第54話 護衛準備
「チカちゃんの護衛に付けと?」
俺はおやっさんに呼ばれチカの護衛をするように言われる。
「そうだ、中学生だけでウロウロするのは危険だろ?」
「しかし、修学旅行ですから、大人が出る膜が無いと言うか・・・」
おやっさんの言いたい事もわからないでは無い、金子組の令嬢たるチカを狙う輩は何処にいるかわからない、だが折角の修学旅行であるガチガチに護衛などされれば楽しむ事は難しいだろう、俺は頭を悩ませる。
「難しく考えるな、他にも護衛は配置する、お前はチカと一緒に観光地を回ればいい。」
「あっ、一人じゃないんですね。」
「当然だ、観光地は広いからな、撮影もとい監視するのにも人員はいるだろう。
幸いお前はチカの友人達と面識があるだろ?
一緒に回らしてもらいやすいはずだ。」
「一緒にまわる?」
「当然だ、近くにいなくては護衛も出来ないだろ?」
「いやいや、中学生と一緒に回るなんて、どうしたらいいんです!」
「それはお前が考えろ!」
「そんなぁ・・・」
相変わらずの無茶ぶりに俺は頭を悩ませるのであった。
俺が、悩んでいる頃、一足早く倉田が京都に古くから存在し、勢力を誇る足利組に現れる。
「これは天下に名高い倉田殿では無いですか、本日はどのような要件ですかな?」
倉田が現れたと聞き、足利組組長、足利輝義が応対していた。
傍若無人に若い時から暴れまくった倉田の武勇は多くの組から恐れられながらも、半ば伝説と化しているその武勇伝に憧れを持つものは日本中に存在する、それは足利組でも同じであり、倉田の訪問を丁重に出迎えていた。
「お嬢が近々京都を訪問する。
俺直々に護衛の手筈を整える、その協力をしろ。」
「協力をしろとは乱暴ですな、せめて頼む形として貰えないだろうか。」
足利組としても独立している勢力である、一方的な命令に従う訳にはいかない。
「ならば頼もう、この下げた頭一つで手をかせ。」
下げた頭と言うが実際には下げていない。
だが、倉田が言葉の上でも頭を下げたというのは大きな話である。
「倉田殿に頭を下げられたとあらば筋が通る、この足利組全力をもって協力致しましょう。」
「あと手土産だ、受け取れ。」
倉田は持たされたアタッシュケースを渡す。
「これは?」
「おやっさんからの手間賃だ。
受け取れ。」
輝義は目を丸くする、娘の護衛というだけで一億もの大金を手間賃として渡して来ている、その上で天下の豪傑倉田が頭を下げて頼んで来ている、これで何かあれば足利組の面子は無いものになるだろう。
「わかりました、お嬢様の身の安全は足利組が保証致しましょう。」
倉田から修学旅行の日程を聞き、その日に備え厳戒態勢が敷かれる事になるのであった。
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