反省会

 異世界『控室』。


『ごめん、負けちゃった』

「ありゃりゃ、めっふぃに不利なルールだったか?」

『どう考えても僕の方が著作は先のはずなのに。虚々実々、理不尽だ』

「え? ごめん何の話?」


 外見が権利関係を侵害したと説明しても、高月さんには通じないだろう。


「んんwww権利団体はものによっては神の如き権能を有していると聞きますからなwwwこうして戻ってこられただけでもメッケものですぞwwwwww」

『何それ怖いんだけど』


 珍しくいじけるウサギを高月さんが抱き上げる。両手で捏ねくり回しながら一言。


「じゃあ、これで五分五分?」

「んんwwwそうなりますなwww」

「よしきた! 今度こそ俺様の出番だ!」

「んんwww文字通り神のみぞ知る選択ですがなwww」

「じゃあ勝ち取る!」


 タン、と大きく踏み込む。

 吹き矢でも飛ばすような鋭い呼気。収斂した全身の筋肉をポンプのように弾ませ、インパクトを伝播する。全力全開の右ストレート。


「んんwww防ぐ以外ありえないwww」


 向けられたクサハエルは左手を鋭角に構えた。拳そのものではなく、手首を制する受け流し。拳撃直後に腕を引こうとする手首をそのまま掴まえる。そして、そのまま捻り上げた。


「んんwwwおイタはいけませんなwww」

「んなろ!?」


 捻られた方向と反対にバク宙する高月さんが捻りを解く。手首のスナップを効かせて拘束から抜け出し、小さく舌を出した。


「んんwwwこれはこれは⋯⋯w」

「やっぱ強ええよな、天使のおっさん! 俺様も魔法使わなかったけど、アンタも能力を使わなかったしな!」

「んんwww脳ある鷹はなんとやらですぞwww」

「てい! てい!」


 諌めるようなおっさん天使を嘲るように、高月さんがジャブを連発した。残像が浮かぶほどの拳速を、クサハエルは手甲で弾いていく。彼女にしても戯れあいみたいなものだったのだろう。年頃の娘のようにはしゃいでスパーリングしている。


「んんwww我これでも歳ですからwwwちょっと関節が痛いですぞwww」

「えーー! じゃ、やめるか」


 渋々と言った丁で拳を止める高月さん。器用に頭の上に避難していたメフィストフェレスがクサハエルに思念を送る。


『願いを叶える実力は確かにあるみたいだね。これで僕らを騙したら後が怖いと分かったろう?』

「んんwwwwww確かにwwwわwwwかwwwりwwwましたwwwぞwww」


 分かったのか分かっていないのか分かりにくい。


「んんwwwどちらにせよwww時間的にそろそろラストゲームですなwwwこのゲームの勝利ポイントは一億千万ポインツですからwww勝利する以外にありえないwwwwww」


 そして、色々と台無しだった。

 果たして今までの戦いはなんだったのだろうかと。

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