幕間14

 邪神ニャルラトホテプは、ポップコーンを口に放り込んでコーラで流し込みつつ、キアヌ・リーヴス演じる主人公がクラブで激しい銃撃戦を展開しているシーンを観ている。

 その隣の席には事前に購入したと思しき映画のパンフレットが置かれてあった。

 ポップコーンにドリンクにパンフレット。

 王道三点セットを揃えて映画鑑賞とは、随分と人間臭い。


「…………」

 一方のクロガネは、邪神に促されてパンフレットが置かれた席を挟んで右隣の席に座っていた。

 拳銃の銃口を邪神の方に向けて警戒しているが、それ以上の行動は控えている。

 撃とうにも逃げようにも、かの邪神には一切通じず、迂闊な真似をすれば即殺されてしまう未来がはっきりと解るからだ。

 既に館内は異様な気配に侵されており、オカルトの知識や素養が無くとも完全に邪神の領域と化しているのが解る。

 優利との連絡先の交換で電源を入れたPIDも今は圏外になっているため助けも呼べない。美優のハッキングによる傍受を期待するも望み薄だろう。

 つまりは、詰んだ。

 せめて可能な限り情報を引き出して撤収したいところだが、生還できる可能性がほぼ無いため、最悪でも道連れ覚悟でクロガネはその場に留まっていた。


 ――映画では、負傷したキアヌが拠点にしているホテルで療養しているシーンが流れている。

「そう警戒しないでよ、別に取って食おうとする気はないから」

 アクションシーンを一つ終え、落ち着いた頃合いを見計らったのか、不意に邪神がそう話し掛けてきた。

「……どうかな」

 厳戒態勢のクロガネに肩を竦める邪神。

「何をしに現れた? 先日の件に関する報復か?」

「その気はないって言ったでしょうが」

 流石に煽り過ぎれば危険だと判断し、口を閉じて相手が話し出すのを待つ。

 意図を察したのか、邪神は語り出した。

「まずは称賛を。『深きものどもディープワンズ』はともかく、まさか人の身で『ダゴン』を退けるとは思わなかった。貴方は実に面白い」

 獅子堂莉緒と同じ顔で邪神が綺麗に微笑むと、背筋に悪寒が走り、冷や汗を掻く。

 まずい。興味を抱かれてしまった。

 仮にこの場から生還を果たしたとしても、この先邪神に絡まれる人生など全力でお断りである。


 ――そう思った瞬間には、躊躇いなく引き金を引いていた。


 サプレッサーによって押し殺された銃声と共に、亜音速で弾丸が発射される。

 絶対に外しようがない至近距離――だが。

 邪神はいとも簡単に、親指と人差し指で弾丸を摘まみ止めた。


「……その気はないって言ったのに、死にたいの?」

 指先で挟んでいた銃弾を一度握った邪神は、

「えい☆」

 指で弾き飛ばし、クロガネの額を撃ち抜く。

 突然の不意討ちにクロガネの頭が跳ね上げられ、空中に

 再度発砲しようと視線を戻した時には、その手に拳銃の感触が消失し、

「映画館でこんな物騒な物使うなよ。無粋だよ」

 いつ奪い取ったのか、拳銃は邪神の手にあった。

 動揺を隠しつつ、クロガネは被弾した額に触れてみる。

 僅かな痛みと共に、指先には微量の血が付着していた。

 邪神が弾き飛ばしたのがポップコーンではなく鉛玉であれば、クロガネの頭は爆ぜていただろう。

「無駄な悪足掻きはよしなよ。本当に無駄だから」

 余裕綽々よゆうしゃくしゃくな台詞と共に、拳銃のグリップを向けて差し出してくる。弾薬を抜かずに返してくる辺り、銃は脅威に値しないらしい。

(……敵わない)

 実力の差以前に、完全に根本的な意味で次元が違う。

 クロガネは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて拳銃を受け取り、安全装置を掛けてホルスターに収めた。

「それで良い。私はただ貴方と話をしたかっただけだ」

「……お前は、一体何者なんだ?」

 満足そうに頷く邪神に、クロガネは訊ねる。

 敵わないとはいえ吹っ切れたのか、得体の知れない怪物相手と対話を試みるその胆力は目を瞠るものがある。

「解りやすく噛み砕いて言うならば……遥か昔の古代から、遥か遠くの外宇宙からこの惑星ほしに辿り着いた知的生命体、といったところかな」

「……宇宙人、なのか?」

「そうとも呼べる。古くから人類史に良くも悪くも干渉してきたせいか、『神』だの『邪神』だの『妖怪』だのと呼ばれてきたけどね。最近……といっても百年くらい前から、人間の常識の外側に存在する脅威の総称として『HPL』と呼ばれるようにもなったけど。

 まぁ、呼び方なんてどうでも良いんだ。真名も地球のあらゆる言語で発音は出来ないし、『ニャルラトホテプ』という名称も人間が理解できる形で無理矢理当て嵌めたものに過ぎない」

 『這い寄る混沌ニャルラトホテプ』と呼ばれている邪神はそう言って肩を竦めた。

「お前たちは、何が目的で人間を襲っているんだ?」

「目的はピンキリだ。各々がそれぞれの目的に沿って動くこともあれば、動物のように縄張りに踏み込んだ人間を襲うこともある」

 HPLの記録によれば、例えば『深きものども』は地球上から人類種を根絶するために人間と交配し繁殖するとある。一言で言ってしまえば、世界征服だ。


「では、お前の目的は?」

「矮小で愚かな人間が脅威に足掻く様を眺めて愉悦に浸ること」

「…………」


 世界征服の方がまだ解りやすく、マシに思えるのは何故だろう?


「足掻いて何も出来ずに絶望のまま終わるのも良し、僅かな希望を抱いて先に進むのも良し。本当に人間という生き物は見ていて飽きないよ」

 高揚して頬を赤く染めた邪神から、クロガネは近くに立て掛けてある赤い日傘を見やる。

「……先日その日傘を持った女性に化けて、松村彩子や白野探偵社の人達の前に現れたのは?」

「私の趣味」

「悪趣味だな。だけど見方を変えれば、あの『ドッペルゲンガー事件』にお前が関与したことで?」

 邪神は愉快そうに笑みを浮かべ、あの事件の真相を語る。

「……本来なら、松村彩子は何も知らないまま青葉信子の身代わりとして男達に殺される予定だった。だが、それではドラマ性に欠けて面白くない。なので、私の趣味でよりドラマチックにさせて貰った」

 結婚詐欺師である青葉信子と同じ顔に整形した松村彩子。

 彼女の前に、自身と同じ顔をした『赤い日傘の女』ドッペルゲンガーが現れる。

 青葉信子に恨みを持つ者達の気配と、『死の予兆』の代名詞として有名な都市伝説ドッペルゲンガーの出現に危機感を覚えた松村は身を守るために行動を起こす。

 得体の知れない恐怖と絶望に抗うか死ぬかの瀬戸際を、『赤い日傘の女』ドッペルゲンガーは観客兼演出として愉しみながら傍観していたわけである。

「本当に悪趣味だな」

「それは私にとって誉め言葉であり、これが私の存在意義だ」

 本当にぶっ殺してやりたい……!

 ホルスターに収まった愛銃に伸びようとした手を、クロガネは理性を総動員して必死に抑える。

「……それじゃあ、莉緒お嬢様その姿に化けて俺の前に現れたのは?」

「あの事件で貴方が介入してきたのは、本当に偶然だった。まさか獅子堂莉緒が懇意にしていた男が現れたとなったら、これはもう弄り倒すのが筋ってものでしょう?」

「いや、その理屈はおかしい」

 大迷惑極まりないヒドイ理由である。

 さも『当然でしょう?』みたいな軽いノリで来ないでほしい。

「それで君達に恨みを抱く出目治にもう一仕事やって貰ったんだ。甘い言葉と力を授けてやったら良い感じの手駒になってくれたしね。それと、例の怪盗にもこの祭りに参加して貰おうと、シナリオに変更を加えさせて貰ったよ」

「……シナリオ?」

「美術館で貴方は言ったじゃないか。【トラペゾヘドロン】を盗むよう怪盗に依頼したのはこの私だと」

 確かに言ったが、あれは相手の反応を探る目的のハッタリで他意はなかったのだ。

 だが考えてみれば納得できるものがある。

 元よりこの邪神は獅子堂莉緒を通してゼロナンバーの情報を持っていた。加えて「リチャード・アルバに犯罪疑惑の可能性」、「曰く付きの【宵闇の貴婦人ブラックダイヤモンド】」といった情報操作でゼロナンバーでもある怪盗〈幻影紳士〉が介入する土台を作っていたのだ。

「……随分と周到だな」

「我が愉悦のためならどんな苦労も惜しまない」

 この腐れ外道め。

「元々は怪盗と『深きものども』の対決を見てみたかったんだよ。曰く付きの財宝を手に入れた直後に現れた脅威と戦う……さながらイ〇ディジョー〇ズか、ルパ〇三世の映画みたいにね」

 やたら人間のサブカル知識がある邪神は饒舌に語り出す。


 邪教集団『ネフレン=カ教団』が信仰していた『ニャルラトホテプ』を召喚する魔道具【宵闇の貴婦人】=【トラペゾヘドロン】が鋼和市の美術館で展示される。


 怪盗が【トラペゾヘドロン】を結界が施された美術館から盗み出すことが引き金となり、『ネフレン=カ教団』と協力関係にあった『深きものども』は【トラペゾヘドロン】の気配を察知して美術館に襲来、【トラペゾヘドロン】を巡って怪盗と戦う。


「……これが当初のシナリオだった」

 くっくっくっ、喉を鳴らすように肩を揺らして嗤うと、邪神は話を続ける。

「とはいえ怪盗一人では多勢に無勢、逃げの一手に専念されて【トラペゾヘドロン】を持ち逃げされてしまってはつまらない。そこで『ドッペルゲンガー』の一件で貴方と白野探偵社に目を付けた。

 貴方たち探偵が【トラペゾヘドロン】を守るよう、美術館の館長とリチャード・アルバに催眠術を掛けたのさ。

 結果的に怪盗には逃げられてしまったが、そちらは私がアドリブを効かせて即席の舞台を作り、貴方たちは貴方たちで『深きものども』相手に大立ち回り。実に愉快な見世物だった」


 ギリ……ッ。

 クロガネの歯軋りが鳴る。

 邪神のアドリブ――教会に住んでいた神父とその一家を『食屍鬼グール』化させて怪盗に討たせた。

 邪神は自身の愉悦のためならば、何も知らない無関係な一家を巻き込むことも厭わないのだ。

「その後のことは貴方も知っての通り。いやはや、実に楽しい愉しい愉快なショーを見せてくれた感謝を直接伝えようと、こうしてここまで来たのだよ」

 そう言って実に爽やかな笑顔で握手を求める。

 対するクロガネは座席から立ち上がってその手を払い、義手で拳を握り、渾身の力で邪神の顔面を殴りつけた。

 まともに鉄拳を喰らった邪神は勢いよくその場に倒れ伏し、手にしていたポップコーンが床一面に散乱する。

 クロガネは怒りのままホルスターから銃を抜き、邪神の頭を狙って残弾全てを撃ち込んだ。

 奇しくも、スクリーンの方でも再び激しい銃撃戦が展開されている。

 やがて弾切れとなり、スライドが後退したままの拳銃を下ろす。

 倒れ伏し、顔は潰れ、頭が弾けた少女の死体が一つ、血の海に沈んでいる。


 その少女は、人の心を弄ぶ邪神であり、クロガネがかつて愛した少女と同じ顔で――

「……ッ、ゥ……、ぐ……!」

 唐突に、クロガネは真っ青な顔で口元を手で覆った。

 襲い掛かる嫌悪感と吐き気を、必死に耐える。

 ゴトリ、と重い音を立てて、『彼女』の命を奪った拳銃を落とす。

 よろめくように数歩後退り、死体に背を向けて目を逸らした。


「あはぁ、本当に良い反応をするねぇ」


「!!!」

 背筋から這い上がる悪寒と、熱と艶を帯びた声が耳元で囁かれる。


 振り返る。

 振り返った目と鼻の先。

 頬に朱を帯び、高揚と色気を帯びた美しい顔があった。


 クロガネは彼女の背後を見やる。

 血の海も凄惨な死体も最初から存在していなかったかのように消失し。

 床一面にぶち撒かれた筈のポップコーンは元の容器の中に収まって座席のホルダーに差さっていた。

「嗚呼、本当に良い顔……絶望と後悔と自責……そして、恐怖を感じる」

 うっとりと邪神は手を伸ばし、クロガネの頬に添える。

 クロガネは蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れない。

「ナイ神父、黒い男、無貌の神、顔のないスフィンクス……いずれの化身の姿でも、決して臆することなく立ち向かってきた貴方がそんな表情をするなんて、やはり獅子堂莉緒は貴方にとって特別な存在のようだ」

 その名を耳にした瞬間、クロガネの眼に火が灯り、邪神の手を払って突き飛ばす。

「ふふ、図星だね」邪神は愉快そうに嗤った。

 距離を離して身構えたクロガネは、乱れた呼吸を整え心を鎮める。

「……お前は、莉緒お嬢様とどういう関係なんだ?」

 存命ならば今年で一八歳になる莉緒の容姿を再現した邪神は、先程の会話の中でクロガネのことを『獅子堂莉緒が懇意にしていた男』と言っていた。

 かつて莉緒に仕えていたにも拘らず、邪神の接近に気付けなかったとは一生の不覚どころの話ではない。

 邪神はおもむろに、悔やむクロガネの胸――疑似心臓を指差して言った。


 ――邪神と称された地球外知的生命体が明かしたこの爆弾発言は、機巧探偵の中にあった世界の常識を根こそぎ覆すには充分な破壊力を秘めており、その後の生き様に多大な影響を及ぼす分岐点となる。



「獅子堂莉緒に、〈を与えたのは、この私だ」


 全ての元凶は、全ての始まりを語った。



 ***


 ――邪神から衝撃の事実を聴かされたクロガネは、半ば茫然としたまま席に着いて映画を観ていた。

 魔界あるいは邪神の体内と化した劇場のスクリーンでは、キアヌ演じる伝説の殺し屋がロシアンマフィアのボスと一騎討ちを行うクライマックスシーンが流れている。

 ……死闘の末、相討ち覚悟で主人公が勝利した。

 映画とはいえ、たった一人で組織を一つ壊滅させるとか、そら伝説にもなるわとか思いながら観ていると。


「犬を殺されただけで、ここまでする?」


 不意に隣に座る邪神がそう訊ねてくる。


 キアヌ・リーヴス主演の『ジョン・ウィック』。

 代表作である『マトリックス』以来となるキアヌの当たり役ともいえるアクション映画だ。ハードかつスタイリッシュなアクションシーンが人気を博し、シリーズ化している。

 今二人(一人と一柱?)が観ているシリーズ一作目は、かつての雇い主だったマフィアのボスの息子に、主人公の大事な飼い犬が殺されたことで物語が始まる。


 邪神の問いに、クロガネは答えた。

 かつて獅子堂莉緒と一緒に観た映画だ。当然、内容も知っている。

「……ただの犬じゃない。亡くなった奥さんが最期に贈ってくれた大切な存在だったんだ。それを理不尽に奪われたら、誰だって許さないだろう」


 飼い犬が殺されたから、元殺し屋の主人公はマフィアの息子に復讐する。

 結果的にボスの息子を守ろうとした組織も壊滅するという骨太なストーリーだ。

 極端で強引な導入かもしれないが、この犬はとても重要な存在なのである。

 裏社会から足を洗って愛する妻と共に穏やかな生活を送っていた主人公。

 その妻が病で先立たれてしまい無気力に生きていたある日のこと、死期を悟った生前の妻からの贈り物が届く。

 主人公を独りにさせないために、生きる目的を与えるために現れた妻の形見、それが序盤に登場する犬だ。

 そんな大切な存在を突然目の前で奪われたら怒り狂い、相手が誰であろうが復讐に走ってしまうのも無理はない。


「この主人公、まるで貴方みたいだね」

「俺に?」


 邪神の一言に眉をひそめる。

 確かに元殺し屋で、戦闘スタイルも似てはいるが。


「かつて仕えていた人が亡くなった後、その娘が貴方の元にやってきた。娘の身に何かあれば、それこそ殺されでもしたら……どうする?」


 ……考えるまでもなかった。


 クロガネの表情と沈黙から答えを察した邪神は、愉快そうに口の端を吊り上げる。


「言葉は不要だね。彼女のこと、大事にするといい」


 スクリーンではまだエンドロールが流れているにも拘らず、邪神は赤い日傘を手に席を立った。映画を最後まで鑑賞しないとは、素人め。


「次のゲームはもう始まっている。この世界の命運を左右する程のね」


 その素人が唐突に爆弾発言――否、スケールのデカい犯行予告をしやがった。

 反射的に身構えると、邪神は手で制す。


「先に断っておくけど、今ここで私をどうにかしようとしても無駄だ。もう止まらないし止められない。先程話した通り、賽は投げられた」


 ……先程の話の内容を思い返す。


 この世界の現状。

 全ての始まり。

 鍵は――亡き獅子堂莉緒が今も握っている。


「破滅の未来を未然に防ぐことはほぼ不可能。可能であるとすれば破滅が発動するタイミングの遅延だろうけど、発動そのものを阻止することは出来ない――だけど」


 全ての元凶でもある邪神は、と同じ顔で嗤う。


「貴方と貴方の相棒は、世界を救う切り札だ。せいぜいその時が来るまで長生きすることだな」


「……どうしてそんなことを教える? お前にとって俺達は邪魔な存在じゃないのか?」


 ゲームであろうが、計画上に生じた不安の芽は可能な限り摘み取っておくのが基本である。


「一方的な出来レースは好きじゃない。言っただろう? 世界滅亡を前に、無様に人間が足掻く様を観察することが私の趣味だと。結果的に世界を救えれば、まだまだ人間で遊べる愉しみが出来るというものだ」


 本当に悪趣味で度し難い存在だ。

 この邪神に座右の銘があるとすれば「生かさず殺さず」とか「愉悦至上主義」とか無駄に達筆で書かれているに違いない。


「せいぜい、無様に足掻きに足掻いて私を愉しませてくれよ」


 そう言ってその場を後にしようとする邪神の背中に、


「覚悟しろ。いつかお前を地べたに這わせて、その愉悦面を歪ませてやる」


 無謀にも等しい宣戦布告を叩き付けると。


 邪神は足を止め、振り向いた。


 顔のない真っ暗な闇に浮かぶ、炎のように燃え盛る三つ目。

 不吉なものを予感させる血のように真っ赤な口が、大きく弧を描く。

 先程まであった獅子堂莉緒の顔は跡形もなく、明らかに人間のものではない顔。

 この世のものとは思えない、狂気と狂喜に染まり切った壮絶な笑みを邪神は浮かべた。


「それは――実に愉しみだ」

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