第25話 消える

都内の温泉旅館のロビー


「・・・良い湯だったね~!」

「わたくしには、贅沢過ぎました。」

「・・・あっ!あそこに卓球台があるヨ!みんなで勝負するネ!!」

湯上がりの浴衣姿の簡辛、カンナ、聖女様が卓球を始めようとする


「・・・はぁ~!!」

チェンが大きなタメ息を漏らす


簡辛を置き去りにした償いとして旅館代をご馳走したが・・・


―――デカイ出費だわ~!!


「「「―――あっはははーーー!!!」」」


・・・でも

女性陣の楽しそうな笑顔が見れて良しとするか・・・


「・・・オイ、出来損ないの半端者っ!!」

幼女体型のマホが声を上げる


「楽しませて貰った礼じゃ!その不出来な悪魔デビルズ刺青モンモンを妾が消してやろうか?」


・・・・・・


「・・・からかってんのか?」

「―――違わいっ!!」


俺は、まだお前のことを信用してないからな・・・!!


「妾ほどの大魔法使いとなれば、その不完全な悪魔デビルズ刺青モンモンを消すぐらい、朝メシ前じゃ!!」

マホが自信満々に話す


・・・・・・えっ!?


「・・・ほ、本当にそんなこと、出来るのか!?」

「妾が子供の頃は、里の大人達が良くやっておったから・・・不完全な悪魔デビルズ刺青モンモンぐらいなら楽勝じゃ!!」

「―――マジで!?」


・・・や、やったぞ!

こんな奇跡があるものなのか!?


「・・・まー、消す儀式には、時間が掛かる!準備に1日は、必要じゃ!!」

「それぐらいなら全然、待つ待つ待つ待つ・・・!!」


胡散臭い幼女かと思ったが・・・


―――コイツは、とんでもない座敷わらしだった!!


「なら、執り行うが・・・小僧も済ませておけよ!!」

「・・・ん・・・何の?」

チェンが首を傾げる


「何のって決まっておろうが!―――その龍との別れを!!」


・・・・・・はぁ!?


「何を驚いた顔をしとる?当たり前じゃろ!その龍の入れ墨をこの世から完全に消滅させるんじゃから・・・!!」


・・・こ、この世から完全に消滅?


・・・なら

ロンの意思や魂は、一体どうなってしまうんだ!?


「・・・マ、マホ!・・・今の話、もう少し詳しく・・・!!」

「―――コラ、カンナ!妾を除け者にするな!!ラケットは、どこじゃ?妾も卓球やるぞ~!!」

チェンを無視してマホがダブルスの試合を始め出す


・・・ア、アイツ!

深刻な話の途中なのに・・・


―――誘惑に負けて遊び出しやがった!!


「・・・アイツ、大丈夫かよ?信頼できるのか?・・・な~ロン!」


『・・・・・・』


「・・・ろ、ロン?」


・・・な、何だよ?


何、黙り込んでるんだよ!らしくない!!


『・・・・・・』


・・・き、気まずい!

俺もロンも、この肉体から自由に解放されたいと思っていたが・・・


―――ロンが消え去るなんて想像もしてなかった!!


・・・ど、どうしよう?


『・・・何を悩む必要がある?』

「・・・あ?・・・話し聞いてなかったのかよっ!!」

『それは、貴様だ!この肉体から解放されるのだぞ!!』

「バカか?ロン、そしたらお前、消滅してしまうんだぞ!!」

チェンが声を荒げる


『・・・?・・・それ、貴様に関係あるのか!?』


―――はぁぁぁーーー!!


『己の欲望に忠実になれば良かろう?何を項垂れることがある?』


・・・あ~そうだった!


『下等生物の分際で!!』


・・・コイツは!!


『相変わらず、人間は、気持ち悪いな!!』


―――人の感情の機微や想いれは、一切なかったんだった!!


龍のコイツには、俺との過ごした日々を何とも思わないんだな・・・


そうかい!わかったよ!!


もうキレイさっぱりモヤが晴れた!

俺の自由の為に犠牲になってもらうわ!!


・・・・・・けど


その前に・・・


「・・・オイ、ロン!メシ行くぞ!!」

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