きっとですよ

きりの中のお寺の木目もくめ

いっぱいとたくさんのあいだっこ。

視線かんじるさらした肌に、

辺りのひんやりがつめたくて、

肩をいてもいけないみたい。


遠くに立つのは影法師かげぼうし

あなたも冷気をかんじていますか。

はてと首をかしげて音が鳴る。

お寺のすずのからんころん。

想いはほどけてきえて、きりのむこうで知らぬふり。


腐葉土ふようどの体温が、

恋しかろうとそれはそれ。

押しかえすのは生きてるあかし

へこんだままなの土気色つちけいろ


影法師かげぼうしは、いまにもこちらにふりかえる。

きりをかきわけ、大手おおでをふって。

無風であっても、きっと揺れるの草木くさきのこころ。


きっとすずが鳴る、きりの水気をふるわせて。

かしわの響き、きっと乾いた手のひらで。

きっと聞えるの、心でつぶやく願いごと。


私が死んだなら、きっと落ち葉にめてくださいね。

きっと、きっとですよ、きっとですからね。


いつからか遠くにきこえる呼子笛よびこぶえ

追われるほどの心当たりは、

わずかばかりもないのだけれど。

はてと首をかしげて音が鳴る。

気泡は弾けてきえて、きりのむこうで死んだふり。


頭の中のお寺の木目もくめ

見ていると見ていないのあいだっこ。

視線かんじるさらした途端に、

なかのひんやりがつめたくて、

身をまるめてもいけないみたい。

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