制服したい!

星乃

宇宙人と登校

 私は数日前、宇宙人と出会った。

 見た目は私と同い年の16歳ぐらいで、灰色のロングヘア。私が見つけたときは、川の側に素っ裸で立っていた。私に会うまで誰にも見られていなかったようで本当に良かった。

 一目見た瞬間、見た目だけではないその異質な存在感にすぐに目を奪われた。開口一番「私は地球を征服しにきた」という彼女に面食らいながらも、そのままにしておくわけにもいかないと思った私は家に連れ帰ったのだった。

 そして今。なぜか彼女は、私と同じ制服を着て登校している。

「えーっと、本当に行くの? 」

 戸惑いながら聞く私に、空は真顔で言った。

「ああ。まずは敵情視察が必要だからな」

 空とは、私が彼女につけた名前だ。唐突に「私に合う名前はないか?」と聞かれ、直感で答えた名前だった。宇宙はそのままだから、そらとも読むし空でいいか……と。

「敵情……って言っても、私の高校は地球に比べたら小さな豆粒みたいなもんじゃないのかな」

 苦笑しながら言うと、空は当然のような顔をして答える。

「小さなことからこつこつと、が私のポリシーなんだよ。人間界でもこういう考え方は特別じゃないだろう?」

「まあそうだけど……」

 地面を見つめながらつぶやくと、ため息をついた。

 私には、どうしても空に一緒に来てほしくない理由があった。私はクラスでいじめを受けている。といっても、無視されたり物を隠されたりする程度で、直接危害を加えられたことはない。それでも、そんなみっともないところを出会ったばかりの宇宙人と名乗る女の子にみられるのは抵抗がある。

「ところで……なんでその髪型?」

 今朝見たら驚いた。空の艶やかな灰色の長い髪が、三つ編みにきつく結ばれていて。しかも瓶底眼鏡をかけていた。漫画に出てきそうな典型的な地味を絵にかいたような見た目をしている

「ああ、これか。地球人は普通こういう格好をするんだろう?何かで見たぞ」

 一体空は何を見たんだ……。確かに教科書通りの格好ではあるけど、それだと逆に目立っちゃうよ……。

 他愛もない会話をしている間に、校舎が近づいてくる。

 私は二、三歩先に進むと言った。

「じゃ、じゃあ、私先に教室行ってるね」

 精一杯笑顔を作ったつもりだけど、多分とても引きつっていたと思う。

「ああ、私は職員室とやらに行かねばならないらしいから、行ってくる」

 控えめに空に手を振ると、重たい足を引きずりながら教室へと向かった。

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