第20話 織部レンの正体

芝山先輩の家へ無事に着き、ぞろぞろと家に上がろうとすると、芝山先輩のお父さんが不思議そうに話しかけてきた。


芝山父:「どうした?細川さんまで連れてきて。」


芝山先輩:「父さん、実は昨日、利子さんが危険な組織に拉致されそうになったんだ。それで、見張りのための警備員を誰かつけてもらえないか、相談に来たんだ。」


芝山父:「待て、待て、事情がよくわからない。どこの組織に、誰が拉致されそうになったって?だいたい、なんでそんなことになるんだ。」


芝山先輩:「利子さん、事情を説明してくれるかい。」


私:「はい、初めまして芝山先輩のお父さん。私は利子と言います。今、千利休の逸話で日本のおもてなしの心を広めようとする利休派を、ここのみんなと一緒に推進しています。」


芝山父:「利休派!聞いたことがあるぞ。確か織部ズムと論戦している団体だったな。だが、利休派は負けて、ほぼ壊滅したと聞いていたが。」


私:「その通りです。利休派は、今、ここにいる8人と、大人が数人しかいません。そして、私はこの街の管理者と名乗る明智さんに拉致されました。」


芝山父:「明智だと。あの明智か!また悪さをしたのかあの女。わかった、まずは話を聞こう、みんな部屋に入って、椅子に座りなさい。」


私は昨日拉致された状況と、『密庵咸(みったんかん)傑(けつ)墨蹟(ぼくせき)』『森口の茶人』『一両の茶巾』の逸話をした。


芝山父:「大変だったね、だがあの明智ならやりかねない。利子さん、その中華料理店の場所は覚えているかい?」


私:「はい、覚えています。」


芝山父:「こちらの主力でそこを叩く。あの女には何度も逃げられているんだ。もう逃がさない。」


芝山先輩:「父さんが燃えている!」


その後、30人規模の警備員が、中華料理店になだれ込み、覆面女性を捕まえて外に出て来た。


覆面を外された女性は、見知った顔だった。


高山:「秘書さん!」


私:「えっ、嘘、そんな。」


芝山父:「知り合いかい。このまま警察へ連れて行くので、何か話があるなら、今のうちに話しておきなさい。」


私:「はい。」


秘書:「利子さん、少々、あなたを見くびりすぎたわ。」


私:「秘書さんは、私に利休の逸話を真剣に教えてくれたじゃないですか。なぜ、織部ズムに入っているんですか?」


秘書:「私は今も利休派よ。織部ズムへは、スパイ活動のため潜入した。そう言っても信用してもらえないわね。」


私:「私は信じます。だって秘書さんだもん。」


高山:「利子さん、だまされないで。秘書さんの話には、矛盾点があるわ!」


秘書:「何を根拠に言っているのかしら。」


高山:「まず、利子さんを織部ズムのメンバーと一緒に拉致しているのに、そのことに触れていない点。次に、利休の悪い逸話を聞かせ、利子さんを織部ズムに引き込もうとした点。そして、既に警察に連れていかれるような問題を犯している点よ!」


芝山父:「なかなか鋭い指摘ができる子がいるようだね。名前を教えてくれるかい。」


高山:「高山と言います。」


芝山父:「高山さんか。君の言う通り、彼女は、警察に連れていかれるような問題を犯している。利休派の事務所に放火をしたり、マルチ商法をあちこちで展開し、その売り上げを巻き上げたり、利休派と思われる人物を何人も拉致したりしている。」


秘書:「拉致は、一時的よ。」


私:「ひどい、私をだましたんですね。」


秘書:「利子さん、あなたの事は織部ズムの本部に報告済みよ。私が捕まったことで、今後、様々な刺客が訪れるわ。最後に忠告してあげる。もし、本気でおもてなしの心を人に伝えたいなら、長官には注意する事ね。だって、織部ズムのボスと長官は兄弟なのだから。」


私:「兄弟なのは、知っています。でも、私は長官を信じます。」


秘書:「そう、あなたはその事実を知っても、なお、長官を信用できるのね。私は信用できなくなったわ。そこを、織部ズムに付け込まれたのかしらね。」


芝山父:「そろそろ良いかな、利子さん。さあ明智、行くぞ。それから、君たちの周りに警備員を配置すると約束しよう。織部ズムは危険な組織だからね。」


私:「秘書さん。罪を償って、戻ってきてください。利休の逸話を話していた秘書さんは、とても楽しそうでした。きっと、本当は利休の事が好きなんです。私はそう信じています。」


秘書は無言のまま、芝山父達に連れていかれた。


私達も、芝山家の警備員に連れられ、それぞれの家路につくこととなった。


◆◆◆


現在の利子の特殊能力

 ・逸話の伝道師・初級

  『丿貫の落とし穴』『三献茶』『落ち葉の風情』

  『密庵咸傑墨蹟』『森口の茶人』『一両の茶巾』

 ・茶道は不得手

 ・みんなのリーダー・初級

 ・利休派への勧誘力・初級

 ・駆け足・得意

 ・長官への信頼・初級(☆LVUP↑)

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