忍び寄る影

――ダンジョン上層――


「おい! どうゆうことなんだ! 」


「そうだ! 裏切ったのか!!」


周りにはそう叫び声を上げる冒険者2人、気味悪く微笑んでいる冒険者3人、それと――背中から血を流して倒れている冒険者3人


「あ? おいおい、何言ってんだよてめぇは。そもそもいつオレサマがてめぇらの仲間になったってんだよ」


「俺たちはパーテ……グホッ……ガバァダズゲ……」


「やっと死んだか。おいお前ら、さっさとそいつらのアイテムを回収しろ」


『ヘイ!』


「ったく面倒な仕事を押し付けやがって……こんな雑魚を嵌めたってなんにも楽しかねぇってのになぁ! 」


そう言ってすでに死んだ遺体の頭蓋骨を何度も何度も刺し続ける。


「……団長。他の冒険者の装備品についても、回収終わりました」


「遅せぇよ。じゃあずらかるぞ」



「チッこいつホントになんにも持ってねぇーな。はした金にすらならねぇ。あ〜割に合わねぇ」




「また……ですか」


「ああ、冒険者が5名、ダンジョンから帰って来ていない。皆ブロンズランクの新人だそうだから、今もダンジョンで戦っているという可能性は低い。おそらくは……」


「それで、何かわかったことはあるんですか?」


「詳しくはまだ分からないが、2層の地面に若干の焼け跡が残っていた」


「つまり……」


「いや、確実にそうと決まった訳では無い。モンスターを倒す時に使われた魔法の跡である可能性も……ないことは無い」


「ですが連日このような事態は流石に怪しすぎます! ここは多少強引でも、ダンジョンを封鎖すべきです」


「……それも考えてはいる。しかしなぁ、封鎖することもこの都市に重大な損失であるのことに変わりないのだ」


(……本当にこの人は……)


セリカは管理長に対してを感じていた。


セリカにとって、管理長の言い分も分からない訳では無い。ダンジョンを封鎖するということが、この都市にどれほどの経済的ショックを与えるか。それは理解している。

だが、それでも、はたしてそれは冒険者の命よりも重要なのかという疑問に対しては、納得できないでいる。


管理長にしても、良心を持っておらず、権力の癒着があって判断した訳では無い。しかし、彼は何か事件が起こった時に、中立の立場、つまりダンジョン運営を第1に考える責任があるのだ。それは勿論、彼がそういった立場にいるからでもある。事件の被害にあっているのは上層を活動場所にしているブロンズランク冒険者ばかり。つまり、ダンジョンから利益を出してくれる冒険者の中でも、現在の価値は低い存在である。故に、ダンジョン運営について全体的に考えると、彼らの為だけにダンジョンを封鎖することを選べないのである。


「では、このままで本当に良いと思っていらっしゃるのですか? 」


「そんなことは無い」


「ではどうすると……「まぁまぁ落ち着いて」


セリカに声をかけたのは彼女の同僚である女性。


「うん……ありがとうエイナ」


「」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

迷宮都市のカード使い フラット @akaneko0326

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ