第6話 大国主命 タケハヤと対峙する

 洞窟の中は、真っ黒な闇で覆いつくされていた。

 ここは何らかの魔術で包みこまれている。


 奥に明かりが見える。

 明かりを目指してヒロは歩いて行った。

 やがて、たどり着く。

 かがり火の中、そこにいたのは少女。

 全身を刺青のような模様で縛り付けられている。

 少女はヒロを見るとおびえたように後ずさる。

「大丈夫。助けに来たよ」

 そう話しかけた。だが、言葉がわからないようだ。


「そいつはな、人間じゃないから言葉が通じねえんだ」

 ヒロの背後から、いやらしい男の声。

 振り向くと、白髪のしわくちゃな大男。

「あなたがタケハヤ?」

「あぁ、そうだ。お前は誰だ?・・・まぁいい。

 どうせすぐ死ぬんだ」

 にたぁ・・とタケハヤが笑う。

 少女が叫ぶ。

「〇×△×〇*※!!」

 タケハヤが言う。

「ほれみろ、小鳥のようにさえずることしかできねえ」

 ヒロは、少女を見て言った。

『おや、懐かしい言葉。僕の育ったところの言葉が話せるんだ』


 それは、遠く地中海で使われている言葉。

 少女は驚き答える。

『あなたは言葉がわかるの!?』

『もちろんだよ。僕はそっちから来たからね』


 タケハヤがむっとしたように言う。

「なんだてめえら。まぁいい。もうお前は死ね」

 その瞬間、洞窟の闇が一斉にヒロに襲い掛かって来た。

 それは真っ黒な無数の生き物の形。それが地面から、天井からヒロの体に襲い掛かり這いまわる。


 それは真っ黒な無数のムカデの形をしていた。


 首から下を黒く染め上げ、やがて巨大なムカデの影が首筋へと巻き付き、頸動脈に向かって牙を開き噛み切ろうとした。


 にやにやと眺めるタケハヤ。

『やめて!!』

 少女が叫ぶ。


 ヒロは、タケハヤを見た。


 そして

 にっ、と笑った。



「ごめん、この手の魔法は得意中の得意なんだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る