眠れる梅雨の美女

ヤグーツク・ゴセ

第1話 梅雨が明けるまであとどれくらい。   

曇天真っ盛りな今日。なんとなく暗い今日の東京は人工の光だけで満たされていた。僕の頬に一瞬冷たさが刺した。雨だ。またか。 梅雨が明けるまであとどれくらいだろうか。



聞きたい曲も見つからない。自分の感情とは真反対の曲名ばかりが再生リストに並ぶ。大学の講義にも出席する気になれず、東京という都会の闇、路地裏で1人。無駄に過ごす。忘れたいことばっかだ。ほんとに忘れたいことばっかだ。君が目を覚めるまでずっとこの雨は降り続けるのだろうか。明日君が起きたら何しようか。当たり前の話をしよう。2人の好きな話を。今すぐにでも君の眠りを覚ましてやりたいけど。



君はどんな顔だっけ。思い出せないな。

雨がしきりに強くなってフードを被る。季節に置いてけぼりな僕は何度もこの梅雨を繰り返す。



僕の過去はどこ?

戻ることのない過ぎ去った日々。戻ることのない失った日々。



    僕は路地裏から抜け出せない。

         一生

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