初めての恋かと思いきや…

 今年ももうすぐ、七夕の日がやって来ます。この今の世界にも、七夕の日は存在していて、毎年7月7日には盛大な七夕祭りとして、この国の何処もかしこも賑わいますのよ。私の前世でも七夕さまは、織姫さまと彦星が年に一度の再会できる日として、お祝い行事が凄かったと覚えております。


現世でもその七夕行事は、あまり変わらないようですわね。織姫さまと彦星が再会する日というのも、全く同じ意味を持っていますし、寧ろ此方の世界の方が、熱狂している雰囲気ですよね。織姫さまと彦星のお芝居を、有名俳優さんが演じたり、お店のスタッフさん達まで、織姫さまと彦星の仮装をしていたりと、至る所で偽織姫さまと偽彦星を、お見かけしますのよ。


前世でも七夕祭りとしてお祭りにしていましたけれど、何と申しますか…此方の世界では、ドンチャン騒ぎに近いような…。七夕祭りをこよなく愛してるような、感じが致しますのよね…。ですから、前世では七夕の日は平日でしたのに、此方では休日扱いなのですのよ。まあ…所謂、国民の楽しむ日な訳でして。


私的にはお祭りも休日も、大歓迎でしたよ。七夕さまも楽しいことも、大好きなのですわ。それに、節分も雛祭りもこどもの日も、我が家の行事として親友達に広めつつありますし、嬉しい限りなのですよ。…うふふふっ。


今年の七夕祭りは、今迄で一番楽しみにしておりましたのよ。何故ならば、今年は乙女ゲームだったキャラ達と大勢で、ご一緒に七夕祭りに出掛ける予定ですので。樹さん達男性陣は、其々カップルで…と思われていたご様子でしたけれども、私達女性陣は、皆さんとご一緒に楽しみかったのですわ。ですから今回は、男性5人と女性5人で遊ぶことになりまして。


男性が5人なのは勿論、あの隠しキャラであった光条さまも、ご一緒されるからですわ。ところで…あれっ、女性が1人多い?…そう思われた其処の貴方、大正解でしてよっ!…ふふふふっ。実は…あの光条さまに、遂にいい人が現れましたのよ。そうなのです。到頭、光条さまにも恋の予感が……。まだ正式に、告白された訳ではないそうですので、残念ながら…恋人ではないということですが。


ですが今回、わたくし達と一緒に出掛けるという、七夕祭りへのお誘いには成功された模様です。これは…チャンスです、光条さまっ!…私達女性陣が仲良くして、光条さまの良いところを一杯アピール致しましょう!…な~んて、考えておりましたのよ、私は。……ぐふふふっ。一度で良いので、恋のキューピットになってみたかったのですわ~。


まだ…光条さまのお相手には、一度もお会いしたことがありませんのよ。光条さまからご相談(?)のようなお話を受けたのは、つい先日のことでして。私と麻衣沙の2人は同じ学部ですので、大学の授業も全く同じです。その日は急遽、大学講師の都合で休講となりましたので、大学のカフェにて時間を潰しておりましたのよ。帰りたくともその後に他の授業がありまして、大学で待つしかありませんでしたのよ。私1人でしたら、退屈で死にそうでしたけれども、麻衣沙がご一緒にいてくださるので、安心なのですわ。


 「久しぶりだね、瑠々華さん、立木さん。」

 「…あらっ?……光条さま。お久しぶりですわね。」


カフェで会話していた私達に、声を掛けて来られたのは、光条さまでした。最近はあれ以降、2人っきりでお話することは…ありません。何しろ私は、正式に樹さんと交際を始めましたので。今迄も婚約者でしたし、私的にはそう変わらないように感じておりましたので、樹さんについ…ポロっと漏らしてしまった時。


 「恋人になったと申しましても、今迄とそう変わりませんわね。」

 「……今迄とは、しようか、ルル?…どこが違うのか、俺がゆっくりと教えてあげるよ。」


そういう風に…何故だか、樹さんが…黒い笑顔で仰られます。…ひええ~。何か…押してはいけないスイッチを、私は押してしまったのでしょうか…。私の顔からは一気に、熱が引いて行きましたわ。絶対に…青褪めていることでしょうね。

 

 「……い、いえ。…け、結構ですっ!」


私は速攻で、拒否致しましたのよ。…あ、危ない、危ない……。樹さんを本気で、怒らせるところでしたわね、間違いなく……。彼の黒い何かを、でしたわ……。


今の樹さん、目が笑っておられないのに、めっちゃ良い笑顔でしたよね…。…こ、怖~。…めっちゃ怖~~。絶対に…乙女ゲームの岬さんばりの腹黒さが、ありましたよね…。ううっ…。もうちょっとで、樹さんに腹黒い何かを、私の一言で発動させちゃいそうでした…。


…ということが、最近あったのですわ…。それ以降の私は樹さんの恋人らしく、自分からは光条さまと絶対に関わらないように、気を付けましたのよ。樹さんにこれ以上、腹黒な部分を目覚めさせないように…。






    ****************************






 「…君達に、聞いてもらいたい話があるんだ。良かったら、俺の相談に…乗ってもらえないだろうか?」


光条さまは歯に何かが挟まったような、歯切れ悪くそう仰られまして。私達に聞いてもらいたい話?…光条さまのご相談に、私と麻衣沙が…乗りますの?…あまりにも唐突な光条さまのお言葉に、私は目をパチパチとして瞬きを繰り返し、首を傾げます。麻衣沙は冷静に、ご対応されまして。


 「わたくし達は、別に構いませんけれども。ご相談には、お話にも…選りましてよ。わたくし達に応えられるようなお話でしたら、ご相談に乗りますわ。」

 「それで構わないよ。君達に相談したいのは、恋愛に関する話だし…。」


…まあ、まあっ!…光条さまの恋愛のお話…ですって?!……ゴックン。生唾を思い切り飲み込み、思わず身を乗り出してしまいました、私…。こ、これは絶対に…き、聞きたいですわ、何としてでも…。


 「実は最近、気になる人物が居てね…。彼女のことが…気になって、仕方がなくてね…。去年から1年間も、彼女はずっと俺の傍に居たのに、つい最近まで全く気付かなかった。それなのに…彼女の存在に気付いた途端、俺は毎日彼女のことが、気になってしまって…。これはもしかして、恋なのだろうか……と。」

 「…なるほど。光条さまは、その女性が気にかかるのですね?」


光条さまが語られたご自分の状況に、私はウキウキしながら確認致します。彼はこれが恋なのかどうか、まだご自分では判断出来兼ねる…というご様子。フムフム、なるほど…。私も恋愛経験は少ないですが、これは…恋でしょうね。しかし、1年間ずっと彼の傍に居て、つい最近まで全く気付かないとは、どういうお相手なのでしょう?


 「それだけでは、判断しかねますわね…。お相手は、どういう女性ですの?」

 「彼女は大人しいタイプの人で、服装や髪型も化粧も目立たないような地味系だし、何時いつも誰かの話を黙って聞いているような、そういう人なんだ。実際に彼女と2人っきりで話をしたのが、つい最近になってからなんだよな…。それまで俺は、彼女が傍に居ることさえ気づかず、彼女を見ようとさえして来なかった。けれど、一度彼女の存在に気付くと、何となく忘れられない…というか、その…何と言えばいいのか……。、彼女が輝いて見えて来て、誰よりも可愛いと思えるんだよな……。」


これだけの情報では判断できないと、麻衣沙が更に踏み込んで訊かれまして、光条さまもそれに応えられるように、お相手の特徴を具体的にお話されるのですが…。如何やら、とても物静かな地味系女子…のご様子ですね。派手系男子の代表みたいな彼に、地味系女子がお相手だとは、流石の私も予想外でしたわね。意外と言えば意外ですけれども、人間は自分に無いものを求めたがる習性がありますから、案外とお似合いのカップルになられるかも、しれませんよね?


しかし……。うひゃあ~~。これは、間違いなく恋ですねっ!…興味を持つ=恋をした、という場合は多々ありますわ。私の場合、樹さんは絶対に…コレに当て嵌まりますわよね…。だって…地味系ではないものの、顔は普通レベルの私に興味を持たれたなんて、この方式しか考えられませんものね…。自分で考えていて、落ち込みそうですが。…良いんですのよ。これも私の魅力の1つだと思えば、寧ろ普通で良かったと思えますもの。……あははははっ。(※乾いた笑い)


 「なるほど…。それは、恋かもしれませんわね。今は、ルルのことは…大丈夫ですか?…のでしたら、きっと今は…恋をされていらっしゃるのですわ。」


麻衣沙が答えを導き出されます。何故か、チラリと私の方をご覧になられてから、光条さまにお答えされて。結果として、光条さまが恋をなされている、というお話は興味深いのですが、それよりも引っ掛かる部分が、ありましたけれど……。


………ん?…何故に、私の名前がこの場面で、登場致しますの?……はて、私のことで大丈夫とは、一体どういう意味がありますの?…過去を乗り越える?…光条さまの身には一体、何が起こりましたのよ……。


 「……そうだね。もう…大丈夫みたいだ。過去として、なったようだよ。そうか、俺はもう……新しい恋を、しているのか……。」


すると今度は光条さままでが、私の方をチラリとご覧になられてから、麻衣沙に向けてご返答なさったのでして。そのお答が…衝撃的でしたわ、私にとっては。


……はあっ!?……光条さまが…新しい恋???…これが初めての恋では、ないのですか?…一体、何時いつの間に、恋をされておられましたの?…ああ、でも、初恋はうの昔にされていたとか、ですね…。そういうことでしたら、納得ですわっ!





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 7月らしいお話を書きたくて、七夕の話になりました。七夕は中国や韓国、その他のアジア地域に伝わる行事のようなので、今回はこの異世界にも存在する行事…とした次第です。


今回は、瑠々華視点です。話の内容は、隠しキャラこと光条がメインの内容となりますが。


本編では登場しませんでしたが、光条の婚約者となる女性のお話です。今更となって、婚約者を登場させることとなりそうです。今回で話が終了出来ませんでしたので、次回に持ち越しとなりました。



※今回の七夕に纏わる話は、1回で終わらない為分けましたので、更新が七夕の日を過ぎてしまうかもしれません。ご了承願います。

※読んでいただきまして、ありがとうございました。

 次回に続く予定です。よろしくお願い致します。

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