第21話 独裁者

「・・・よ、良かった!間に合った~!!」

「何が良かったじゃ!あんな怖い思いをさせて・・・妾は、雇い主だぞ!偉いんじゃ!!」

肩に担がれたままの状態でマホが怒り続ける


・・・な、何ネ?

この2人組は!?


「グヘヘ・・・!!何だ何だ!?女が増えたぞ!!」

「今日は、運が良い!その女の仲間か!?」


バカな山賊ヤマザル共は、何も知らずにヘラヘラしててお気楽ネ!

この危機的状況になった事に全く気付けていないヨ!!


―――あの三編みの女!


立ち姿だけで強いのがわかる!!


・・・い、一体、何者ネ!?


「いや~驚かせて、ごめんね?・・・大丈夫?ケガとかしてない?」

「―――っ!!」

三編みの女性が心配しながら近寄って来るが何かを感じ取った簡辛は、後退りする


・・・冷や汗が止まらない!

何アルか?この女から放たれる獣のような気配は!?


「安心して?君を助けに来たんだ!」


・・・コイツ、全く隙がない!

とんでもないレベルのカンフーの達人アル!!


「ほら、友好の印に握手をしようよ!!」

三編みの女性が簡辛へと手を差し伸べる


「・・・・・・っ!!」


・・・マ、マズイ!

間合いに入られたらお終いネ!!


後手に回れば殺られる!

先手を打たないと・・・!!


「・・・うわっと!驚いた~!!・・・良い蹴りだね!!」

「―――っ!?」

簡辛の放った渾身の蹴りを片手だけで簡単に防がれる


「・・・・・・このっ!!」


この一手で決めれるなんて思ってないネ!

このまま連続で攻め続けるヨ!!


「アハハ~!!凄い凄いね~!!元気が良くて安心したよ!!」

簡辛の太極拳による激しい突きや蹴りの連打を笑顔のまま防ぎ、いなしていく


「オイ、コラッ!闘うなら妾を降ろしてからにせんか!!」

「・・・あっ!うっかりしてました!!すいません、すいません!!」


・・・何ネ?

この幼女は!?


老人みたいな口調で喋って偉そうに・・・

とても強そうには、見えないアル?


―――まさか!

コイツも何かの達人!?


「・・・・・・!!・・・見よ!あの娘っ子、妾に見惚れておるぞ!?」

「マホ様は、有名人ですから・・・」

簡辛の視線に気付いたマホが三編みの女性と小声で話し合う


「有名人の宿命としてサインか記念撮影ぐらいしてやった方が良いかの?―――あっ!先ずは、握手からか・・・!?」

「いえ!文化の違いからか握手を知らないようです!!」


何をこっそりとワタシを常識のない非常識な奴みたいな会話しやがって・・・

この世界は、強い奴ほど、失礼な人が多いアル!!


「・・・もうガールズトークは、終わった?」

「あ~ん?ガールズトークに終わりは、ないアル!山賊ヤマザルは、黙ってろヨ!!」

割って入って来た山賊へ怒りを露にする


「何々?八つ当たりは、止めろよ!残念だけど・・・ガールズトークは、強制終了!ロリっ子以外は、捕まえる!!」

「「「―――ゲハハハーーー!!!」」」

山賊達がバカ笑いを上げる


・・・コンニャロ~!

山賊ヤマザルのクセに人間ワタシらをバカにして~!!


「・・・娘っ子!そんなに肩を落とすでない!!」

「・・・?」

簡辛の背中を擦りながらマホが話し掛けてくる


「妾は、お主のことは、魅力的な女子おなごだと思うぞ!!」

「―――ロリっ子っていうのは、どう考えてもアンタでしょ!!」

何故かワタシを慰めてくるマホにツッコミを入れる


「何を言うか!妾は、この中だと最年長だぞ!!ロリっ子な訳あるか!!」

「その体型で良く言えるネ!鏡、見たことないアルか!?」

「まーまー2人共!冷静に冷静に・・・!!」

言い争う2人を三編みの女性が宥め止める


「ま~ロリっ子も貴族マニアに高値で売れるかもしれない!全員を生け捕りにしろーー!!」


「「「―――ウオォォォーーー!!!」」」

山賊達が一斉に襲い掛かって来る


・・・ヤ、ヤバイ!

この混乱に乗じて、この2人を上手く囮にして逃げ出さないと・・・


「・・・マホ様、どうします?」

「どうするも何もいつも通りじゃ!―――妾だけを死ぬ気で守れっ!!」

マホが威張りながら三編みの女性へ偉そうに命令する


「―――独裁者ヨ!独裁者がいるネ!!何を偉そうに・・・!!」

「妾は、雇い主!偉いんじゃ!!」

時代錯誤のハラスメント発言をするマホの背後に大木を振りかざした巨漢の山賊が襲い掛かる


「・・・あ、危ないネ!!」

簡辛が声を上げる


・・・ダ、ダメ!

間に合わないネ!!


「フゥゥゥーーー!・・・―――ハァァーイィィーー!!」

マホの背後へ瞬時に移動した三編みの女性が精神統一して自分よりも何倍も大きい大木へ拳を打ち込む


「「「―――なっ何ぃぃぃーーー!!!」」」

大木を粉砕した事に山賊達が仰天する


「この女、何て怪力してやがる!!」


・・・ち、違う!

この巨漢男は、何もわかってないネ!!


今のは、腕力で砕いたんじゃないヨ!

迫り来る大木の腐っている箇所を一瞬で見極め、大木に遠心力が加わる前の絶妙なタイミングに中指の関節を少し突き出した拳で突きを打ち込み、粉砕させたアル!!


並の武闘家じゃ、到底マネ出来ぬ芸当ヨ!!


「コラッ!娘っ子、何をよそ見しておる?妾が喋っている途中じゃろ!!」

「・・・いや、お前こそ、もっと周りに目を配るネ!!」


・・・コイツ!

自分の背後で起きた出来事に一切、気にしないなんて・・・


―――どういう神経してるネ!?


「・・・あの!・・・そろそろ、2人で協力して山賊を撃退しましょう!!」


・・・この女!

何て良い人ネ!!


本当は、1人で撃退できるのに・・・


―――ワタシに花を持たせてくれるなんて!!


「私は、どう動けば良いですか?」

三編みの女性が自分の立ち回り方を訊ねる


こんな達人級に強い人に協力して貰えて心強いネ!


先陣を切ってもらうも良し!

背後を守らせるのも良し!!


色々、悩むが勝率の高いスタイルで挑むのが一番アル!!


―――なら


選択肢は、1つネ!!


「・・・ワタシだけを死ぬ気で守るアル!!」

「―――お主の方がよっぽど独裁者じゃないか!!」


・・・う~ん

良いカードは、使い方が難しいネ!!

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