乙女ゲームを振り返れば…

 6月の雨季が始まりました。前世の世界とこの現世の世界は、自然の摂理である季節などは、全く同じみたいです。カレンダーも一見、全く同じに見えますもの。暦も前世の日本と全く同じ法則ですが、祭日に関する休日などは、若干異なっておりますね。後は、カレンダーによく記載されている、暦用語は同じ言葉を使用されているものの、麻衣沙にお話に依りますと、若干ズレているとのご説明でしたわ。私には…何がどう違うのか、全く分かりませんけれど…。


そういう難しいことは、一先ず置いておこうかな。要するに簡単に言えば、雨季の時期も前世と同じで、6月頃だということです。前世では地球環境の問題もございましたので、私が生存しておりました頃には、雨季の時期も遅れてきたり、雨季の所為で災害が酷くなったり、色々とありましたわね。…と、つい最近になって思い出しましたが。


其れと序でに、余計なことも思い出しました。今更思い出しても仕方のないことなのですが、思い出してしまったからには、気になって仕方がございませんわ、本当に…。人間という者は、厄介な生き物ですわね…。


それで、何を思い出したのか…と申しますと、乙女ゲームに関することですのよ。はい、ハッキリ申せば、今更…なのです。私も今更になって気にするのも、おかしな話だと思いますけれど、どうしても…ということで。


 「それで…ルルは、何がそのように気になられますの?」


乙女ゲームと申しましたら、麻衣沙にご相談ですわよね。彼女ならば、乙女ゲームの設定をよく覚えていらっしゃっいますから、麻衣沙にお聞きすれば良かったのですわ。その時はそう思っておりました。


 「乙女ゲームの登場人物についてですわ。麻衣沙や岬さんは黒髪でしたけれど、確か私と樹さんは金髪でしたよね?…それから、エリちゃんと右堂さんは青髪でしたし、美和ちゃんと矢倉君はグレーの髪だった気がします。ヒロインは確か…茶色だったような…。」

 「……我が家にまで突撃されて来て、何を申されるのかと思いましたら、今更…過ぎますわね。」


麻衣沙には正直にお伝え致しましたのに、何を今更ゲームの設定を聞いてくるのかと、言いたげですよね…。いや、流石に私も、今更になって思い出すとは、自分でも思っていませんでしたけど。


思い出した理由は、この雨季の所為ですね。雨が降ると折角セットした髪が…と思いふと、乙女ゲームの髪型を思い出しましたのよ。髪の色も違ったような…と、少しずつ思い出されてきて。そういう事情をご説明致しますと、麻衣沙は呆れたようなお顔をされましたわ。


 「わたくしも…忘れてはおりましたけれど、今更どうでも良いですわ。髪の色については、少しは気になりますが…。現実では日本人ですから、そういう部分は自動補正されたのでは、ありませんの?」


う~ん…。そうなのでしょうか…。あれっ?…そう言えば、光条さまは…何色なのかしら?…隠しキャラが誰なのか知りませんでしたから、モブキャラとかも含めて他のキャラについては、全く思い出せません…。むむ~。


 「隠しキャラ?…ゲームでの光城様は、ものね…。」


麻衣沙も思い出せないようですわ。そうだっ!…エリちゃんは全て、攻略されましたのよね。エリちゃんならば、きっと覚えておられますわね。ということで、早速エリちゃん宅へ飛んで参りましたのよ。


 「あれっ?…ルルお姉様、マイお姉様。5月の連休以来ですね?…今日は、どうされたのですか?」

 「ご迷惑をお掛け致します…。ルルは思いつかれたように、突然行動されますのですもの…。」


急に押しかけたわたくし達に、エリちゃんはにこにこ顔で出迎えてくださいましたのよ。麻衣沙が苦笑しながらも、私のフォローをしてくださいます。しかしそれどころではない私は、全く聞いておりません。…いえ、正確に申しますと、右耳から左耳へと抜けて行きました。


 「エリちゃんっ!…光城さまの髪の色を、覚えておられますかっ?!」

 「………はいっ?!……この前、お会いした時は…黒色でしたよね?」


私は興奮のあまり、「乙女ゲームの隠しキャラ」と付け加えるのを、忘れてしまいましたわ。当然ながらエリちゃんは目を白黒させられ、この前お会いした時の彼の髪の色を答えられましたのよ。…い、いえ…現実ではまあ、そうですよね……。


 「ああ、何だ…。乙女ゲームの設定での髪色なんですね…。そうですね…。確か彼は、赤だったと思います。彼を攻略後にアクセス可能なネット上設定では、赤茶色と記載されていた記憶が…。」


な、何とっ!…髪の色が、赤とは…。そう言えば、この前拝見した時に、夕日の色が染まって、真っ赤に見えました。普段の髪の色も、赤よりの茶色っぽい色だったような…。なるほど…。日本人っぽく髪の色も、ですね?






    ****************************






 なるほど、そういうことですのね…。この世界には、自動修正機能が付いておりましたか…。便利な機能です。黒髪はそのまま黒髪で、金髪は太陽に当たると光の具合で、金髪っぽい明るい茶髪に見え、青髪は青みがかった黒髪で、グレーの髪は灰色がかった薄めの黒髪…だと。では、ヒロインの髪は黒ではなく、最初から濃いめの茶色だったのね。うん、うん。漸く、納得できました!


 「…え~と、ルルお姉様…。自動修正機能は、流石にないかと……。」

 「…聞いておられませんわ、こういう時のルルは……。」


如何やら、私の心の声が聞こえてしまった模様ですが、私は一向に気にしません。何と言っても、漸く全員の髪色が判明したのですもの。納得出来たので、私はもう満足でしてよ。


…という出来事を後日、美和ちゃんが遊びに来られまして、麻衣沙やエリちゃんが面白可笑しく、この出来事をお話されましたところ、途端に美和ちゃんの目が輝き出されて。


 「面白そうっ!…乙女ゲームキャラのその髪型に、なってみたくない?…実際に4人で、変身してみようよっ!」


そういう訳で私達、実際に乙女ゲームキャラに、成り切りましたわ。私は悪女らしく、金髪でクルクル卷き毛のセミロングで、麻衣沙はお嬢様らしい黒髪ストレートロングで。美和ちゃんは活発な女子らしく、グレー色のロブへ。エリちゃんは女子高生らしく、青髪のショートボブへと、各々が変身を致しましたのよ。


……おお。こうやって眺めますと、現実の私達とは微妙に違っておりますのね…。髪色は同じ日本人としてそう変わらないですが、髪型はゲームと現実の私達では、何故か違っておりましたのよ。


実際の私は癖毛なしのロングで、普段はポニーテールにしています。私は単に面倒な性格で、美容室に行きたくなかっただけで。髪を切りたい時期もありましたが、何故か樹さんが…反対されるのですよね…。麻衣沙は少々癖毛っぽくて、普段は下ろしたままのセミロングです。美和ちゃんはパーマをかけているらしく、クルふわのショートボブですね。エリちゃんはミディアムのストレートで、真面目な現役高校生という感じです。……ほらっ、全然違うでしょう?


 「まあ、可愛い。私、その髪型になりたいですわっ!」

 「「私もっ!」」

 「……わたくしも………」


私は短い髪にので、エリちゃん達を見ていたら、そういう髪型を…してみたくなりましたの。ところがそれは、美和ちゃんもエリちゃんも同じみたいで。かくいう麻衣沙も…してみたかったんですね?……ふふふっ。


そういう訳でして、私達4人は乙女ゲームの悪役令嬢キャラに成り切り、燥いでおりました。全員のキャラをやり切った丁度その時、コンコンと客間の戸を叩く音がしたので、お手伝いさんがお菓子を持って来てくれたのかと、「は~い。」と返事を返したら…。何と、樹さん達男性4人が来られておりまして。


 「………る、る、ルルの髪の色が……青い…。か、髪の長さが………っ!!…」


樹さんは私と目が合った瞬間、彼の顔から血の気が引かれて行き、終いには真っ青になられ、絶句されておられます。そう言えば今の私、乙女ゲームのエリちゃんに成り切ってましたよね?…あれっ?…もしかして、髪を青く染めて短く切ったと、思われましたの?


男性陣をよく見ると、樹さんだけではなく他の3人も、私達女子を見られてポカンとされておられますわ。確かに、金髪とグレーとブルーですものね…。因みに今は金髪が麻衣沙、グレーがエリちゃん、黒が美和ちゃんですが、何か…?…あらっ、岬さんもややお顔が…引き攣っておられます?…右堂さんは何の反応もなく、無言のままですが、矢倉君は…あれっ、大爆笑…されてます?


 「ルルっ!…何で君は…そんな髪に……。俺は…艶のある黒髪のロングヘアーのルルが、好きだったのに……。」


樹さんが私の方へと、ずんずんと歩いて来られたかと思うと、私の肩を揺さぶるようにして、悲し気に私を責めて来られて。樹さんって、何故そんなに…私のロングヘアーに、拘られておられますの?…高価なシャンプーやコンディショナーを使用した私の黒髪は、艶々してますけれど…。決して私の髪が綺麗だとは、申せませんわ。何となく…樹さんを騙しているようで、悲しいかも…。


…う~ん。実は…これ、鬘なんですよね…。流石に、髪を青く染めるのも短く切るのも、そう簡単には出来ませんでした…。…ふう~。思わず…私の心の声が、溜息と共に呟きとして漏れてしまったようでして。


 「……はあっ?…………ルル…。のだけど、良いかな…?」

 「……っ!!………」


……という訳でその後、めっちゃ叱られましたよ、樹さんに。いや、何も騙そうとした訳では、ないんですよ。私達、変身して遊んでいただけですのに。私だけ、怒られるとは…。クスン…。



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 今回は6月のお話です。ふと思いついたお題を、雨季に当て嵌めてみました。


6月の雨季に関する内容ですが、雨季に絡めただけですので、全く関連性はありません。副タイトルは変わりますが、次回に続く形式となります。今回は、瑠々華視点です。


本編の中で、本人達の容姿の描写があまりなく、髪の色や髪型を書かなかったと思い出し、此方の番外編で書いてみました。髪の長さも少しずつ変えてます。


また、現実世界とゲームでは、髪色や髪型も微妙に異なる設定としました。その方がルルが暴走しそうで、面白いので。


今回は、光条だけが登場しません。カップルの中に、彼だけ出しても可哀そうなので…。(現時点では、まだ彼女は出来ていません。)



※読んでいただきまして、ありがとうございました。

 次回は、この続きです。またよろしくお願い致します。

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