二重螺旋の奇跡のシンフォニーを堪能あれ

人の形を司る記録媒体-遺伝子。異なる二人のそれを融合させる施術が実現し、ガンをも克服する奇跡が生まれた。

そんな奇跡を受け入れた「〈声無き歌姫〉ミザ」と「私」の二人の関係を描いた本作の最大の見所は、二人の対比の描き方だ。

人の遺伝子は二重螺旋。それぞれの螺旋は決して交わらない。だが、いずれの螺旋も右巻きで同じ方向に進む。見る角度によっては平面的に交わっているようにも見える。そんな人の遺伝子の構造を二人の関係に重ねながら、彼女達の行き着く先を見届けた後、私の心に残ったもの。それは、作者の秀逸な表現がもたらした、二人の紡ぐ美しきシンフォニーだ。

その旋律はきっと、私以外の読者の心にも必ず届くと確信している。そう、ミザの歌声のように。

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