第2話 二人の放課後

夢を見ていた。


夕焼けがさす教室の中で手帳を見ながら一人涙をながす少女がいた。少女の他には誰もいない。聞こえてくるのは、時計の秒針の音と少女の抑えられた泣き声だけ。


確かあの人は……


ジリリリリーーーンと目覚ましがなり重い瞼を起こす。


「……あの夢はなんだったんだ」


夢の事を考えながら学校の支度をする。今日は始業式なので遅れられない。バタバタ準備して、ご飯が食べ終わった頃にインターホンが鳴った。


ピンポンと一回、二回、三回と鳴り続いた。


家の扉を開くとそこには二人の幼馴染みが立っていた。


「準、おはよう」

「ジュン君、おはよう!!」


爽やかな笑顔の恭弥と無邪気で可愛らしい明里の姿だった。


「恭弥、明里、おはよう」


鞄を持ちローファーを履き二人と一緒に登校する。僕の家が学校の途中にあるせいか二人は毎日家に来る。そして一緒に登校する。これが僕達の日常になっている。


今日もたわいもない会話をしながら学校へ向かう。


「クラス替えどうなっちゃうのかな?」


明里が心配そうに呟いた。


「去年は三人ともバラバラだったからね」

「今年は一緒になれるといいな」

「そうだね!」


僕と恭弥がそれぞれ思ったことを口にした。明里も同じ気持ちだった。


「ところでジュン君は気になる女子とかいないのかなぁ〜」


明里がインタビューする時のようにマイクを口元に運ぶ様な仕草をしながら聞いてきた。


「準、どうなんだ?」


明里に乗るようにして恭弥も後押しとばかりに聞いてくる。


「別にいないけど」

「ふぅ〜ん」


明里が疑わしげに見てくる。信じてもらえてないようだ。そこで僕は矛先を変えるように切りだした。


「明里は好きな人とかいないのか?」


すると明里の顔が朱くなっていき、チラッと僕の隣にいる恭弥を盗み見た。そして恭弥と目が合うとお互いに赤面しながら顔を背けた。そう、この二人は両片思いなのだ。恭弥も明里も恋愛相談は僕にしてくるけど早く付き合えとしか思わない。お互い好きな人が自分だと気づいていないから中々先に進まない。


明里達をからかっている内に学校に着いた。

三人で玄関に貼られているクラス表を覗いた。


「やったぁ!!みんな同じクラスだよ~」

「ああ、そうだね!」

「良かったな」


明里が開口一番に口を開くと僕と恭弥をそれぞれ思ったことを口にした。


三人で教室に入ると、そこではグループが何個かできていた。そして一際目立つのは相沢夢の存在だろう。


「相沢さんすごいオーラあるね」


僕がそう呟くと二人とも頷いた。


それから三人でクラスについて色々喋っていると先生が来てHRが始まった。


午前中はあっという間に過ぎ、昼食を三人で食べ、眠くなる体と戦いながら午後の授業を乗り切った。



そして放課後ーーーーーーーー


二人はバスケ部に所属しているので、部活に行き、僕は暇だったので、だらだらと校舎内を意味なくうろついていた。その時、廊下に手帳が落ちていた。拾って中を読むと書かれていた内容に目を丸くした。


『私はーーーーーーーーーーーーーーーーー


窓の外からは夕焼けがさしてくる。


「アッ…………」


夕焼けと手帳を見て正夢の様な感覚に陥った。

確か今日の朝の夢と同じような……

急いで教室に戻ると夢と同じ光景が広がっていた。やっぱりあの少女は……


僕はその少女の名前を呼ぶ。


「相沢さん?まだ残っていたの?」


するとビクッと肩が動いた。誰もいないと思っていたからびっくりしたのだろう。


彼女は振り返らずに威嚇するように返してきた。


「……なに、残っていたら悪いの?」

「……いや……別に…………」


会話が途切れ沈黙が訪れる。


「相沢さんは何で他人を拒絶しているの?」


他人からいつも話しかけらる度『あたしに関わらないで』と拒絶しているから聞いてみた。


「あたしは一人が好きなだけ」


彼女はどこか寂しげな顔をしながら言い放つ。


手帳のことを思い出したので聞いてみることにした。


「……この手帳って、相沢さんの?」


色はピンクだけどすごく使いやすそうな手帳だ。


彼女がこちらに振り向き手帳を確認した。


「なんであなたが持っているの?」

「……さっき廊下で拾ったんだ」

「返して、私のだから」

「……うん」


彼女に近づき手渡しすると、僕を睨みながら尋ねてきた。


「この中身みた?」

「……みてない」


僕は咄嗟に嘘をついた。けど、彼女は安心したのかほっと息を撫で下ろした。


「その手帳には何が書いてあるの?」

「あなたには関係ないでしょ。手帳拾ってくれてありがとね」


それだけ言うと彼女は鞄を持って教室を出ていった。


彼女の手帳の中はそれは僕と似たような……いや、僕以上の辛い過去の経験が記されていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今回は準と夢の初めての会話場面でした。これからは準の過去や夢の過去などに触れていく予定です。読んだ方は感想やアドバイスをくれたら嬉しいです。これからもよろしくお願いします。























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悪魔と死神が出会うとき 風凪 柊 @03081020

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