第14話 ミケには正解は黙っておこうと思った。

「ご主人、テレビばっか見ないでにゃあ」


 コーヒーのクイズドキュメンタリーを、テレビで眺めていると、ミケが俺の上に陣取った。


「どうした? 夕飯まではもうちょっと時間かかるぞ?」


 今日は母さんがいるので、手作りの温かい料理が食べられるはずだ。ミケも金の猫缶までは行かなくても、なかなか良いものを食べられるはずだ。


「んふふー構って欲しくなっちゃったにゃあ」


 ミケはゴロゴロと喉を鳴らして、俺の身体にべったりとくっつく。


「んー、いいぞ―構ってやるぞー、かわいいなあお前はー」

「にゃっ、にゃははっ!! ご主人……ミケ、これ好きにゃっ」


 わしわしと身体をこねるように構ってやると、ミケは嬉しそうに体をよじる。親戚の赤ちゃんがこんな感じに笑ってたな、俺はうっすらとそう思った。


「ただいまー、あ、お兄ちゃんがミケといちゃついてる」

「どうだー羨ましいだろー?」

「ちょっとだけね……おかあさーん、夕飯なにー?」


 軽いあいさつを交わして、妹は二階へ上がっていく。


「ちょっと優越感にゃ」

「羨ましかったのは俺に対してだろ、こんなかわいい猫といちゃいちゃ出来るんだからな」

「えー、絶対ご主人に構ってもらえるのが羨ましいんだと思うにゃあ」


 ミケはうれしくなるような事を言って、俺の身体に体重を預ける。


「そういえば、今日の動物園はどうだったにゃ?」

「ライオンとかトラとかネコ科なら言葉がわかるみたいだね、さすがに遠すぎて会話は出来なかったけど」

「ご主人のなでなでを受けられない、ライオンさんやトラさんが不憫にゃあ」


 いや、撫でられてもライオンやトラは怖くて無理だ。


『ここで問題です。このコピ・ルアクという高級コーヒー。実は驚きの方法で作られているんです。さて、その方法とは何でしょうか?』


 テレビでリポーターが問題を読み上げ、場面がスタジオへと移る。


「にゃーご主人、テレビは何の話をしてるにゃ?」

「コーヒーのクイズだね、高級な豆の製法が問題になってるよ」


 自分のお腹にミケを乗せて、俺は頭をひねる。テレビの中ではメインキャスターがヒントを出していた。どうやら動物に何かをさせるらしい。


「トリュフ豚とかもいるし、選別させるのかな?」

「でもあんな木の実、ミケなら食べちゃうにゃあ」


 色々考えるが、正解はCMの後となってしまった。


「ちょっとー、ご飯できたから運びなさーい」

「はーい、母さん」


 気になるけれど、夕飯の準備も大事だ。俺はミケを脇において、台所へと歩いて行った。

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