第8話 一撃必殺コンビ

高級料理店へ押し掛けて来た武装警羅隊の隊士達をチェンと簡辛ガンシンが返り討ちにした


「・・・チェ、チェン!今の内ネ!!武装警羅隊の警備が手薄になった今が逃げるチャンスヨ!!」

「そんなに慌てることは、ないだろ?残り2人は、未成年こどもなんだから、逆に俺らの強さに怖じ気づいて逃げ出すんじゃねーか!?」

『―――自然の摂理だな!』

簡辛ガンシンが逃げるように呼び掛けるがチェンは、余裕からか、この場から動き出そうとしない


「・・・あっそ・・・なら、ここは、チェンにお願いしてワタシは、裏口から・・・」

「・・・逃がす訳ないでしょ?―――簡辛ガンシン!!」

逃げ出そうとする簡辛ガンシンをスミレが追い掛ける


「・・・ウワッ!・・・ス、スミレ!ワタシの方へ来んな!!」

「往生際が悪いよ!」

近寄って来るスミレへ椅子や机を投げつけて距離を取ろうとする


「・・・簡辛ガンシンの奴、何で得意の太極拳を使わないんだ?相手は、隻腕!戦闘においては、簡辛ガンシンの方が圧倒的に有利な筈なのに・・・」

簡辛ガンシンの戦闘スタイルの変化に疑問に思う


何故、あんなにあの女と距離を取ろうとするんだ?


『・・・匂いで解るだろ?あのメスは、毒手使どくしゅつかいだ!』

「・・・毒手どくしゅ?何だよ、それ!?」

『話すより見た方が早いだろ?』

ロンに言われるがままにスミレの行動に着目する


「忘れたの?毒手使いの私からは、逃げられないってことを・・・!!」

「―――うるさいネ!!」

簡辛ガンシンが勢い良く投げ付けたテーブルへスミレが手を当てると焼け焦げた音と共に触れた箇所から溶け始め、毒手の効果で原型を保てずに朽ち果てていく


「・・・・・・え?」


・・・あ、あれが、毒手の力!?


あの頑丈なテーブルを一瞬で溶かすなんて・・・


―――毒手!何て恐ろしい拳法なんだ!!


「私の毒手は、触れたり擦ったりしただけで致命傷!大人しく投降すれば痛い目に遭わずに済むけど・・・どうする?」

スミレが最後の自首するチャンスを与える


「―――オイ、やばいぞ!ロン!!簡辛ガンシンを助けなくて良いのか?」

『・・・素人が!今ここに立っているのが、あの簡辛メスへの最大の援護だろ?』


・・・はぁ?

何言ってんの!?


『見ろ!あの眼鏡の足元を・・・』

「・・・ん?・・・うげっ!!何だよ高級料理屋なのに大量の虫の死骸が!この店の衛生面は、どうなってんだよ!?」

目を凝らして眼鏡を掛けた男の足元を見てみるとバラバラになった羽虫の残骸が散らばっている


『そこじゃねーよ!見てろっ!!』

「―――えっ!!?」

転がっていた角材をよそ見をしているマチマサへ力いっぱい投げ付けると角材がマチマサの間合いに入った途端、一瞬にして細切れになり、ただの木屑きくずとなる


「なになになになに・・・!!今のどういうこと?アイツ、こっちを一切見ずに一体何をしたんだ!?」

『―――抜刀術だ!!』


―――いやいやいやいや・・・!!


・・・抜刀術?

何にも見えなかったんですけど!?


普通、抜刀で鞘から刀を抜くまでの動作を目で追えないのは、わかる!


・・・だが

刀を鞘へ納める納刀の動作を視認できないなんて・・・


恐ろしいレベルの居合い!!


―――コイツ凄腕剣術使いか!!


「・・・へぇ~!今の見えたの?・・・―――いや、感じ取れたのかな?」

『・・・珍しいな妖刀ようとうか』


・・・よ、妖刀?


噂で聞いたことがある!

不運や不吉、不幸などが宿り、呪いが込められた刀!!


実物は、初めて見たっ!!


「うん、そうなんだよね!妖刀これさぁ~・・・僕の意思とは、関係なく間合いに入った生命に反応して、妖刀の本能のまま、僕の身体を操り勝手に斬りかかる!全自動式抜刀術なんだよね~!!」


・・・えっ!

ウソだろ!?


―――一緒じゃん!!


突然、最強になってしまった!

俺とほとんど同じ境遇じゃん!!!


『何故ベラベラ喋る?まさか・・・ここで死ぬから教えても問題ないと!?』

「あ~違う違う!そんな格好良い理由とかじゃなくてさ~!!誰も信じないんだよ?―――妖刀ぼくの強さを!!」

マチマサの表情から妖刀に対する絶対的な自信が感じられる


「僕も聞いて良い?・・・何で号泣してるの!?」

「・・・ぐすっ・・・ぐすっぐすっ・・・わかるっ!わかるよ!!・・・なんか生き別れになった弟に会えた感じ・・・!!」

チェンが勝手にマチマサの過去は、苦しくて困難な人生を歩んだと決めつけて涙を流す


「―――ちょー怖いんですけど~!!・・・えっ!何?二重人格なの!?1人の人間と喋ってる感覚ないんだけど・・・!?」

「・・・大丈夫、怖がらないで!とりあえず兄ちゃんと握手しよ・・・―――っ!!」


「だから言ったじゃん!僕の間合いに入れば妖刀が勝手に斬りつけるって!!これで右手は、切断し・・・―――あれれ~!?」

マチマサが驚きの表情を浮かべる


・・・ビックリした~!!


握手する為に右手を出したが、そこは、マチマサの間合いで妖刀に右手首を斬りつけられたが・・・


ロンの頑丈な鱗のお陰で無傷で済んだ!

・・・助かった~!!


「その身体どういう構造してんの?鎧や盾、岩や鉄だって豆腐のように斬る!この妖刀の切れ味は、本物なのに・・・!!」

『単純な実力不足!物に当たるな!!三流なのがバレるぞ?陰キャラ!!』

「・・・はぁ?・・・眼鏡を掛けてるだけで見た目で勝手に決め付けんなし!別にオタクじゃないから!!」

『・・・その返しが全てを物語っているぞ!!』


・・・オイ、ロン

何で煽ってんだよ!!


・・・いや

でも逆に考えれば、あの目に見えない速度の抜刀術は、厄介だが!

マチマサの妖刀の間合いに入らなければ安心ってことだな!!


・・・それなら!

ガマ男の時と同様に遠距離攻撃を・・・


『―――覚悟は、良いな?行くぞっ!!』

「・・・・・・おいで!!」

マチマサが妖刀を握り、抜刀術の構えを取る


「いや、ちょっと待てぇぇーー!!」

『・・・・・・?』


―――ウソでしょ!?


何をわざわざ、こっちからマチマサの間合いに入って行くんだよ?

別に相手の得意な土俵で闘らなくても良いじゃないか!!


・・・わかってんのか!?


『・・・・・・っ!!』

チェンの忠告を無視したロンがマチマサの間合いへ足を踏み入れた瞬間に両手首足首、頸部を目に見えない速度の抜刀で斬りつけられる


「何で何で何で何で・・・!!この妖刀は、今まで悪魔デビルズ刺青モンモンを持った相手でも容赦なく斬り伏せてきたのに・・・切断どころか出血すら負わせられないなんて・・・―――お前、どんな悪魔デビルズ刺青モンモンを彫ってやがる!!」

未だかつてない経験にマチマサが苛立ちを見せる


「だ・か・ら!言っただろ、ロン!!気を付けろって!!」

『言われてねーよ!何も反応できないクセに偉そうに口出しするんじゃねーよ!!』

ロンだって反応できないから斬られたんだろ?4ヵ所ぐらい・・・」

『―――5ヵ所だ!マヌケ!!無傷でいられた事に感謝し、我に大量の供物を用意しろ!!』

怒ったロンがチェンの上着を引き裂き、上半身が裸になり、龍の入れ墨が露になる


「やっぱり、と同じ悪魔デビルズ刺青モンモン持ちか!だけど何アレ?・・・―――気持ち悪っ!!」

自分の入れ墨の龍と言い争いをする異様な姿に不気味がる


・・・何で!

毎回、脱がずに破くんだよ!!


シャツ代がバカになんねーじゃねーか!!

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