第6話 もぐもぐタイム

「―――もぐもぐもぐもぐ・・・!!」

「・・・あ、あのさ・・・取って置きの場所へ案内するって言ったよな?」

「もぐもぐもぐもぐ・・・!!・・・ん?最高の場所ヨ!!」

簡辛ガンシンが料理を食べながら話す


・・・いや

最高は、最高だけど・・・


―――何で高級料理店なの!?


「木を隠すなら森の中、人を隠すなら人混みの中、お腹が減ったら飯屋みせの中ネ!!」


ただ腹減ってるだけじゃねーか!!

事情を聞きたいとか言ってなかった!?


・・・でも

何で、この店?


こんな高級感漂わせる煌びやかな装飾に豪華な金屏風の前の特等席で身なりの汚い3人組が座って・・・


―――異物感ハンパねぇ~よ!!


誰も溶け込めてないから!?


『大声を出すな!みっともない!!このメスが正しい!理に適っている!!―――バクバクバクバク・・・!!』

「食べたいって意見が一致しただけだろう!?」


・・・ハゲオヤジを見てみろ!

まだ、気を失ってて不自然な体勢でイスに座っているぞ!!


・・・このままで良いのか!?


「もぐもぐ・・・!!そう言いながら、チェンも何十人前の量、食べてるヨ!?ワタシとあまり体格、変わらないのに胃袋は、大きいネ!!」

テーブルの上、いっぱいに置かれた料理を文句を言いながらも次々と食べていく、その早さと量に驚く


「いや、違うんだよ!俺は、そこまで腹減ってないんだけど・・・戦闘の後でロンの食欲が底なしだから、めちゃくちゃ食うんだよ!!」

「・・・でも、食べてるのは、チェンでしょ?無理やり食べさせられて吐いたりしないアルか!?」

嫌々食べていると言う割りに食べる手は、緩めないチェンの行動を疑問に思う


「あぁ・・・実際、俺の口から食べては、いるけど胃袋には、一切堪らずに直接、この入れ墨のロンの所へ栄養がいく仕組みになってるんだよ!!」

チェンが服を捲り上げながら説明する


「へ~知らなかったヨ!悪魔デビルズ刺青モンモンを持つ人は、みんなこんなんアルか?」

「・・・いや、俺とガマ男の違いを見ただろ?俺の彫られている悪魔デビルズ刺青モンモンだけ、他の奴とは、少し違うみたいでスゲー迷惑してんだよ!?」


・・・なるほど

ワタシも悪魔デビルズ刺青モンモンについて色々調べて様々な模様や柄、種類などが存在することは、知っていたけど・・・


―――こんなのは、初めて見たヨ!!


前例がない!規格外の悪魔デビルズ刺青モンモン!!


『貴様!我のお陰でどれ程の良い思いを味わえたと思う!!』

「―――その倍以上に苦汁も味わってきたわ!!」

『人間の分際で生意気な!!』

「俺がいなきゃ何も出来ない癖に!!」

チェンが自分の入れ墨の龍と言い争いを始める


「・・・・・・」


この光景もチェンの事情を知らなければ・・・

一人でブツブツ言ってるヤバイ奴にしか見えないアル!


ま~、幸か不幸か・・・

1人の人間の肉体からだに龍という最強の生物の力を手に入れた代償として呪いの様に取り憑かれて生活しているだなんて・・・!?


―――オモシロっ!!


「・・・あれ?でも何で、悪魔デビルズ刺青モンモンを持つチェンが伝説の彫り師を探してるアルか!?」


チェンは、もう既に悪魔デビルズ刺青モンモンを彫って貰えてるのに・・・


「そんなの理由は、一つ!」

「『―――コイツから解放される為だ!!』」

チェンと入れ墨のロンが口を揃えて叫ぶ


「・・・・・・えっ!?」


・・・な、何でヨ?

確かに奇々怪々な肉体からだになっては、いるが・・・


この世は、強ければ強い者ほど重宝される弱肉強食な武の世界!


その中で戦闘能力に関して不満は、ない筈なのに・・・


・・・どうして?


「見ろよ?こんな強制的、体内共同生活をさせられて、俺の身体なのに毎日、プライバシーもへったくれもない!性格は、真逆のこの同棲相手とは、別れて自由になりたいんだよ!!」

『―――不自由なのは、我だ!殺戮、強奪、支配に侵略、この世を破滅と混沌に陥れられない歯痒さ!人間チェンの自慰行為を間近で見せられるキモさ!!貴様には、わかるまい!!』


「ちょちょちょちょ・・・!!オイ!!何どさくさに紛れてとんでもないこと言ってんだよ!?適当なこと言ってんじゃねーぞ!!」

涙目になりながら声を張り上げる


・・・そうか

コイツにもコイツなりの苦悩や葛藤がある訳ネ!


悪魔デビルズ刺青モンモンは、普通の彫り師じゃ消せないんだよ!―――だからコレを彫った伝説の彫り師にもう一度、会って取り除いてもらうんだよ!!」

「・・・なるほどネ!」

話を聞いた簡辛ガンシンが納得する


『話しは、済んだな?食事の続きだ・・・!!』

出された料理の大皿を持ち上げる


「―――あっ!待つヨ!!それワタシの頼んだ焼売ネ!!」

簡辛ガンシンが注文した料理をチェンが一口で全て平らげる


「・・・―――うっ!!」

「・・・バカタレよ!ワタシの分、全部食べた罰が当たったネ!!」

焼売を食べたチェンが喉を抑えて苦しみ出す


「アハハハ・・・!!喉を詰まらせたカ?ほら、水ネ!!」

「―――バターーンッ!!」

簡辛ガンシンが水を渡そうと立ち上がったと同時にチェンがテーブルの上に倒れ込む


「・・・チェ、チェン?・・・チェン!チェン!!」

チェンの身体を揺さぶり続ける


・・・な、なんネ?

何が起ったヨ!?


「「「―――ぐっへへへ・・・!!こんな古典的な罠に引っ掛かってくれるとは、な!!」」」

店の奥からどう見ても堅気じゃない悪人面の料理人の格好をした男達がゾロゾロと出て来てチェン達を取り囲む


「・・・な、何アルか?お前ら!?」


「な~に料理の感想を聞きに来たのさ?」

「毒入り料理の味は、どうだった?」


「「「―――ガハハハーーー!!!」」」

予定通り罠にはまったのが嬉しくて男達は、高笑いを上げる


「・・・ど、毒?卑怯アルヨ!!」

「卑怯?生きる術で卑怯もクソもあるか!勝った者が正しい違うか!!」


『―――同感だ!!』


「「「・・・・・・えっ!!?」」」

毒殺したチェンが声を上げて、男達が驚きの声を上げる


「・・・な、何で動ける?」

「確実に毒入り焼売を食べた筈なのに!?」

チェンが何事もなかったかのように立ち上がる


『―――頭が高いぞっ!三下!!』

「「「―――ギャァァァーーー!!!」」」

怒ったロンがチェンの肉体からだで容赦なく男達をボコボコにする


「――― 一体どういう事ネ?何で無事アルか!?毒を食べたのに・・・!!」

簡辛ガンシンが平気な顔をしているチェンへ詰め寄り捲し立てる


「だから言ったろ?俺には、ロンが憑いている!いくら毒入りを食べようが成分は、全てロンにいくから俺には、無害!毒殺は、不可能だ!!」


・・・ハァ?


「なら、何ネ!さっきの演技は!?」

「敵を騙すなら、まず味方からって言うだろ?」


・・・チッ!

言うとしてもやるモンじゃねーヨ!!


この男は、ロンに取り憑かれて人間の感覚忘れてんじゃないカ・・・!!

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