第58話 仕事もしないと

チカとサチが風呂に入っている間、俺は仕事を片付けていく。

「ユウヤさんも大変ですね。」

電話先で話しているのは金子組が出資して作った芸能事務者の一つに所属する松井ユズキだった、彼女は俺の後輩にあたり、グラビアモデルとしてデビューしたが、枕営業を断わり続けた結果、当時の事務所から干されている所を俺が拾い、モデル兼ファッションデザイナーとして復活させ、現在はファッション誌の一面を飾れるぐらいには成長してくれていた。


「護衛は苦手なんだが、まあチカちゃんの相手だし問題は無いだろ。」

「問題大有りだよ、ホテルの部屋に中学生が身体を洗っているんだよ、いかがわしい事この上ないじゃない。」

「それを言ったら、チカの家で風呂にも入れないぞ。」

「入ってるの事が間違いって思わないのかな?」

「みんな入ってるしな。」

「もう、ユウヤさんの感性が壊れているんだよ、チカちゃんはモデルとしてデビュー出来るぐらい可愛い子だよ、それが裸で部屋にいるんだよ!

もっと興奮するシチュエーションじゃん!」

「お前が興奮するな、それより試作品は届いたか?」

俺は次の季節の服のデザインをユズキから送って貰い、完成した品の感想を聞く。


「うん、凄くいいよ!人気出ると思う。」

「そうか、なら特集記事を組むように連絡しておく、ユズキも意識しておいてくれ。」

俺はスケジュール帳にファッション誌をやっている東マルタという金子組子会社社長へのアポを取るように記す。


「はーい、まったくユウヤさんは何処まで手広く商売してるのかな?」

「いざというときに勝つのは様々な分野からの攻撃だ、暴力だけで片が付く事は少ないのだよ。」

「やってる事、普通に一流のサラリーマンだからね、本当に極道なの?」

「・・・ユズキ、言ってはならぬ事を言ったな!!」

「ちょ!急に怒らないでよ!」

「くそっ!何時になったら盃を渡すんだあのバカは!!」

「・・・組長をバカって言ってる事態で無理なんじゃ。」

「くそぅ、俺程貢献しているものも中々いないはずなんだが・・・」

俺の苦悩をわかってくれる人は数少ない、シンヤですら笑いながら話を濁すのだ。


「ゆうちゃんお風呂出たよ、って電話中?」

「ああ、ちょっとユズキと仕事の話を・・・」

「ユズキ?」

サチは知らない名前に首をかしげる。

「モデルの松井ユズキって言ったらわかるかな?」

「ファッションデザイナーの松井ユズキですか!!」

サチが前のめりに近付いてくる、着ている服が浴衣なこともあり、ブラをつけていない胸元がバッチリと見えている為、俺は目のやり場に困る。


「ちょっと、ユウヤさん、松井ユズキ様なんですよね!」

「サチ、ダメだよ!見えてる!見えてるから!」

チカはサチの胸元を抑えつつ俺から引き離すのであった。

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