第39話 宴の後

俺が意識を取り戻すと布団に寝かされていた。

「うう、いてぇ・・・あのオッサン加減ぐらいしろよ。」

俺が目を開けると目線の先にチカの顔があった。

「おはよ、ゆうちゃん。」

俺は状況を判断する。

目の前にチカの顔があり、後頭部からは柔らかい感触。そして、暗い部屋で布団が2枚並べられ、花瓶に椿の花が一輪イケられていた。


いや、椿は関係ないな。

俺は現実を直視することにする。

まあ、単純に膝枕をされているだけなのだが。

「ごめんチカ。」

俺はすぐに身体を起こそうとするがチカが抑える。その際胸元が近付いていい匂いがした。

「ダメだよ、もう少しゆっくりして。」

「いや、でも、大変だろ?」

「私はいいの、ゆうちゃんの寝顔が見れて楽しかったし。」

「いやいや、恥ずかしいこと言うなよ。」

俺は少し気まずさを感じる。


「なぁ、他のみんなは?」

「まだ、飲んでるよ。ほら遠くから声が聞こえるでしょ?」

耳を済ませば騒がしい声が聞こえてきていた。

「あいつらは、宿に迷惑がかかるだろ。」

「大丈夫だよ、リョウさんが他の客はいないから存分に楽しんでいいって言ってたから、それより今は二人きりだよ。」

まずい、この甘い雰囲気は・・・

「いやいや、それでも俺が管理しないとね・・・」

俺は身体を起こす。

「ダメだよ。」

チカが抱きついて止めた為に布団に倒れ込む形になった。

「まだ、動いたらダメなんだから・・・」

「わかった、動かないから、俺の上からどいてくれないかな?」

「うん、わかってはいるんだけど、胸のドキドキが邪魔して体が動かないの・・・ゆうちゃん。」

チカは俺の胸の上でモジモジしながら上目遣いで見つめてくる。


「いや、それはまずいだろ?」

俺は流されそうになりながらも意識保とうとする。

「だいじょうぶ・・・だれもみてないよ。私とゆうちゃんの二人だけのひみつだよ。」

チカのクチビルが近付いてくる。

俺もチカの肩を抱き、二人の口が合わさる瞬間。


ガラ!


「ユウヤさん!ここですか!」

騒がしくタクミが玄関の扉を開けて駆け込んできた。

「な、な、な、何のようだ!」

俺とチカは慌てて姿勢を正して座っていた。

チカは浴衣の胸元を手で抑えていた。

「ユウヤさんがいないから飲み会が終わらないんです。締めの挨拶をお願いします。」

「おやっさんにさせろよ。」

「おやっさんは既に酔いつぶれて寝てます。」

「あのおっさんは〜〜〜まあ、いい。それじゃ俺が行くか。

ということだからチカちゃん。宴会場に行ってくる。」

俺は軽くチカに告げ宴会場に向かおうとする。

「うーなんでこのタイミングなのよ。」

「おじょうもいるんですか?」

部屋の中を覗こうとするタクミの目を押さえ、

「覗くな。少し浴衣が乱れているからな。」

「おじょうの浴衣が乱れているなんて何をしてたんですか!」

「何もしてねぇよ。ただ覗くものでもないだろ。行くぞ。」

「ユウヤさん!このことはおやっさんに報告しますからね。」

「奇遇だな、俺も色々やってくれたおやっさんには用事があるからな。」

俺は拳を鳴らしつつ、ひとまず宴を終らせるために会場に向かうのだった。

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