第9話 大地に根ざして生きるべし

「あの、本当は分かってたんですよね。」

戦闘の傷を魔法で癒した後、ニールは縛り上げたマンドラ爺にそう話しかけた。

「街に出てきて人と話さなきゃ、マナさんの評判なんて耳に入りはしません。でもそうしていたなら、今はもう亜人を迫害するようなことは無いってことも分かっていたはずです。」

マンドラ爺は苦々しげに答える。

「だからって……過去を無かったことにはできんよ。」

怒りのぶつけ先は既になくなっていて、それがちょうど良く現れた私に向いた、ということか。

「まあ、分からなくも無い。それでテメェは復讐を企てた、それを俺達が打ち破った。それでおしまいだ。もう復讐を続ける理由も気力も無いんだろ。」

グライドの言うとおり、マンドラ爺にはもう意思の力とかそういうものが殆ど無い。魂の入っていない、例の無精卵のマンドラゴラのようだ。

「今はそうだが……先の話は儂にも分からんな。安心して過ごしたいならここで殺していけ。」

「それを決めるのはマナさんでしょう。」

アイの言葉に、皆がこっちを向く。私は渦中の人物として結論を出さねばならない。

「……街での被害はありませんでしたが、一度は命も狙われました。何も対処しないわけにはいきません。でも同族殺しもしたくはありません。

 あなたはマンドラゴラの集落に戻って森で余生を終えてください。」

そう告げると、マンドラ爺は小さく了承の意を示した。

「どうもー、ご注文のポーションですよっと。」

グライドを荷物持ちに連れて魔法の店を訪れる。

「待ってたよ!マナちゃんの薬の注文が止まなくてさ、追加発注してもいいかな?」

「あらー、光栄ですけどこれ以上は冒険に出る時間がなくなっちゃいますねぇ」

「そこをなんとかー」

縋りつく店主を袖にして、私達は店を出る。

あの後、私はマンドラ爺の家を譲り受けて、そこで念願だった薬草の栽培を開始したのだった。

マンドラ爺は研究者としては一流だったようで、色んな設備や資材がバッチリ揃っていた。そのため、このように薬品の安定供給も可能になったのである。


街の出口でアイとニールに合流する。

さあ、今日はどんな冒険が私を待っているだろう。

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転生先はマンドラゴラ!~根菜冒険者は薬と呪いで切り抜ける!?~ Enju @Enju_mestr

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