おい、結婚の返事はまだかメイド

「おい、メイド。心の準備はまだ出来ていないのか」


「………えと、坊っちゃま?」


 俺が18歳を迎えて1週間経った。


 ーーーー1週間だぞ?今まではさりげなくメイドにアプローチはしてきたが、このようにストレートに聞いたことはない。


 だが、もう1週間経ったし、メイドからも『結婚しましょう!』という返事も貰ってはいない。


「えとですね坊っちゃま………や、やはりお考え直しとかは…」


「ないな」


「ふえぇ……」


 なぜ今更考え直す必要とかあるのだ?


「その、坊っちゃまにはお見合いの誘いが多数来ていると旦那様から伺ったのですが……」


「そんなもの、全て断っている。お前以外の女と俺は顔を合わせる気はない。それと、父上のことは旦那様と呼ぶな。俺が嫉妬する」


「ふぇ…」


 メイドの顔が一瞬にして赤くなるーーーあともう一押しか?


「メイド……何が一体俺との結婚を拒んでいるのだ?俺のことが嫌いなのか?」


「そ、そんなことはありません!私が坊っちゃまのことを嫌いになるなんて、天地がひっくり返ってもありえないです!」


「じゃあーーーーー」


 と、俺は昨日、唯一友達と呼べる存在に教えて貰った壁ドンなるものをメイドにする。


 壁際にまで追い詰められたメイドの退路を塞ぐように、壁に手をついて、顎に手を添えた。


「ーーーー一体何がダメなんだ?」


「~~~~~~っっっ!!!」


 ポイントは、耳元で優しく囁くように、だったか?確かに役に立った。メイドが照れている。


「…ぼ、坊っちゃま……」


 メイドが、俺の胸元を優しく掴んでくる。


「……だ、ダメなのです……私が、坊っちゃまと結婚するのは………ダメなのですよ」


「ーーーー何故だ?」


「そんなのは、世間が許してくれません……坊っちゃまは、世界的にも有名な会社の御曹司なのですから………ただのメイドとの結婚なんて…………」


「世間なんて知らん。文句があるなら、叩き潰すだけだ」


 勿論、法的にな。


 だからーーーーーお前は安心して、俺の隣でいつまでも笑ってくれるだけでいい。ただそれだけでいいんだ。


「うっ………坊っちゃま、ずるいですよ……そんなイケメンな顔で笑わないでください……」


「笑顔なんてお前にしか見せない」


「だっ、だから!そういうのがダメなのです!坊っちゃま!」


「坊っちゃまはやめろ。結婚するのだから、今日から俺が旦那様だ」


「ひうっ!や、やっぱり結婚は少しお待ちください!!」


 と、赤い顔で無理やり逃げたメイド。


「………ふむ、ならば婚約という形でメイドを俺のそばに置く手もーーーーーーー」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 相変わらずの勢い。

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