第8話 家族会

「おやっさん、この後どういう予定ですか?」

「俺と銀次、シン、カズマは本家で夕食会だ。」

「おやっさん!俺はお家帰れるの?」

「バカか?帰れるわけないだろ!ユウヤはチカと一緒に家族会の方に顔を出してくれ。」

「家族会?」

「各地の親分の家族が来ているんだ。極道のゴタゴタはおいて友好を広げるチャンスでもある、うちはそんなに友好に困っていないが顔を出しておかないとうるさい事もあるからな。まあ、お前の判断で好きなようにしてくれ。」

「わかりました。では、チカちゃんとそっちに向かいます。」

「ああ、そっちが終わったら先にチカとホテルに帰っておいてくれ、こっちは遅くなる。」

「わかりました。」

俺とチカは家族会の場所に向かう。


「シン、行ったか?」

「行きましたね。」

「ユウヤは何も気付いていないな?」

「アイツは抜けてる所ありますからね。」

「家族会に参加する意味に気付いてないとはねぇ~」

「おやっさん、ユウヤを嵌めるのやめましょ?後で知ったら文句言ってきますよ。」

「銀次心配しすぎだ、なんだかんだでユウヤはチカを好きなんだよ、だから、親父への挨拶の時も否定してないしな。」

「でも、怒りますぜ。」

「なに、いつもの事だ。」

家族会の参加条件は組長の家族であること。

ただこれだけだが、護衛もつけて来れない場所でもあり、参加するということは嫁、子供、配偶者を意味していた。

ユウヤはこの事に気付いていなかった・・・


「なんか男性率少なくない?」

男ばかりの世界の筈がほとんど女性の参加だった。

成人している男は本家の宴に参加するのがほとんどであり、こちらに参加している男はまだ子供といえる歳の子達ぐらいだった、一部の例外はあったが・・・

「そ、そうかな?」

「何?チカちゃん緊張しているの?」

「う、うん。」

「ほら、深呼吸して、おやっさんも適当にしていいって言ってただろ?緊張なんてしなくてもいいよ。」

「うん。」

チカは此処にユウヤが来る意味を知っていた。その為に緊張していたのだが・・・

「チーカー!」

遠くからドレス姿の女性が走ってくる。

「マリちゃん!」

チカは両手で手を繋ぎ飛びはね再会を喜ぶ。

「久し振りチカ、元気にしてた。」

「うん、マリも元気そうだね!」

「モチロンだよ、でも、最近ちょっとブラックかも~」

「どうしたの?」

「お父さんがお見合いしろってうるさくて。」

「マリもまだ中学生だよ!なんでお見合いするの!」

「うちの組、経営難みたいでね、お金ある組の嫁に出して資金援助を狙ってるみたい・・・」

マリの元気が目に見えて無くなっていく。

「マリ・・・ねぇ、ゆうちゃん、なんとかならない?」

「金額にもよりますが多少の援助は出来ますよ。」

「ホントに!!!」

マリが顔をあげコッチを見てくる。

「はい、まあ、どれぐらいの援助を求めてるかでお答出来ないかも知れませんが一千万、二千万ぐらいなら御用意できるかと。」

「ありがとー」

マリは思わず俺に抱きついてきた。

「お父さんに伝えて、そっちに行くように言うからよろしくね!」

「はい、ただ離してくれたら・・・」

「いいじゃん、ほら役得と思って♪」

「いやいや、女の子がそんなはしたない事したらいけませんよ。」

「ほら、マリはなれて、はーなーれーてー」

チカは全力で引き離す。

「もう、チカどうしたの?って、あれそういえば此処に成人男性がいる?」

「そんなに珍しいのですか?」

「チカ、お兄さんいたの?」

「違います!ゆうちゃんはその~ねっ♪」

「あっ、あーチカゴメンね。」

「わかってくれた?そう言う事だから抱き付いたりは禁止だよ!」

「了解であります!その代わり援助の程を。」

「私に権限ないけど、お父さんに伝えておくし、ゆうちゃんが許可してるぐらいだから大丈夫だよ。」

「えっ、この人そんなに権限あるの?」

「うん♪」

「なのになんでコッチに?普通本家の宴に行くよね?」

「事情があるんだよ~ほら、御姉さんに挨拶しておくにはコッチの方が都合いいでしょ?」

「あーなるほど。たしかに此処なら会えるもんね。」

「会わしておかないと後で怒られそうだしね。」

「なぁ、チカちゃん、俺の知らないワードがたくさん出てるけど、俺は此処で何するの?」

「大丈夫だよ、私に全て任して!」

「いや、不安だから教えてよ。」

「ゆうちゃん酷い、私を信じてよ。」

地下は涙目で見てくる。

「うっ!し、仕方ない、でも、変な事はさせないでよ。」

「変な事じゃないよ、真面目な事だからね。」

「真面目?余計に不安なのだが・・・」

「いいから、いいから♪」

「ねぇ、チカ?」

「何マリちゃん。」

「この人此処にいる意味わかってない?」

チカは吹けない口笛を吹く。

「ヒューヒュー、何のことかしら?」

「ごまかせてないから!大丈夫なの?」

「お父さんのイタズラでもあるの、うちはかなり特殊だから、マリちゃんも秘密だよ。」

「はぁ、口止め料(援助)貰う以上黙ってますよ~」

「お願いね♪」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る