第6話それからの日々

それから、その女の子の捜索の状況は一変したらしい。

その子が行方不明となった日、つまり私と文章をやり取りしなくなったあの日以降の写真を、全て警察に提供した。彼女が行方不明となってから撮ったであろう写真たち。

婦警さんを通して向こうの警察へ送られたようだった。



そして、しばらくして私の元に1通のメールが写真とともに送信されてきた。


一軒の小さな家と、その上に広がる雲ひとつない青空。

文章には

「お待たせ。もどってきたよ」

そんな文が外国語で表示されていた。

今の私には読めない外国語で表示されている、彼女のメール。

私は、学校の屋上から見える町を写真に撮り、

「お帰り。待ってたよ」

と日本語で打って、その写真と一緒に送信した。


捜査がどんな風になって、彼女がもどったのかは知らない。でも、婦警さんにその後会った時、私は彼女のいる国を教えてもらった。

力になれるかもしれないと、婦警さんと向こうの警官であるお友だちのメールアドレスを添えて。


私は、本気で写真の勉強を始めた。いつか、遠い友人のいる国へ行って、彼女のように写真を撮りたいの。そして、彼女の知らない私の国を写真に撮ってたくさんの人に見てもらいたいの。


今でもその子とのやり取りは続いている。

大学へ進学した私は語学の勉強にも力を入れ、翻訳の機能無しでメールの読み書きができるようになった。


いつかね。

スマホの画面越しであった遠い友人に会いに行きたいの。

直接顔を見て、話をして、一緒に写真を撮りたいの。


きっと、もっともっといい友人で競う相手になれるわ。





私、あの子のことをよく知りたいの。


出会ってから一番最初に言う言葉はもう決まっている。


「あなた、誰?」


その言葉を選ばせるものを、理由を、根拠を、それからの日々は私に与えた。

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