第17話 売られたケンカは?

金子組の中にもユウヤの事を気に入らない奴らもいる・・・

不満を持つ、黒田コウはタクミを連れ飲みながら愚痴をこぼす。

「くそっ、盃ももらってないような、半端者がデカイ面しやがって!」

「前田の若頭も結局本家に返されてしまいましたしね。」

「そうだよ、なんでユウヤが起こした問題で若頭が追い出されなきゃいけないんだよ。」

「おやっさんに可愛がられてるからじゃないですか?」

「タクミ!アイツの弱みはないのか?」

「ケンカに弱いぐらいですかね?本人も言ってますし。」

「あーそうだな、一度説教してやるか。」

コウはニヤニヤ笑いながら、説教の事を考えていた。

「おう、ユウヤ!お前最近調子にのってんじゃないか?あん?」

「なんだコウ?不満があるなら聞くぞ?」

「俺達は極道なんだよ!話なら腕でやろうじゃねぇか!」

「殴り合いか?」

「一応、組手ということにしようか。」

「はん、情けないな、因縁つけておいて逃げ道を作るのか?極道が聞いて呆れる。」

「なんだと!てめぇ、そこまで言ったんだ、覚悟は出来ているんだろうな?」

「お前みたいな三下に覚悟はなんてたいしたものはいらん。」

「おう!さっさと訓練場にこい!ボコボコにしてやる!」

「まあ、待て、今は組の仕事の途中だ、二時間後に相手してやるから、それまで待ってろ。」

「逃げる気か!」

「逃げてどうするんだよ!組の売上げが下がったらお前が責任とるのか!」

「・・・二時間後だな、ちゃんとこいよ!」

コウは去って行く。

「情けないない奴だな。」

二時間後・・・

ユウヤが訓練場に来たとき、コウは腹を押さえ内股になっていた・・・


「さあ、正々堂々、やりますか。」

「お、お前卑怯だぞ・・・」

「おや?弱々しいですね?何かありましたか?」

「俺に何を飲ませた?」

「俺がお前に?何も飲ませてないじゃないですか?」

「おじょうを使って何を飲ました・・・ウッ!」


少し時間をさかのぼる、

コウは対戦に備え体を動かしているところにチカが現れる。

「コウさん、差し入れです。飲んでください。」

「・・・おじょう、お気持ちだけで充分です。」

チカがユウヤの味方なのはよく知っていたから怪しい差し入れに手を出すわけにはいかなかった。

「私の差し入れはいらないと?」

「うっ、いえ、今は喉も渇いていませんし・・・」

倉田がコウの頭をわしづかみにする。

「コウ偉くなったな、チカが、差し入れに来ているんだ、死んでも飲むのが漢だろ?」

「く、くらたさん、これには事情がありまして・・・」

「お前の事情とおじょうの差し入れどちらが重いか考えて答えろ。」

倉田の手の力が増してくる。

「・・・いただきます。」

コウはグイッと飲む。

「ごめんね、でも、ゆうちゃんを殴ろうとする人は許せないんだ。」

チカの言葉で何か入っていることは確定した。



「悪いね、強力な下剤を入れさしてもらったよ。」

「汚い奴め!」

「極道が綺麗事言ってどうするの?さぁやりあおうか?」

「待て、トイレに先に行かしてくれ!」

「逃げるのか?」

「違うトイレに・・・」

「おいおい、逃げ出していいと思っているのか?」

「頼むトイレに・・・」

「負けを認めるか?」

「クッ!ウッ!み、みとめるだからトイレに行かして、くれ・・・」

「なら、漏らす前に行きなよ~」

内股でトイレに急ぐ姿は惨めなものであった。


結局、ユウヤをボコボコにする計画は破綻し、コウも二度とやり合おうとはしなかった。

コウは後日後輩に・・・

「いいか、ユウヤに逆らうな、ロクな事にならん、ケンカは腕っぷしだけじゃないんだなぁ・・・」

組の中で争わない生き方を教えるのであった。



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