2022.7.23 「みなし陽性」

7:00。

朝起きるなり、これまでピンピンしていた次男のソウが軽い咳をしているのに気が付いた。

ああ……こっちもきちゃったか?

まだ熱は上がっていない。しばらく様子を見ることにして、自分の熱を測ってみる。


「37.9」――ビミョーな数字。

症状は頭痛、うっすらとした腰の痛み、そしてなぜか涙。あとやっぱりだるい。

けれど熱はそれほどではないし、オミクロンの特徴といわれる喉の痛みもなく、咳もない。たぶんコロナだろうけど、そうだとしても軽く済みそうだなと思った。

とにかく一番イヤなのは頭痛。この程度の熱を下げたくないけれど、またイブプロフェンを服用する。お薬ハッピータイム到来で、しばらく普通に過ごせた。


11:00。ソウの熱が37.7まで上がり、しんどそうにグズるようになってきた。カイと同様、節々が痛んでいるようなそぶりなのだが、「つらい?」と聞くと「お医者さんはいかない!」と返ってくる。医者に行くなんて言ってないんだけど、どうやら行かされるくらい体調よくないということは自分で自覚しているらしい……カイにしろソウにしろ、揃って薬嫌い・医者嫌いで困ってしまう。

ちなみにカイのほうは、朝、座薬を入れてから、ようやく何となく顔色がさえてきた。熱はまだ38.0あるけれど、昨日までのように「痛い」「なんとかして」と大騒ぎすることもなく、転がったまま動画を見て、落ち着いた様子でいる。

罹患3日目、せん妄を思わせる症状があったりして心配もしたけれど、彼に関してはピークは越したような気がする。親のほうはたぶんこれからだけど……。


さて、昨日カイが受診したクリニックに連絡し、ソウと一緒に受診。

と、昨日と同様に駐車場に現れた看護師さん、今日は体温計もパルスオキシメーターも何も持っていない。「?」と思っていると、そのまま診察エリアに案内された。抱っこされながら大騒ぎ(医者嫌い)しているソウをなだめなだめ、とりあえず椅子に座ると、現れた先生がソウを一目見てぼやく。


「ありゃあ。これじゃあ検査するの、かわいそうだなあ」

ごもっともです、すみません……。

「あのね、お母さん。実は今日からね、みなし陽性にしていいって通達があったんですよ」

「あ、そうなんですか?」

「でね。お兄ちゃんが陽性で次の日に弟さんが発熱ってことは、もう弟さんもコロナで間違いないと思う。こんな泣いてるのに無理に検査したくないんで、検査なしで陽性にしていいですか」

「わかりました。それでお願いします」

「で、お母さんはどうします? 念のため検査しますか?」

「あー……」


少し考えた。一応、検査して確定させた方がいいのか?

いや、でも、もう状況的・症状的に確定だよね?


「……いえ、いいです。私も、間違いないと思うので」

「わかりました。じゃあ陽性ってことで届け出はちゃんとしておくので」


診察は以上。

私とソウは、検査はおろか検温も何もしないまま、「新規新型コロナ陽性患者」のひとりになったのだった。


**


私はクリニックまで自分で運転して、帰りも普通に運転して、普通に帰ってきたし、クリニックで先生と話していたときの私にも、病人感はまったくなかったと思う。自分でも、「あーあ、こんなんでコロナ患者になっちゃっていいのかしら」ってな感じだった。

ただ、それもやっぱり、イブプロフェンによる「お薬ハッピータイム」のなせる業だった、らしい。


帰ってきてお昼ごはんにしようと思ったのだけど、お腹が空いた感覚はあったのに、チャーハン3口で限界に。

とにかくだるい。頭が痛い。重い。体温を測ると39℃超え。

他に症状はなく、ソウのことも気にはなったけれど、だるさと一緒に強い眠気も襲ってきて、もうとても起きていられない。まだ健在の夫に後を託して、私は寝た。


とにかく、こんこんと眠ったと思う。午後じゅうずっと。

ふっと気づいたら、もう部屋が暗くなっていた。いつの間にか頭の下にタオルを巻いた保冷剤が入っていて、両脇には子どもふたりが張りついていた。猫みたい。

時間は20:00。体温39.3。

とりあえず起きてカロナールを飲んでふとんに戻る。

そのあともひたすら眠り倒した。


なお、夫に聞いたところ、カイは完全に峠を越して、午後からは熱はあるも元気だったそう。

ソウもつらいのつらくないのとグズグズは言ったが、やはり38℃台の熱だけで元気。次の日には平熱に戻ってけろりと回復した。さすがは当家最年少。子どもは重症化しにくく軽くすむことが多いというのは本当らしい。

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