと思ってた」

「そうですね……実際、そういうところも多分あります」


 最近のアニメでは、美少女キャラが出ない方が少ない気がする。

 もちろん、主要キャラがほぼ男っていうものもあるけど、やはり数が少ない。


「男のオタクが目立つのではありませぬか? やはり、女子ならともかく、男がキーホルダーというのは、やはり目に留まりますからな」

「それが2次元のだったりすると、やはり異様ですからね」

「その割に、お前達つけてねぇよな?」

「僕は汚したりしたくないって言うのが一番ですね」

「拙者も同様ですぞ。そもそも、つけてくる意味もありませんしな」

「意味っつうか、好きだからつけてんじゃねぇのか?」

「違いますぞ? あやつらのあれは、アピールですぞ」

「アピール?」

「誰かに見せることが目的ッスからね」

「別にいいんじゃねぇのか?」

「それが悪いわけじゃないんですけどね」

「マリモ姫にもわかるように言うと、彼氏をファッションだとおもってる輩、といった感じでしょうな」

「もう訂正もいちいちしねぇけど、まあ、そういう意味ならお前達があんまりっておもってんのもわからなくはねぇな」

「まあ、語り合いたい、仲間を見つけたい、という気もわかるので、そこまで悪印象があるわけでもないんですけどね」

「つうことは、お前たちもそうやって集まったのか?」

「我らが集いしは摩訶なる導きである」

「拙者たちは音無殿に誘われたのですぞ」

「音無が?」

「はい、やっぱり大学に入ったからには、オタサーですよね!」

「だから、このサークルは1年しかいないんッスよ~」

「ま、どうでもいいか。で、どうすんだ?」


 だいぶ話が脱線してしまっていた。


「藤十郎にならないように、昔のやつから見てもいいんですけど……」

「それはそれで迷いどころですな」

「俺っちたちも2010年以前のものってそこまで多く見てるわけじゃないっすからね」

「逆に昔のを一切見せないって言うのも手かな?」

「音無殿!? 正気ではありませぬぞ!?」

「いや、確かに代表作も大切だけど、それを優先すると今やってるものを見れなくなるし」

「そうッスよね~、最初は連続2時間くらいが限界じゃないッスか?」

「まりもさんって、いつも何時に寝てます?」

「あ? 10時だけど」

「じゅうじ……10時!? え、本当ですか!?」

「お、おう……いきなりなんだよ?」

「なるほど……」

「今時、小学生でもそんな時間に寝ませぬぞ?」

「肌荒れんだろうが」

「拙者たちには関係の無い話でござった……」

「俺っちは多少気にしてるッスよ? さすがに10時では無いッスけど」

「そうなると、やっぱり大量に見るのは難しいですね」

「至極を集めるしかあるまい。邂逅の時なれば、手遅れということもあるまい」

「なんだって?」

「まだ四月だから、今期のアニメにも追いつける、ですかね」

「ドラマみたいにクールで分かれてんのか」

「はい、多分一緒だと思いますよ。1~3月、4~6月、7~9月、10~12月で、基本的に4クールです」

「なら、まだ3話とかってことか?」

「そうです! 明日から早速見ましょう!」

「お、おう……いきなりテンション上がったな?」

「どこでみます? うちにしますか?」

「はぁ!?」


 顔を赤くして、勢いよく後退りをした。

 なぜ?


「音無、お前いきなり……」

「そういうのは後にしてくださいッス」

「は、はぁ!? 意味わかんねぇし」

「マリモ姫はどこかの配信サービスと契約しておりますかな?」

「ん? いや、してねぇ」

「拙者らが見ておりますのは、深夜アニメといいましてな。放送時間が24時を超えていることも少なくないのですぞ」

「そんなおせぇのか」

「起きようと思えばできぬこともありませぬが、それよりはどこかと契約した方が楽ですぞ」

「そうか……」

「あ、契約料金は大丈夫ですよ? 体験期間ですし、僕がかえますので」

「布教のためですし、拙者も協力したしますぞ」

「未来の同士のため、我も一肌脱ぐことにしよう」

「なら、俺っちも出すッスよ!」

「いや、いらねぇよ」

「僕たちがしたくてしてるだけだから、気にしないでください」

「それに、1か月なら大した金額じゃないッスからね~」

「そうですぞ! この初貢ぎで、マリモ姫は正式なオタサーの姫と……」

「おい、今なんつった?」

「いえ、ちょっと欲望が漏れ出しただけですぞ」

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ヤンキー娘と音痴な声豚 皮以祝 @oue475869

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