第8話 ちなみに、その時俺はエサを食べ終わった猫になでなでをせがまれていた。

 放課後、公園でボケーっとしていると、クロスケがとなりに座った。


「なんか、お前って人間の友達居るのか不安になるよな」

「大丈夫、居ないから心配しなくて良いよ」

「逆なんだよなあ」


 クロスケが顔を洗いながら呆れた声を上げる。いいじゃん、別にいなくても。


「ところでさ、こないだ気になったんだけど、クロスケってにゃあにゃあ言わないよな」

「あれは飼い猫の口癖だからな、俺達とは全然違う」


 なるほど、育った環境かあ。


「で、お前は何してんだ? 猫の餌でも撒いてくれんのかって期待してるんだが」

「いや、俺もやりたいとは思ったけど、禁止されてるし、それに……」


 俺は数日前、ここで餌を撒いてるおじいさんと猫の集団を見た。


「おいクソジジイさっさと餌よこせ!」

「こっちは腹減ってんだ! 早くしろ!」

「うちには子供がいるのよ! その子が飢えたらアンタのせいよ!」


 という耳を覆いたくなる罵声に対しておじいさんは

「ほっほっほ、みんな仲良くな、よしよし、お前達は可愛いのう」

 という感じで、意思疎通のできない幸せを精一杯噛み締めていた。


「アレを見ると、あげる気も起きないな、と」

「あー……」


 クロスケは返す言葉もないとばかりに声を漏らす。猫にも思い当たる節があるらしい。


「まあ、その、あいつらも悪気は無いんだ」

「大丈夫、わかってるよ」


 野良は生きるのに必死だ。だからこそああいう振る舞いをしちゃうんだろう。


「うわっ!? っと、な、なん……ふにゃ……」


 俺はそう思って、せめてもの出来ることとして、クロスケを撫でてやった。

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