秋になりました。

村々の木々は紅葉に染まっていますが、大樹は枯れてしまっています。


そして買い物から戻ったハンナは、

家に入りルドルフが深刻な顔をしているのに気づきました。

机の上には紙切れが置かれています。


不安になったハンナが


「どうしたの?」とたずねると


ルドルフは


「ついに戦争がはじまったよ」


と答えました。


紙切れはルドルフに届いた召集令状だったのです。

   

するとハンナは目に涙を浮かべ令状を取り上げました。


「令状なんて知らないわ。戦争なんてダメ。二人で逃げよう?」


しかしルドルフは答えます。


「僕だけが逃げるわけにはいかない。僕が戦わないと、敵はハンナや大切な人を殺しにくる。それに悪いのは、皇太子を暗殺した奴らと、それを助けるフランスやロシアなんだよ」


「そんなの関係ない!あなた一人くらい逃げたって勝ち負けは変わらないわ。ね、逃げましょう?」


ハンナはルドルフにすがりつきながら頼みました。

しかしルドルフはハンナを優しく諭すように


「心配しすぎたよ、ハンナ。この戦争はすぐ終わる。ドイツの勝利は決まってるようなものだよ」


ルドルフは笑顔でハンナを元気づけます。


「ホントに?ホントに戦争はすぐ終わるのね?」


「ホントだとも。すぐに帰ってくるさ」


「すぐってどれくらい?」


「そうだな。クリスマスまでには帰れるさ」


ルドルフがなだめたおかげでようやくハンナは落ち着きを取り戻しました。

そしてハンナはいつも通りに夕飯の準備をはじめるのでした。


数日後。

風で枯葉が舞い落ちるなか、

軍服をピシッと着たルドルフはハンナに手を振り旅立っていきました。


ハンナは寂しさて胸が張り裂けそうでしたが、


「クリスマスまでには帰れる」


というルドルフの言葉を信じて待つことにしたのです。




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