今のは惜しかったよね

お別れには正解がないね

いつもかならず間違えるから

ひとけのない道に戻ろうよ

夢のつづきを

ゆめのなかではできないことを

季節が逆に流れていても

すんだ夕暮れをみんな覚えている

ありえない彩度に焼けこげて

こどもじみた抵抗として

あめ玉を噛んで

 砕いて

  のみこんで

ふるえの止まらない両手を

何度も何度も打ちすえる


思い出にはゴールがないね

ひだまりは魔法のエリア

詩集の鳥肌を記憶する

ひとのなかの弓なりは

さざなみを聴く穏やかさ

流行りの歌を好きになる

みんなみんな覚えている

ながい授業とみじかい放課後

あれはきっと人生の縮図で

たぶんいちばんのお勉強で

左目の奥には思い出があるね

あなたの受けたぬくもりはなんですか

いれてもらうコーヒーがすきでした


たましいには五感がないね

ひとつの合図があるとして

暇さえあればパズルをして

炭素のような昼下がり

踏み締められた階段の

らせんをえがく足音に

ひとりころがる脱け殻が

ひとやすみ、ひとやすみ

くちなしの花

無限の「む」は

無際限の「む」とおなじだね

シチューの中身はなんですか

くぎりはいつも朝だから

夜のあいだは大丈夫

心配いらない

平気でいられる

だから大丈夫

きみはふつうだよ


虫の知らせには理由がないね

またあした、言えばそれだけ

意識はまるでおこころあたり

カプチーノに地図を残して

ずっとうろうろしています

居場所から逃げていたいから

生まれながらに崩れはじめて

稲穂はどれも供物くもつのように

影には影の色艶いろつやがあるね

始まりかけたままのそら

赤色のない世界に戻ろうよ

白昼夢のあまさのように

気まぐれに終える毎日から

常識をひとつ吐きだして

ベランダから投げ落とす

知らない誰かに手紙をおくる

だから きみの居場所は

 秘密の居場所

くちびるにゆびをえながら

可塑性かそせいのない町は迷路のように

あしたを毎日くりかえす

まだ好き まだ大丈夫


上巻には終わりがないね

下巻には始まりがないね

トランプで遊ばなくちゃ

時計には意思があるから

窓辺には性格がでるね

カーテンは秘密のオレンジ

崖下には引力があるから

きみだけの光景を焼きつけて


くらやみには光がないね

朝は遠くて一瞬だから

逸脱いつだつのしようがないほどに

おとなはみんな覚えている

こどもの頃の漠然ばくぜん

忘れたふりをしていても

てごころのような夕暮れに

ぐちゃぐちゃのぬりえを

紙コップと炭酸ジュースを

覚えている 意味になる

あるなしクイズがくせになる


クイズにはひっかけがあるね

図形だらけの星空に

海はひとつの合図をおくる

夜に飛びこむ彗星すいせい

うねのように みぎわのように

何度も何度もすれ違う

だけど 波はいつか貝殻に

みんなのまれてしまうから

安心してほしい

きみはきみだけだ

でもきみはひとりじゃない

大丈夫だよ心配いらない

心配できない

心配はない

心配は存在しない


数字には名前がないね

ガラス玉ひとつのみこんで

けた違いのつづきをしよう

ゆめの夢は底なしの

ひとのはだしは春夏物の

なかみのぬけた骨組みの

付箋ふせんだらけのひきだしの

見てはいけないものを見る

ぞんがいそれは鏡のように

怯えて緑にふるえていました

きみはだれかの思い出だから

すべての文字をなぞるまで

紙のしおりはさまれたままだよ

破裂する何かが嬉しくて

胸がこんなに熱いのに

にんぎょうゆずりの痛いのは

遅いゆうべにつつぬけでした

ひらく瞳にゆえにだなんて

なんだかすこしおかしいよね?

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