第3話 街の外へ!!初戦闘!!

 南門から、外に出た私は、改めてこの世界の広大さを目の当たりにした。目の前にあるのは、草原や森などの大自然だ。


「広い。それに、風が気持ちいい。ここがゲームの世界なんて信じられない」


 門の前で、少しの間、風を堪能していると、遠くで戦闘をしているプレイヤーを見つけた。


「あの人達は、剣と弓かな? 私の銃は、ユニークスキルだから、誰も使ってないんだよね。はぁ……やっぱり目立っちゃうだろうなぁ」


 私は、メニュー画面から拳銃を選択し装備する。


「これって、リボルバーかな。全部で六発。装填は一発ずつ装填するのか……」


 私は、装備と同時に出現したホルスターにリボルバーを納める。どうやら、このホルスターもリボルバーとは別で、装備の一種みたいだ。


 周りを見ながら、草原を歩いていると、目の前に毛玉が現れた。


「あっ、よく見たらこれ、アンゴラウサギだ。可愛い……」


 白いふわふわなウサギに癒やされていると、ウサギがこちらを睨んできた。私も、ウサギをじっと見ると、ウサギの名前が分かった。ウィンドウが出たわけでもないのに、頭の中にウサギの名前が過ぎったのだ。


 ウサギの名前は、キラーラビット……どう考えても敵対MOBの名前だ。キラーラビットは、私を敵と認めているようで、臨戦態勢を取っていた。私も、すぐにリボルバーを抜く。


 先に攻撃を仕掛けたのはキラーラビットの方だった。私目掛けての体当たりだ。意外と早い動きだが、横に転がる事で避ける事が出来た。その後も、体当たりをしようとするので、その動きをよく見て避ける。


(体当たりの前に、少し溜めがある。それを見逃さなければ、避ける事は出来る)


 回避が出来る事が分かったので、今度は、こちらの攻撃を当てる番だ。キラーラビットが、体当たりの前の溜めに入った瞬間を狙って、引き金を引く……弾が出ない。


「あれ?」


 キラーラビットが、体当たりをしてくる。反応が遅れたけど、ギリギリのところで避ける事が出来た。


「なんで!? あっ!」


 私は、この時広場で読んだ銃術のチュートリアルを思い出していた。


「撃鉄起こしてなかった!」


 急いで撃鉄を起こし、今度こそキラーラビットに照準を合わせる。そして、引き金を引く。響き渡る銃声と共に真っ直ぐとんだ弾は、キラーラビットの右頭を貫いた。キラーラビットはそれっきり動かなくなった。


「威力が高い。銃自体の攻撃力じゃなくて弾の威力なのかな?」


 銃の攻撃力などのステータスも隠されているので、銃が強いのか弾が強いのかが分からない。それとも、頭が弱点だったのかっていうのもある。普通の生物と同じで考えると、頭と心臓を狙えば、一撃で倒せる可能性があるということになる。


「狙うべきは、頭と心臓かな。ここら辺は要検証だね。と言うか、死体はそのままって本当だったんだ。これを解体屋に持っていかないと、素材を手に入れられないって、少し面倒くさいな」


 これもチュートリアルに書かれていた。モンスターは、解体屋で解体して素材にする事で、武器や防具などに使う事が出来る。


「これ、自分で解体出来ないかな?」


 ふと頭を過ぎったのは、「自分で解体すれば節約になるのでは!」と言う事だった。実は東通りを探索しているときに、解体屋の前を横切っていた。その時に、解体料らしき文字を見たのだ。つまり、解体するにもお金がいるという事だ。


 キラーラビットをアイテム欄に入れ──死体になった事で入れる事が出来る──、一度、街に戻った。街に入る直前で、リボルバーもアイテム欄に仕舞っておく。東通りまで走って行き、解体屋に飛び込む。


「すみません。解体包丁みたいなのってありますか?」


 解体をお願いするのではなく、解体に必要な刃物を頼んだ。私の武器はリボルバーだけなので、解体のしようがなかった。


「ああ、あんたが解体するのか?」

「はい」


 店主さん(女性)は、しばらく私の眼を睨んできた。元々の強面のせいで、かなり怖い。目線を外すと殺されるのではと思い、私もジッと見返した。


「出来るとは思えないな……やり方を教えてやる。金はあるか?」

「えっと、少しだけなら……」

「特別に二〇〇〇ゴールドで教えてやる」

「じゃあ、お願いします」


 私は、なけなしの二〇〇〇ゴールドを渡す。これで、ヘルメスの館と合わせて二八〇〇ゴールド使った。現在の所持金は二〇〇ゴールド。ひもじい……


「獲物は持ってるか?」

「えっと、キラーラビットが一羽です」

「よし、奥に行くぞ」


 店主さんに連れられて、店の奥に行く。そこは、解体場となっていた。店の部分と違って血の跡などがこべり付いている。


「そこの台の上に置け。それと、これをやる」


 店主さんがくれたのは、複数の刃物が入った革のケースだった。


「こんなに沢山の包丁を……いいんですか?」

「むしろ、解体には複数のものを使う方が良い。それに、仕事ではもっと良いものを使ってる。それは、私のお古だ」

「そうなんですか」

「ああ、じゃあ、始めるぞ」


 そこから、解体の仕方の説明が始まった。内蔵の取り出し方から始まり、皮の剥ぎ取り方、骨の切り方、肉の分解の仕方と続いていった。途中気分が悪くなりかけたが、必要な事だと割り切り頑張って耐えた。思っていた以上にリアル感がある。


「これで終わりだ。良く耐えたな」

EXエクストラスキル『解体術Lv1』を習得。最初の習得者のため、ボーナスが付加されます』


 店主さんは、にやりと笑っていた。私は、少し気になっていた事を訊いてみる事にした。


「なんで、解体の仕方を教えてくれたんですか?」

「お前の眼さ。俺が睨んでも真っ直ぐ見返してきただろ? ほとんどの人はそんな事してこない。余程の覚悟があると見たのさ」


 なんと、あそこで目線をずらしていれば教えてもらえなかったかもしれないらしい。あの時の自分を褒めてあげたい気分だ。


「教えて頂きありがとうございます!」

「おお、ほとんどの動物は、教えた方法でどうにかなる。よくわからないものがあれば、持って来い。そん時に、また教えてやろう」

「分かりました! じゃあ、失礼します」


 私は、店主さんに解体屋を出て、また南門に向かった。店主さんが、手を振って店の出口まで送ってくれたので、私も手を振って答えた。


「そういえば、EXエクストラスキルって何なんだろう? チュートリアルには書いてないし……」


 今手に入れたスキルは、EXエクストラスキルというものだった。これに関する記述は、チュートリアルにはなかったので、どういうものなのかが分からない。これも考えていても仕方ないと判断して、もう一度外に出るべく、南門に向かった。南門を出て草原を歩きつつ周りを見てみると、プレイヤーの数が、さっきよりも減っている事に気が付いた。時間を見ると、十二時を過ぎていた。


「ご飯時だから減っているんだね。じゃあ、今のうちにモンスターを倒していこう」


 人が少なければ、目立つ可能性は低くなるので、今のうちに戦闘の数をこなしていく。森に向かって歩いて行くと、再びキラーラビットが現れた。こちらには気付いていないようなので、そのままリボルバーを構え、撃鉄を起こし、引き金を引く。的確に頭を撃てたので、一撃で倒す事が出来た。


「やっぱり、頭が弱点かな」


 一撃で倒せた理由は、恐らく頭を的確に撃ち抜けたからだと思う。ゲームであるヘッドショットと同じ判定なんだろう。今とさっきのキラーラビットトの戦いで確信を得る事が出来た。


「つまり、頭をきちんと撃てば、一撃で倒せるって事だね。心臓については、もっと大きい相手で試してみる必要がありそうだね」


 それから、三羽のキラーラビットの頭を撃ち抜いていく。


「やっぱりそうだ。それに、今のところ一発も外してない。意外な才能があったのかも!」


 私が喜んでいると、また、キラーラビットを見つけた。狙いを付けて引き金を引く。また、頭を的確に撃ち抜けた。


「これで、六羽。残弾はゼロ。じゃあ、銃弾を精製してみよう。えっと、スキルの説明は、魔力消費で銃弾を作るだったっけ。じゃあ、『銃弾精製』」


 私はそう唱えたが、銃弾は精製されない。


「あれ? 何か違うのかな? スキルの使い方については、詳しい説明がないからよく分からないんだよね」


 その後も同じように唱えるが全く手応えがない。


「う~ん、『銃弾精製・拳銃』」


 精製する銃弾の対象を、一緒に唱えてみると、手のひらに銃弾が一発だけ精製された。


「おお~~!! えっ、一発ずつ?」


 一気に六発精製されると思っていたのだが、実際には一発ずつという結果だった。


「詠唱を変えてみようかな。『銃弾精製・拳銃・六発』」


 種類の後に、銃弾の数を追加して唱えると、手のひらに六発精製された。いきなり現れたので、手のひらからこぼれ落ちそうになった。


「おっと! 危ない、落とすところだった。と言うか、なんか少し疲れた感じがする。MPの消費とかなのかな? こういうとき、ステータスが見れないって不便だなぁ」


 弾を一気に精製すると、一発では感じなかった軽い倦怠感のようなものを感じた。私は、それをMP消費の感覚だと予想した。まぁ、それは置いておいて、リボルバーのリロードをしてみる。シリンダーを左にずらし、排莢を行い、一発ずつ入れていく。


「これ、なんか見た事あるなぁ……あっ、昔やったゲームだ! ふふ、私のリロードはレボりゅっ…!」


 決め台詞の途中で、真横からキラーラビットの体当たりを受けた。良いところを邪魔して! 許さない!


 体当たりを受けた衝撃を利用して、その場から離れて、リロードを済ませる。キラーラビットは、すぐに体当たりの姿勢になったので、その隙を逃さずに、狙い撃つ。体当たりのために入っていたキラーラビットは、避ける事が出来ず絶命した。


「ふぅ~、少し疲れちゃったな。集中していたせいかもだけど……」


 キラーラビットを七羽狩ったところで、身体に疲れを感じた。


「集中? あっ! 私のスキルの集中が発動してたのかも。だから、命中率も高かったのかな?」


 自分のスキルが良い感じで相乗効果を発揮していた可能性があった。相性の良いスキルの組み合わせで、運がいいね。


「街に戻る前に、解体しておこう」


 モンスターの数が少ない街に近いところで、キラーラビットを解体していく。解体すると、いくつかの素材に分かれる。肉、骨、内蔵、血、皮、核の6つになる。この中の核は、魔物に必ずあるもので、沢山の魔力が含まれているらしい。これを、売る事が、主な資金稼ぎの方法みたい。


「ふう、終わった。血を入れる瓶が一杯になっちゃったなぁ」


 私は、血が一杯入った瓶を片手にそう言った。この瓶は、解体屋の店主さんにもらったものだ。解体したものを、アイテム欄に納めていると、誰かに見られている感じがした。


「ん?」


 周りを見てみると、遠巻きだが、多くの人がこちらを見ていた。そして、何やらひそひそと話している。


「注目されている? なんか面倒くさそう。ヘルメスの館まで走ろう」


 私は、すぐに南門に向かい走った。ちらっと後ろを見ると、さっきの人だかりから何人かが追い掛けてきていた。


「何で追い掛けてくるの!?」


 全力疾走で走っていると、


『『速度上昇Lv1』を修得』


 と出てきた。突然修得出来たスキルだけど、そのおかげで、速度が少し上がった。しかし、あちらも同じスキルを持ち、尚且つレベルも上らしく、徐々に詰められる。ようやく、東通りに来て、路地裏に入る入り口を見つける。


「待て! そこの白髪!」


 後ろから怒鳴り声が聞こえるが、無視して路地裏に入る。そのまま走り続け、ヘルメスの館に飛び込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る