第47話 二人の喧嘩

「二人共何を競っているんだよ、アヤメお金はすぐにいるか?」

「うん、急いではいないけど、早い方が安心するし・・・」

「わかった、それなら明日にでも用意しておくから都合のいい時に取りに来て。」

「ありがとう。」


「ゆうちゃん、何の話?」

「受験の話だよ、アヤメは来年受験だからね。」

「そうなんだ、でも何でお金?」

「受験料って結構かかるからな。」

「それってゆうちゃんが出すものなの?お父さんや、お母さんが用意するんじゃ?」

「まあそうなんだろうけど、義父のマサルが用意するとは思えないからさ。」

「でも、義妹で血も繋がってなくて、家を追い出されたんでしょ?」

「まあな、だが見捨てるのも後味が悪いだろ?

多少なりの縁があるんだし。」

「うう、ちょっとモヤモヤするけど、義妹としてならセーフです。」

チカは俺と腕を組み、アヤメに見せつけるようにベッタリとくっつく。

「チカさん、お兄ちゃんの勤め先のお嬢さんにしては距離感を間違えてますよ、お兄ちゃんにくっついていいのは妹だけなんです。」

「妹こそ、お兄ちゃんにくっついちゃダメでしょ!

わ・た・し・はユウちゃんの彼女として横にいるの!」

「あらあら、お子さまは何を言うのかしら、お兄ちゃんの彼女を名乗るなら、もう少しお胸を育ててからにしては?」


ピキッ!


空気が凍る。

チカは胸の成長が遅い事を気にしていた、部屋の片隅に豊胸アイテムがあることを俺は見ないフリをしていたのだ。

反対にアヤメは成長を越えた為か随分立派に育っている。


「ユウちゃん、何処を見ているの!

あれは目の毒よ!」

チカは俺の目を押さえてくる。


「あらあら、お兄ちゃんもしょうがないですね。

まあ、男の子だから仕方ないけど、見るのは妹のだけにしないと捕まりますよ。」

「いや、妹の胸をそんな意味で見るつもりは・・・」

「ユウちゃんは脂肪の塊に興味が無いんです!

無駄なお肉を誇るのは止めた方がいいですよ。」

「あら?嫉妬かな?チカさんも成長・・・

出来ない物はあきらめて、それ相応の相手と青春をなさったほうが?」

「大丈夫だもん!チカのお胸をはこれからユウちゃんの好みに育てて貰うから。ねっ?」


ねっ?と可愛く同意を求められても困る、俺が揉んで育てるような意味になってしまいそうだ。


「お兄ちゃん、目を覚まして!

中学生の胸を揉むのは犯罪よ!」

「なによ!妹に手を出す方が不健全です。

それに私には未来があるんですから!」

チカとアヤメがヒートアップしていき俺の声も届かなくなっていく。


「ユウヤさん、アレどうにかできませんか?」

避難してきた俺にマルが非情な事を言ってくる。

「お前こそこういう時に争いを静めるようなケーキを出して止めてみせろ。」

「そんな御無体な、流石にケーキにそんな力はありませんよ・・・」

そういいながらマルがふと雑誌に目を落とす。

「ユウヤさん、これならどうですか?」

マルが示していたのは歌手のライブツアーの記事だった。

「これがどうした?」

「ユウヤさんは知らないんですか、歌姫のミウが地元でライブをするんです、女の子に人気がありますからこれをネタにすれば喧嘩を止めるかも知れません!」

「よくわからんが・・・つまりミウちゃんのライブチケットを餌に争いを止めればいいんだな。」

「いえ、そこまでは・・・」

マルは話題を変える為のネタにすればいいとの気持ちで言ったのだが俺には通じていなかった・・・

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