第9話 簡辛VSスミレ

「―――観念しろ、簡辛ガンシン!!」

スミレが逃げ惑う簡辛ガンシンを追い詰めて行く


「・・・くっ!・・・しつこい女ネ!そんな女は、モテないヨ!!」

「性悪女のあんたよりは、モテるから安心して!!」

フェンシングのような構えで身体の側面を常に簡辛ガンシンに向けて隻腕から繰り出される毒手による鋭い突きで簡辛ガンシンを店の奥へと追い込んでいく


「・・・・・・ッ!!」


・・・や、やっぱり

この女を振り切るのは、厳しいネ!


・・・なら


「―――倒してやるヨ!!」

逃げるのを諦め、覚悟を決めた簡辛ガンシンが戦闘体勢へと入り、太極拳の構えを取り、スミレと向かい合う


・・・スミレの毒手は、攻守一体!

危険、極まりないネ!!


・・・だけど勝算は、アル!!


あの隻腕に細心の注意を払い!

がら空きの左脇腹へ一発蹴りを入れられれば・・・


どんなに鍛えていようが悶絶必死ネ!!


「出来ないことは、口にしない方が良いよ!!」

スミレが襲い掛かって来る


「・・・・・・!!」


・・・き、来た!!


絶対に選択肢を間違えるなヨ!ワタシ!!


―――全集中ネ!!


「地べた這いつくばらせてあげるっ!!」

スミレが左足の鋭い蹴りを繰り出す


・・・ひ、左蹴り!

それを太極拳で受け流して・・・


―――いや!これは、フェイント!!


スミレの左蹴りを上体を反らして躱して、追撃で来る毒手へ全力で回避を・・・


「―――なっ!?足払い!!」

左蹴りを躱されたスミレが続けざまに右足で足払いをして簡辛ガンシンをひっくり返す


・・・よ、読まれてた!?


「あんた同じ女なら相手がドコに視線を向けているかぐらいわかるでしょ?―――あっ!ごめ~ん!そんな経験なかった?」

「愚問ヨ!ワタシの方が顔もスタイルも良いんだから・・・!!」

戦況は、明らかに不利な状況なのに勝ち誇った様にスミレを挑発する


「―――殺す!!」

仰向けに倒れている簡辛ガンシンへ毒手の突きを繰り出すが肉体に触れる寸前で身体を後転させて回避する


「怒りで瞳を曇らせたネ!お陰で命拾いし・・・―――っ!!」


・・・ウ、ウソでしょ!?


簡辛あんたに視線が向くのは、魅力的だからじゃなくて!奇妙だからよ!!好奇な目を向けられている事に気付かず、勘違いしてるってわかんないの?」

突き抜いた床から腕を引き抜く


・・・ここの床、大理石ヨ!?

それをも溶かす毒手の威力!!


・・・この女!

一体、どれ程の修行を耐え抜いたというの!?


「私がこの毒手で美容整形してあげるわ!!」


・・・か、勝てない!

ワタシ、レベルの功夫クンフーじゃ太刀打ちできないネ!!


―――いや、諦めてる場合じゃないヨ!


考えろ!考えて考えて考えて・・・!!


考え抜け、ワタシ!知恵を絞れ!!

何かを見出せ・・・!!


「・・・・・・」


チェンに助けを求め・・・


―――いや、ダメアル!!


弱肉強食のこの武の世界で自分以外の誰かに助けてもらう?頼る?その発想がよぎったら負け犬ヨ!!


注意力が散漫になってるネ!


スミレの一挙手一投足に全神経を集中させろ!

視野を広げろ!空間を見渡せ!!


必ず勝機がある筈・・・!!


「―――っ!!」


「死刑執行だぁぁーーー!!」

「・・・・・・フンッ!!」

襲い掛かって来るスミレの視界をテーブルをひっくり返し遮るが毒手で一瞬にしてテーブルを溶かす


「無駄よ!そんな子供騙しなんて・・・」

「ワタシの狙いは、コレヨ!!」

一瞬の隙を作り出した簡辛ガンシンが毒手を掻い潜り、床に転がっていた武装警羅隊の隊士が所持していた銃を拾い、手に取る


「これで形勢逆て・・・―――っ!?」

簡辛ガンシンが銃を構えるのと同時にスミレが腕から滴れ落ちる毒手の液体を指で弾き飛ばす


・・・ど、毒手の液!

触れれば終わり!回避は、不可能!!


・・・・・・なら


「―――ハッ!!」

太極拳の型に入り、素早く両腕で弧を描き、その風圧で毒液を弾き飛ばす


―――よしっ!


これで勝て・・・


「―――うぐっ!!」

両腕を振り、無防備になった簡辛ガンシンの胴体へスミレが2段蹴りを入れる


「・・・はい、お終い!!」

腹を押さえ蹲った簡辛ガンシンの額へデコピンする


「・・・あっ・・・あわっ・・・あわわわが・・・!!」

「神経系の毒よ!暫くまともに動けないから・・・!!」


・・・こ、これが毒手!?

身体がいうことを効かないし呂律も回らず喋れないヨ!!


「この勝負、自分の拳法を最後まで信じなかった簡辛あんたの負けね!もう死刑を執行するけど・・・何か言い残すことある?」

「・・・じ、じょ・・・女子力は・・・わ、わわ・・・ワタシの勝ちヨ・・・!!」

最後の力を振り絞って簡辛ガンシンが伝える


「・・・フ、フフ・・・アッハハハーー!!」

スミレが涙目になるぐらい大笑いする


「はぁ~ぁ・・・何それ?バカみたい・・・なんか毒気を抜かれちゃった!死刑は、保留にしといてあげる!!」

意識を失い倒れる簡辛ガンシンへ語りかける

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