第3話 君の名は

ロン!お前が憑いていながら、何だこのざまは!?」

『・・・我に指図するな!貴様の貧弱さを呪え!!』

「別に俺は、貧弱じゃねーよ!これが平均的男性の身体能力だから・・・!!」

店の外まで吹き飛ばされたチェンが一人で大声を上げ、言い争いを始める


「見ろ!俺の一張羅いっちょうらが砂まみれじゃねーか!!」

『何が一張羅だ!ボロ雑巾、羽織ってるだけだろ?』

「誰の所為で羽織るハメになったと思ってる!!」

全身を隠すように羽織っているフードの汚れを叩き落とす


「・・・・・・」


・・・アイツ!

誰もいない道の真ん中で何を一人でブツブツ喋ってるネ?


―――クスリでもやってて何か見えてんのか!?


・・・・・・いや!

頭をぶつけた可能性もアルネ!!


「お客さ~ん!大丈夫カ?」

「・・・ん?・・・あぁ・・・平気、平気!痛くも痒くもない!!」

チェンの元へ店の店員の簡辛ガンシンが駆け付けて来る


・・・嬉しいな!

心配して様子を見に来てくれたのか!!


「それは、良かったネ!・・・では、お待たせしました~!アヒル肉ネ!!」

「―――あっ!注文!?わざわざ料理を届けに来てくれたの?」


「一度に100人前は、無理ネ・・・とりあえず25人前分を持って来たヨ!!」

「それでも凄いな!一度にそんな量を運んで来たの!?」

簡辛ガンシンの仕事に対する姿勢に驚く


「・・・凄いのは、お客さんネ!一瞬にして、この量を平らげて!?」

「―――あれっ!?もう食べ終えてる!!」

25人前分のアヒル肉の乗っていた皿が空になっているのに気付いたチェンが驚く


「・・・自分で食べたのに不思議なこと言うネ!お客さん二重人格アルか?」

「・・・ま~・・・ 二重人格っていえば・・・二重人格かな?」

「今日は、変なお客さん多いヨ~!!」


・・・あれ?

今、心の声漏れてなかった!?


「ごちそうさま!じゃ俺、行くよ!!」

「・・・待つネ!!」

立ち去ろうとするチェンを引き止める


「心配してくれるの?ありがと!俺のことなら心配しないで・・・!!」

「・・・いや、お代払わず!ドコ行く気ネ!!」


「―――食い逃げじゃないから!店に戻るだけだから!!」


・・・いや

こんな堂々と食い逃げする奴なんかいないだろ!!


「・・・犯罪者、みんな決まってそう言うネ!怪しいからワタシも着いて行くヨ!!」

「バカ、着いて来るな!あそこは、もう危険だ!!君は、家に帰ってろ!!」


こんな優しい子を!

危険に晒す訳には、いかない!!


「自分家が危険に晒されているのにドコほつき歩けばいいアルか!!」


・・・あっ!そうなの?

それは、ゴメン!!


「それより戻ってどうするつもりヨ?悪魔デビルズ刺青モンモンを持つ、あの男に簡単にやられたのに!!」

「やられてねーよ!見ろっ!!ピンピンしてるだろ?」

体調が万全なのをアピールする


「・・・それに・・・ちょっと忘れ物を取りに戻るだけだ!!」

「・・・・・・忘れ物?あの戦場と化した店内へ取りに戻らないといけない程の大切な物アルか!?」

無茶な発言をして歩き出すチェンへ問い掛ける


「・・・男に生まれたからかな?一度、口に出した言葉は、死んでも曲げねー!その為に戻り・・・」

『―――残り75人前分のアヒル肉を食べる!!』


―――ロンのバカ!


折角、格好いいセリフを吐こうとしてたのに、何でそんなダサいこと言うんだよ!!


それじゃ、まるで俺が大食いキャラみたいじゃないか!?


「・・・そう・・・ならワタシも行くヨ!!」

「だから聞いてなかったのか!?」

チェンが声を荒げる


「―――ワタシも忘れ物を取りに戻るだけヨ!!」

簡辛ガンシンがニコッと笑う


「・・・フッ・・・何、忘れたんだ?」

「この店で借りた借金の借用書と肩代わりに取られたワタシの私物ネ!!」

恥ずかしげもなく胸を張って答える


「お前の方が犯罪者じゃねーか!!」

「ワタシ、言ったヨ!犯罪者みんなそう言うって!!」


―――経験談かよ!!


!ワタシの太極拳、受けても平気だったけど・・・あの時、全然全力じゃなかったから、協力してあげるヨ!!」

簡辛ガンシンが一緒に闘う気になっている


・・・ったく!しょうがねーな!!


この手のタイプは、言っても納得しないだろうからな・・・


一人にしとくより一緒にいた方が安全かな!?


「―――チェンだ!」

「・・・ん?」

「お兄さんじゃない!チェン、俺の名だ!!危ないと感じたら直ぐに逃げろよ!!!」

チェンが自己紹介し注意を促す


「―――店員さんじゃないネ!!」

「・・・え?」

「店長とお呼び!!」

「―――店を乗っ取る気か!!」


こんな危ない思想を持った女と行動を共にするのは、危険リスキーなんじゃ・・・



「―――ぐぅわぁぁぁーーー!!・・・だ、誰か助けてーーー!!!」

店の中から断末魔の叫び声が聞こえてくる


「ここで言い争ってる時間は、なさそうだな!俺の傍から絶対に離れるなよ!!」

「ワタシ、束縛のキツい男って生理的に受け付けない・・・」


「―――喧しいわ!!今、そんな話してないだろ?俺の言う事は、しっかり守れよ!!」


少し不安要素も残るが再び店内へと戻り始める

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る