第20話 災難遭難

「―――あのバカタレがぁぁぁーーー!!」

簡辛が崖に向かって怒りの雄叫びを上げる


・・・チェンの野郎!

こんな美少女を山奥に置き去りにして遭難させるなんて・・・


―――イカれたド畜生ネ!!


これが人間のする行為アルか?


これだから悪魔デビルズ刺青モンモンを持つ人間は!

絶対、後で後悔させてやるヨ!!


・・・幸い

シスターから都までのルートは、聞いてたけど・・・


都が崖を越えた先にあるなんて、知らないヨ!

一体、どうやって行けば良いネ?


「ヒュ~!彼女、一人?俺らと遊ぼうぜ!!」

「オデの好みだぁ!ゲハハハーー!!」

森の奥から小汚ない格好をした男達が下品な笑みを浮かべながら簡辛へ卑しい視線を向けてくる


「今、ワタシは、機嫌が悪いネ!失せな、山賊ヤマザル!!」

山賊を無視して崖沿いを歩き続ける


「どこ行くの?いくら歩いても探し物は、見つからないよ!」

「・・・・・・あん?」

苛立つ簡辛が山賊を睨み付ける


「吊り橋だろ?そんなもんねーぞ!都へ向かう者を捕らえる為に全て落としてある!もう観念しな!!」

「・・・観念するのは、お前らネ!吊り橋を落とし、ワタシをイラつかせた代償は、高く付くアルヨ!!」

太極拳の構えを取り、簡辛が戦闘体勢へと入る


「気の強い女だな?ヤル気満々かぁ~!?」

「必死に抵抗してくれよ!そこから屈服させるのが快感なんだよ!!」


「「「―――ウォォォーーー!!!」」」

簡辛の逃げ道を塞ぎ、取り囲んだ山賊達が一斉に襲い掛かって来る


・・・山賊ヤマザル共が群がって来て、ウザったいネ!

ワタシは、園長じゃないヨ!!



そんな簡辛のいる位置から遠く離れた森の奥地


「・・・・・・」

「・・・何しとるんじゃ!お主は?」

腰まで伸びた長い髪を三編みにした女性がしゃがみ込んで地面に耳を当てている


「300m先、女の子が襲われています!・・・相手は、男性!複数います!!」

足音を聞き分けた情報を黒の三角帽子に黒のワンピース、地面に着く程の長いマントを羽織った小柄な女性へ正確に伝える


女の子の方は、足捌きからして武闘家!

男達の纏まりのない足音から察するに山賊だろうけど・・・


1ヶ所に10~20人近くが集中している!


流石にこの状況は、危険ね!

早く助けて上げないと・・・


「だから何じゃ!お主の仕事は、妾の護衛じゃろ?」

「・・・そ、そう・・・ですよね・・・!!」

三編みの女性が目線で助けに行きたいと訴えかける


「何の為に高い金を払って、お主を雇ったと思っとる!只でさえ寄り道ばかりで遅れておるのに・・・―――ほれ、行くぞ!!」


・・・うぅ~

確かにの言う通り!


こんな武闘家の端くれの私に職を与え、金銭が貰える!

それだけで充分、恵まれているのに・・・


―――我が儘、言っちゃダメだよね!!


「すいませんでした!先へ進みましょう!!」

雇い主のマホに説教され、女の子がいる方向とは、逆方向へと歩み始める


「・・・・・・」


雇い主の護衛が任務なのに、マホ様を危険に晒す訳には、いかない!


・・・切り替えよう!

優先順位を考えないと!!


「―――待て待て待て!!」

「・・・?」

マホに呼び止められる


「そっちの道よりこっちの方が近道じゃろ?」

「―――マホ様ーー!!」

女の子が襲われている方向を指差したマホを強く抱き締める


「・・・よ、止せ止せ!抱き着くな!!無礼じゃぞ・・・」

照れくさいのか笑顔で注意する


「全力で飛ばします!マホ様は、しっかり掴まってて下さいね!!」

「・・・へ?」

マホの体型が小柄だというのを差し引いても、人間一人を抱えているとは、思えない速度で走り出す


「―――ギャァァァーーー!!」

あまりの足の速さにマホが悲鳴を上げる


このスピードなら間に合う!


・・・待っててね!

直ぐに駆け付けるから・・・!!



「・・・ハァ・・・ハァ・・・次から次へと鬱陶しい・・・!!」

襲って来る山賊達を簡辛が太極拳で返り討ちにしていく


「中々、強い女だな!」

「でも疲れが顔に出てる!もう時間の問題だな・・・」

山賊達が簡辛の戦況を分析し、勝ち誇っている


・・・あ~クソ!

山賊ヤマザル共が調子に乗るなヨ!!


一人一人の戦力は、大したことないのに・・・


持久戦に持っていかれると、流石にキツイ!

このままだと、負けてしまうネ!!


「・・・選べ!・・・無傷で捕まるか?傷だらけで捕まるか?」

「えぇぇーー!!そんな~!!こんな上玉、勿体ねぇーですよ!!」


こんな山賊ヤマザルに泣き寝入りするのだけは、死んでもゴメンネ!


「・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・!!」


都までのマラソンに加えて山賊ヤマザルとの戦闘、そろそろ体力的に限界ネ!

残りの体力を振り絞り、全力で駆け抜けるカ?


―――いや!


逃げるにしても完全に地の利は、山賊アッチにある!!


・・・となれば、選択肢は、一つネ!!


「お前ら一歩でも、そこを動いてみろ!舌を噛み千切るヨ!!」

「「「―――っ!!?」」」

簡辛が舌を出し、山賊達に警告する


「・・・ど、どうします?折角の上玉に死なれたら勿体な・・・―――うげっ!!」

下品な面の男へ簡辛が鋭い蹴りを入れる


「「「・・・・・・なっ!!?」」」

突然の簡辛の行動に山賊達が動揺する


「何故だ?勝ち目がないと諦め、舌を噛み千切るんじゃなかったのか!?」

「・・・もちろん噛み千切るヨ!―――お前らの舌をナ!!」

舌を出しながら再び太極拳の構えを取り、山賊達を挑発する


武装警羅隊のスミレが言ってたネ!

自分の拳法を信じろと・・・


ここが正念場ネ!

限界を超えてやるヨ!!


「自害されない為に全員で行くぞ!捕まえたら口を塞げーー!!」

武器を持った山賊達がじわじわと迫って来る


「―――うわぁぁぁーー!!速い速い!速いよーー!!」

「「「―――っ!!!」」」

森の奥から悲鳴を上げながら叫ぶ小柄な女性を抱えた女の人が山賊と簡辛の間に突然、割って入って来て、一同、警戒する


「・・・大丈夫!私が来た!!」


・・・な、何ネ?

このプルスウルトラは!?

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